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AIエージェントフレームワークの概要と比較

Last updated at Posted at 2025-03-08

AIエージェントフレームワークとは

AIエージェントフレームワークとは、大規模言語モデル(LLM)を活用して自律的にタスクを実行できるAIシステムを構築するためのソフトウェア基盤です。これらのフレームワークは、以下の機能を提供することが一般的です:

  • 環境認識: 外部情報の取得や処理
  • 推論能力: 得られた情報に基づく思考プロセス
  • 行動計画: 目標達成のための手順設計
  • 実行機能: 実際のアクションの実行(APIコール、ウェブ検索など)
  • メモリ管理: 会話履歴や重要情報の保存
  • ツール統合: 外部ツールやAPIとの接続

従来のAIアプリケーションと異なる点は、エージェントが単なる応答生成ではなく、自律的な意思決定と目標志向の行動を実行できる点にあります。

主要なAIエージェントフレームワーク

Agno (Python製)

Agnoは、Pythonで実装されたオープンソースのAIエージェントフレームワークで、以下の特徴があります:

  • マルチエージェント対応: 複数のエージェントが協調して問題解決できる
  • ステートフルな設計: 会話や操作の状態を保持可能
  • ツール使用の柔軟性: 様々な外部ツールと容易に統合可能
  • メモリ管理機能: 短期・長期記憶の管理
  • モジュラー設計: 拡張性の高いプラグイン形式のアーキテクチャ
from agno import Agent, Tool

# ツールの定義
class Calculator(Tool):
    def add(self, a: int, b: int) -> int:
        """2つの数値を足し算します"""
        return a + b

# エージェントの作成
agent = Agent(
    name="MathAgent",
    tools=[Calculator()],
    llm="openai:gpt-4",
)

# エージェントの実行
response = agent.run("123と456を足し算してください")
print(response)

公式サイト: https://github.com/agno-ai/agno

Mastra (TypeScript製)

Mastraは、TypeScriptで開発されたエンタープライズ向けAIエージェントフレームワークで、以下の特長があります:

  • 型安全性: TypeScriptの型システムを活用した堅牢な開発体験
  • リアクティブアーキテクチャ: イベント駆動型の処理モデル
  • スケーラビリティ: 大規模システムにも対応できる設計
  • セキュリティ重視: エンタープライズグレードのセキュリティ機能
  • マルチモーダル対応: テキスト以外のデータ形式も処理可能
import { Agent, Tool } from 'mastra';

// ツールの定義
class WebSearchTool implements Tool {
  name = 'web_search';
  description = 'ウェブ検索を実行します';

  async execute(query: string): Promise<string> {
    // 検索ロジックの実装
    return `${query}の検索結果: ...`;
  }
}

// エージェントの作成
const assistant = new Agent({
  name: 'ResearchAssistant',
  tools: [new WebSearchTool()],
  model: 'gpt-4',
});

// エージェントの実行
const result = await assistant.run('量子コンピューティングの最新研究について調べて');
console.log(result);

公式サイト: https://mastra.ai

その他の注目すべきAIエージェントフレームワーク

1. LangChain

最も広く使われているフレームワークの一つで、Python/JavaScriptで利用可能です。

2. AutoGPT

自律性が高いエージェントを構築するためのフレームワークです。

3. CrewAI

チーム形式のマルチエージェントシステムを構築するためのフレームワークです。

  • 特徴: 役割ベースのエージェント、エージェント間協調、複雑なワークフロー
  • 適用例: プロジェクト管理、ビジネスプロセス自動化
  • 公式サイト: https://github.com/joaomdmoura/crewAI

4. Semantic Kernel

Microsoftが開発した、AIオーケストレーションフレームワークです。

5. LlamaIndex

大規模データとLLMを接続するためのデータフレームワークです。

  • 特徴: 効率的なデータインデキシング、クエリエンジン、知識管理
  • 適用例: RAGシステム、ナレッジベース、Q&Aシステム
  • 公式サイト: https://www.llamaindex.ai/

フレームワーク選択のポイント

AIエージェントフレームワークを選ぶ際の重要な判断基準:

  1. 開発言語の親和性: チームの技術スタックに合ったフレームワーク
  2. スケーラビリティ: 予想されるユーザー数や処理量に対応可能か
  3. カスタマイズ性: 独自の機能追加がどの程度容易か
  4. コミュニティ活動: バグ修正や機能追加の頻度、コミュニティのサポート
  5. 統合機能: 必要なツールやAPIとの連携がサポートされているか
  6. ライセンス: オープンソースかプロプライエタリか、商用利用の条件

実装例:シンプルなAIエージェント

以下は、LangChainを使用した基本的なAIエージェントの実装例です:

from langchain.agents import initialize_agent, AgentType
from langchain.llms import OpenAI
from langchain.tools import BaseTool
from typing import Optional, Type

# カスタムツールの定義
class WeatherTool(BaseTool):
    name = "weather_tool"
    description = "特定の都市の現在の天気を取得します"
    
    def _run(self, city: str) -> str:
        # 実際のAPIコールはここに実装
        return f"{city}の天気は晴れ、気温は25度です"
        
    def _arun(self, city: str):
        # 非同期版の実装
        raise NotImplementedError

# エージェントの初期化
llm = OpenAI(temperature=0)
tools = [WeatherTool()]

agent = initialize_agent(
    tools,
    llm,
    agent=AgentType.ZERO_SHOT_REACT_DESCRIPTION,
    verbose=True
)

# エージェントの実行
response = agent.run("東京の天気を教えてください")
print(response)

最近の動向とこれからの展望

AIエージェントフレームワークは急速に進化しており、以下のトレンドが見られます:

  • マルチモーダル対応: テキストだけでなく、画像や音声も扱えるエージェント
  • 長期記憶と学習: エージェントの経験からの学習メカニズム
  • 自己改善: 自身のパフォーマンスを評価し改善するエージェント
  • セキュリティ強化: プロンプトインジェクション対策などのセキュリティ機能
  • ローカル実行: クラウドに依存しないエッジデバイス上での動作

今後は、よりヒューマンライクな判断能力を持つエージェントや、特定ドメインに特化した高性能エージェントの開発が進むと予想されます。

まとめ

AIエージェントフレームワークは、LLMの能力を活用して自律的なタスク遂行を可能にする重要なツールです。PythonベースのAgnoやTypeScriptベースのMastraをはじめ、LangChain、AutoGPT、CrewAI、Semantic Kernel、LlamaIndexなど、様々なフレームワークが登場しています。

プロジェクトの要件や技術スタックに合わせて適切なフレームワークを選択することで、効率的かつ柔軟なAIエージェントシステムを構築することができます。この分野は急速に発展しているため、最新の動向をフォローし続けることが重要です。

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