はじめに
こんにちわ、昨年日本ITストラテジスト協会に入ったけど、イベントに一切参加してこなかった、まとっちです。
最近kintoneやPower Platformのイベントに参加するようになったのですが、まずはDXについてちゃんと考えた方が良いよね。って思い始めました。
ということで、JISTA関西オープンフォーラム2024に参加したので、自分の覚え書き用としてレポートを残しておきます。
JISTA(日本ITストラテジスト協会)とは
情報処理技術者試験であるITストラテジスト有資格者を中心に、IT業界が抱える様々な課題を解決すべく、明るく、楽しく、前向きに、相互研鑽と情報発信・啓蒙を進めている全国8支部体制の法人団体です。
JISTA関西オープンフォーラム2024
JISTA関東支部と関西支部では毎年オープンフォーラムを開催しています。
今回参加した関西オープンフォーラム2024のサブタイトルは「今こそ攻めのDXへの転換の時!ITの活用で目指す地方創生」です。
講演内容レポート
実際の登壇資料は撮影NGだったので本記事には載せておりませんが、経済産業省やIPAから発行された資料などで補足しながらまとめております。
オープニング
DXの取組状況を見ると、規模が小さい企業ほどDXに取り組めておらず、中小企業が多い地方でのDX刈り取りが重要となる。そこで、今回のオープンフォーラムのテーマである「ITの活用で目指す地方創生」につながる。
👇独立行政法人情報処理推進機構(IPA)DX動向2024より引用
デジタイゼーション、デジタライゼーション、デジタルトランスフォーメーションの3段階があり、広義のDXでは全て当てはまるが、狭義のDXはデジタルトランスフォーメーションのみを指し、これを「攻めのDX」と考える。
👇経済産業省:DXに関する経済産業省の施策紹介より引用
DXを進めるには、まずはDXを担う人・組織・文化の変革が大事。
👇パナソニックグループのDXより引用
基調講演① ~デジタルと地方創生のこれから~
講演者:株式会社オラン 代表取締役(元・大成建設CIO) 木内 里美 氏
DXの顛末
経済産業省が2018年にDXレポートを出し、「2025年の崖」という危機感を醸成したが、レガシーシステム刷新を強調したことで失敗した。これを是正するためにDXレポート2では企業そのものの変革を促した。
👇経済産業省:DXレポート2.2より引用
2つのDX
DXの正しい理解が浸透しておらず、DXを業務効率化やコスト削減に留まる動き(下記の"業務DX"に該当)と考えている企業が多い。
業務DX(デジタイゼーションとデジタライゼーション)
- 業務効率化・コスト削減を目的として、プロセスを刷新
- デジタル部門がリードでボトムアップ
経営DX(デジタルトランスフォーメーション)
- 本来のDXであり、ビジネス/組織/企業文化を刷新
- 経営層が主体でデジタル部門がサポート
とはいえ、いきなり経営DXなんて出来ないので、まずは掛かる費用が少ない方法(例えば、Google Workspace)で業務DXを実施する。この業務DXによる底上げをした後に経営DXを実現させる。
👇経済産業省:DX支援ガイダンスより引用
中小企業のDX
DX銘柄は上場企業だけなので大手企業が中心で注目を浴びている。日本全体の生産性を向上させるためには、圧倒的に多い中小企業を底上げしないといけないが、中小企業向けのDXセレクションはあまり知られてない。
👇経済産業省:デジタルガバナンス・コードとその活用方法より引用
投資、人材、技術スキル、どれも無い。そんな中小企業でDXするためには、その地域のベンダーやコンサル等の支援機関が一緒になって寄り添う必要がある。
👇経済産業省:DX支援ガイダンスより引用
DX後の働き方のビデオ紹介
【大成建設】2030年の働き方DX動画
ロボットが現場で活動、ドローンスキャンによるバーチャル空間で現場確認、現場管理者やクレーン運転者がリモート勤務。(日立造船では既にリモート操作している)
【Apple】Knowledge Navigator
ここ数年、生成AIで色々なことが出来るようになってきたが、Appleは1988年にこのことを先読みして構想していた。すごいよね。
地方創生と2100年の日本
人材ない、資金ない、展望ない。あるのは村長の想いだけ。村単位での地方創生はかなり厳しい。
今後日本では超高齢化と人口減少に歯止めが掛からず、年間100万人減少していくと言われており、2100年には5000万人になる。ただ、これは明治末期の人口と同じであり、そんなに悲観することではなく、予想を超える2100年のテクノロジーに期待が掛かる。
日本にもTRON、QRコード、i-mode、Winnyなど優れた技術はあったが、潰されて世界でメジャーにならなかった。日本には日本の強みがあるので、そこに期待。(木内さんはその想いを下記雑誌のサブタイトルを使って表現してました)
【Wedge】JAPANESE, BE AMBITIOUS!
基調講演② ~事業会社と地域社会が“変化”と“挑戦”するマインドに変革させる軍師の振る舞い方~
講演者:パラレルキャリアエバンジェリスト 常盤木 龍治 氏
これまでに手がけたDXによる地方創生
- 高級料亭で出る「つまもの」はこの町が生産の7割を占めている
- ITを使ったリアルタイム需要予測を高齢者が行う姿は注目を集めた
- 町の生産者の売り上げ順位を見てモチベーションを上げる
ハウステンボス
- これまでほぼ研修がなく、従業員のモチベーションが低かった
- ワークショップでチェックイン(何をしたいか話す)とチェックアウト(気付いたことを話す)を実施
- 意識を変えることが重要(9BOXを流用したワーク、部門を混ぜた経営計画、新/旧リーダーペア)
- 伊勢の伝統あるお店だが、赤福に吸収される話が出ていた
- 巻き返すために徹底的にDX化(数量予測に基づく調理、来店予測によるスタッフ配置、客層分析による看板変更、45日予測によるシフト/食材最適化)
- 残業は経営計画の無能に依って生まれる、商品購買は買わなかった人のデータが重要
話されていたこと要点
怒涛の勢いで熱く話されており、書き切れないので、要点だけを絞って下記に書き残しておきます。
中小企業向けに必要なDX人材
- どのデータが必要か見極められる人(一流企業で最新技術を作るレベルのデータサイエンティストまでは必要ない)
- 方法論に縛られず今取り組むべき課題か、優先順位は妥当か考えられる人
- 自分自身で競争優位性をマネジメントできる人
IT支援機関の関わり方
- 自身のスキルで解決してあげるのではなく、ロードマップやマインドマップの書き方を教える
- 寄り添って棚卸してあげることで、支援企業が主体性を持って要件定義して、データを活かした勝ち筋を作る
- 支援機関の仕事を無くしていくことが仕事、自走型組織への変革伴走支援
IT化の入り方・考え方
- 業務のコアから入らずに、小さなところからIT化する、いきなりレベルの高いDXをしてはいけない
- 時間や余裕が無いのではなくてIT化することで時間や余裕を作り出す、彼らにとってITがハッピーになることを知ってもらう
- 「最も強いもの/最も賢いものが生き残るわけではなく、変化できるもの」by シャールズダーウィン
分科会講演
2部屋に分かれており、片方しか参加できなかったので、レポートは下記赤枠の講演のみとなっております。
0円DXの可能性 最速で60点を生み出す技術
デジタルヒーロー合同会社 代表 工藤 匠一郎 氏
- 無料ツール(Google系)を活用したバックオフィス業務の効率化術で、投資できない小さな企業でも0円DXで60点のデジタル化
- 基幹システム以外(備品管理、日報、営業報告、在庫管理)をApp Sheet[業務アプリ]・Google Sheets[データベース]・Looker Studio[BIツール]でシステム化
- 小さく始めてええやんからもっとやってみようにつなげることで、デジタル化への理解 → 業務フローの可視化 → 真に必要な機能導入へと発展
実践:DXの崖の上り方
田中 伸明 氏(JISTA関西支部)
- システムのサイロ化等により、データ加工に時間を使う人が多く、人不足で検討する時間もないので、既存業務の自動化で付加価値を生む時間を作る
- デジタイゼーション、デジタライゼーション、デジタルトランスフォーメーションのステップにおいて、最初の2つをデジタルオプティマイゼーションと考え、ここでまずは時間的余裕を作る
思考の匠!思考で仕事の質を上げる三種の神器とは
日々創発so-hatsu.net 山口 雅和 氏
- 仕事の前提が変わったり、ゴールを自ら定義する必要があり、一本道ではなく探索的に探すので、思考が重要
- 思考の質が高いと、適切な構造化された文章で認知できて、「良い構造」を見出すアプローチを持てるので、仕事の質も高くなる
- 脳内がぼやっとした状態からコトや意味の構造化(俯瞰する、分ける、つなぐ)を行うことで、普段見えないものも見える
専門性と冪等性とAIとDX
弁護士法人ALG&Associates福岡法律事務所 税所 知久 氏(JISTA九州支部)
- 専門性とは、業務独占(その人しか仕事出来ない)や名称独占(持ってる人以外はその名称を使ってはいけない)
- 冪等性とは、何度同じ操作をしても同じ結果を得られることで、社会のインフラサービスでは重要、AIで代替可能
- 専門職をAIで完全に代替することは当面無理(AIに投資すれば機械学習できないこともないが、そんなお金が無い)
- 横断的なナレッジデータベースの構築が実現できない。これを適確に構築し、誰でも使えるようにする必要がある
- 専門職の判断仮定と判断材料を形式知化して集積しないと冪等性を検討可能なシステムは作れない
デジタル人材育成の最前線:地域協働プログラム
個人事業主 前田 晋弥 氏(JISTA関西支部)
- マナビDX Questとは、経済産業省が実施してるデジタル推進人材育成プログラムで、ケーススタディ教育プログラム(AI実装の疑似体験など)や地域企業協働プログラム(実際の中小企業の現場でDX推進)がある
- インターンシップ型のプログラムで、受講生/企業側共に無料で実施でき、2.5ヶ月間で取り組む課題/ゴールを決め、検討結果を報告
- デジタル化の可能性検討(DX構想ロードマップ検討)、データデジタル技術の活用可能性の検証/設計(例えば、CADのAI活用自動見積等)
ゼロトラストで実現する攻めのDX
株式会社シナプスイノベーション 代表取締役社長 藤本 繁夫 氏
- 中小企業ではSEの人材確保が大変、更に育てたとしても大企業に引き抜かれる
- SalesforceはSEじゃないエンドユーザーでも触ることが出来るし、抗陳腐化の特徴を持っているので、小さく始める段階導入が可能
- 今までは「外は危ない/中が安全」だったが、ゼロトラストの考え方である「外は危ない/中も危ない」は変革をもたらす(どこでもツールを使うことになる、地方からでも東京や大阪の人を雇える)
DXのXをどう考えるか
IT経営相談所 代表 岡室 俊之 氏(JISTA関西支部)
- DXには3つの意味がある(デジタイゼーションは仕事の仕方の変化、デジタライゼーションは仕事の流れの変化、デジタルトランスフォーメーションで外部/内部環境の変化+デジタル活用+マーケティング)
- DXの"X"はビジネスモデル変革で競争性優位を持つこと、つまりお客様への提供する価値を変化させる必要があり、主語はお客様となる
- 色んなビジネスモデルを知って、破壊することで想像する、異業種の成功事例から想像を膨らますのが一番簡単
おわりに
これまで頭の中でぼんやりと「DXをするためにはこうしなければいけないよね」と考えていたことを明確に文章化してもらえた感じです。(というか、経済産業省やIPAから出ているDXに関するレポートにその辺り書かれてるからちゃんと見た方が良い)
いま自分はkintoneとPower Platformだけをやってるけど、それはあくまでDXの手段の1つであって(その他にもGoogleやSalesforceなど色んなツールもあるわけで)、まずはDXの本質を理解しないといけないなぁと改めて認識できる内容で満足でした。