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暗号化と鍵の仕組み完全チートシート

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目次

  1. 暗号方式の基本概念
  2. 重要な暗号関連用語
  3. 各暗号方式の詳細
  4. 覚えやすいゴロ合わせ
  5. 身近な例えで理解する暗号の仕組み
  6. RSA暗号の簡易説明
  7. 暗号化処理のフロー
  8. 各暗号方式の特徴とユースケース
  9. Java実装例
  10. Linux操作例
  11. 暗号技術が難しく感じる理由
  12. 実際の応用例
  13. 理解のためのポイント

1. 暗号方式の基本概念

1.1 主要な暗号方式

  • 共通鍵暗号方式(対称暗号):同じ鍵で暗号化と復号化を行う
  • 公開鍵暗号方式(非対称暗号):公開鍵と秘密鍵のペアを使用する
  • ハイブリッド暗号方式:共通鍵暗号と公開鍵暗号を組み合わせたもの

1.2 方式ごとの特徴比較

暗号方式 鍵の種類 処理速度 安全性 鍵共有
共通鍵暗号 1種類(同一) 高速 高い(鍵が漏れなければ) 課題あり
公開鍵暗号 2種類(公開・秘密) 低速 非常に高い 容易
ハイブリッド 両方を使用 比較的高速 非常に高い 容易

2. 重要な暗号関連用語

2.1 鍵に関する用語

  • 公開鍵:誰にでも共有できる鍵。暗号化やデジタル署名の検証に使用
  • 秘密鍵:自分だけが持つ鍵。復号化やデジタル署名の作成に使用
  • 共通鍵:送信者と受信者が共有する同一の鍵(対称暗号で使用)
  • セッション鍵:一時的に使用される共通鍵

2.2 認証と署名に関する用語

  • デジタル署名:文書の真正性を証明する電子的な署名
  • 証明書:公開鍵の信頼性を保証する電子文書
  • 認証局(CA):証明書を発行する信頼できる第三者機関

2.3 アルゴリズムと技術用語

  • ハッシュ関数:データを固定長の値に変換する一方向関数
  • 鍵交換:安全に暗号鍵を共有するプロセス
  • TLS/SSL:通信を暗号化するプロトコル
  • PKI:公開鍵基盤(Public Key Infrastructure)

3. 各暗号方式の詳細

3.1 共通鍵暗号方式(対称暗号)

  • 仕組み:同じ鍵で暗号化と復号化を行う
  • 代表的なアルゴリズム:AES、DES、3DES、Blowfish
  • 特徴
    • 処理が高速
    • 少ないリソース消費
    • 鍵の安全な共有が課題

3.2 公開鍵暗号方式(非対称暗号)

  • 仕組み:公開鍵と秘密鍵のペアを使用
  • 代表的なアルゴリズム:RSA、ECC、DSA、ElGamal
  • 特徴
    • 鍵共有問題を解決
    • デジタル署名が可能
    • 処理速度が遅い
    • リソース消費が大きい

3.3 ハイブリッド暗号方式

  • 仕組み
    • 共通鍵でデータ本体を暗号化(高速処理)
    • 公開鍵でその共通鍵を暗号化して安全に送信
  • 代表的な使用例:HTTPS通信、PGP暗号化
  • 特徴
    • 高速性と安全な鍵共有を両立
    • 実用的な暗号化方式として広く利用

4. 覚えやすいゴロ合わせ

4.1 鍵の役割を理解するゴロ

  • 公開は誰でも見れる、秘密は自分だけ
  • 公で包んで、秘で開ける」(暗号化・復号化の流れ)
  • 秘密で書いて、公開で確かめる」(デジタル署名の仕組み)
  • 公開は配れる、秘密は守れ」(セキュリティの基本)

4.2 アルゴリズムを覚えるゴロ

  • RSAは亮太が作った暗号」(RSAの発明者:Rivest, Shamir, Adleman)
  • AESは暗号の新スタンダード」(Advanced Encryption Standard)
  • DHは二人で秘密の色を混ぜる」(Diffie-Hellman鍵交換のイメージ)

5. 身近な例えで理解する暗号の仕組み

5.1 共通鍵暗号の例え

  • 南京錠の例
    • あなたと友人が同じ鍵を持っている
    • お互いに鍵を持っていれば、誰でも開閉できる
    • 問題は、どうやって鍵を安全に共有するか

5.2 公開鍵暗号の例え

  • 南京錠の例

    • あなたが南京錠(開いた状態)を大量に作り、友人に配る(公開鍵)
    • 鍵はあなただけが持っている(秘密鍵)
    • 友人があなたへのメッセージを箱に入れ、あなたの南京錠で施錠する
    • 施錠された箱はあなたの鍵でしか開けられない
  • 郵便ポストの例

    • 街中の郵便ポストには誰でも投函できる(公開鍵で暗号化)
    • しかし、回収できるのは郵便局員だけ(秘密鍵で復号化)

5.3 デジタル署名の例え

  • 特殊なインクの例
    • あなたの家庭でしか作れない特別なインク(秘密鍵)で署名する
    • 誰でも入手できる検証キット(公開鍵)でその署名が本物か確認できる

5.4 ハイブリッド暗号の例え

  • 銀行の貸金庫の例
    • 銀行が貸金庫(公開鍵)を提供
    • 誰でも貸金庫に物を入れられる(暗号化)
    • しかし開けられるのは鍵を持つ銀行員だけ(秘密鍵での復号化)
    • あなたが銀行員に同行してもらい、一緒に開ける(ハイブリッド方式)

6. RSA暗号の簡易説明

6.1 RSAの基本原理

  • 数学的背景
    • 大きな素数を掛け合わせるのは簡単
    • しかし、その積を素因数分解するのは非常に難しい

6.2 分かりやすい計算例

  • 簡単な例
    • 13×17=221 は簡単に計算できる
    • しかし「221の素因数は?」と聞かれると計算が大変

6.3 RSA計算のイメージ

  • 鍵生成の簡易説明

    • 大きな素数を2つ選ぶ(例:P、Q)
    • これらを掛け合わせて「N」という数を作る(N = P×Q)
    • Nと別の数「E」が公開鍵になる
    • 秘密の計算で「D」という数を求める(これが秘密鍵の核心部分)
  • 暗号化と復号化の考え方

    • 暗号化:「メッセージをE回掛け算して、Nで割った余り」を計算
    • 復号化:「暗号文をD回掛け算して、Nで割った余り」を計算

6.4 カラーミックスの例え

  • カラーペイントを混ぜるのは簡単(例:赤と青で紫ができる)
  • できた色から元の色を正確に分離するのはほぼ不可能

7. 暗号化処理のフロー

7.1 共通鍵暗号方式のフロー

  1. 送信者と受信者が同じ鍵を共有(ここが課題)
  2. 送信者は共通鍵でメッセージを暗号化
  3. 暗号化されたメッセージを送信
  4. 受信者は同じ共通鍵でメッセージを復号化

7.2 公開鍵暗号方式のフロー

  1. 受信者が公開鍵と秘密鍵のペアを生成
  2. 受信者が公開鍵を送信者に渡す
  3. 送信者は受信者の公開鍵でメッセージを暗号化
  4. 暗号化されたメッセージを送信
  5. 受信者は自分の秘密鍵でメッセージを復号化

7.3 ハイブリッド暗号方式のフロー

  1. 受信者が公開鍵と秘密鍵のペアを生成
  2. 受信者が公開鍵を送信者に渡す
  3. 送信者がランダムな共通鍵(セッション鍵)を生成
  4. 送信者はこの共通鍵でメッセージを暗号化
  5. さらに送信者は受信者の公開鍵で共通鍵自体を暗号化
  6. 送信者は暗号化されたメッセージと暗号化された共通鍵を送信
  7. 受信者は秘密鍵で共通鍵を復号化
  8. 復号化した共通鍵でメッセージを復号化

7.4 デジタル署名のフロー

  1. 送信者は文書のハッシュ値を計算
  2. 送信者は自分の秘密鍵でそのハッシュ値を暗号化(署名)
  3. 送信者は文書と署名を送信
  4. 受信者は送信者の公開鍵で署名を復号化(ハッシュ値を取得)
  5. 受信者は受け取った文書からハッシュ値を計算
  6. 二つのハッシュ値を比較して文書の真正性を確認

8. 各暗号方式の特徴とユースケース

8.1 共通鍵暗号方式

  • メリット:高速処理、少ないリソース消費
  • デメリット:鍵の安全な共有が難しい
  • ユースケース:ファイル暗号化、ディスク暗号化
  • :ファイル圧縮パスワード、BitLockerなど

8.2 公開鍵暗号方式

  • メリット:鍵共有問題を解決、デジタル署名が可能
  • デメリット:処理が遅い、リソース消費が大きい
  • ユースケース:デジタル署名、認証、鍵交換
  • :SSH認証、電子署名

8.3 ハイブリッド暗号方式

  • メリット:高速性と安全な鍵共有の両立
  • デメリット:実装が複雑
  • ユースケース:インターネット通信、暗号メール
  • :HTTPSウェブ通信、PGPメール

9. Java実装例

9.1 RSA鍵ペア生成

import java.security.*;

public class KeyPairExample {
    public static void main(String[] args) throws Exception {
        // RSAキーペアジェネレータの初期化
        KeyPairGenerator keyGen = KeyPairGenerator.getInstance("RSA");
        keyGen.initialize(2048); // 2048ビットのキー長
        
        // キーペア生成
        KeyPair pair = keyGen.generateKeyPair();
        PrivateKey privateKey = pair.getPrivate();
        PublicKey publicKey = pair.getPublic();
        
        System.out.println("秘密鍵: " + privateKey.getFormat());
        System.out.println("公開鍵: " + publicKey.getFormat());
    }
}

9.2 RSA暗号化と復号化

import javax.crypto.Cipher;
import java.util.Base64;

public class RsaEncryptionExample {
    public static void main(String[] args) throws Exception {
        // 上記で生成したキーペアを使用すると想定
        
        // 暗号化したいデータ
        String originalText = "これは機密情報です";
        byte[] data = originalText.getBytes();
        
        // 暗号化
        Cipher cipher = Cipher.getInstance("RSA/ECB/PKCS1Padding");
        cipher.init(Cipher.ENCRYPT_MODE, publicKey);
        byte[] encryptedData = cipher.doFinal(data);
        String encodedData = Base64.getEncoder().encodeToString(encryptedData);
        System.out.println("暗号化: " + encodedData);
        
        // 復号化
        cipher.init(Cipher.DECRYPT_MODE, privateKey);
        byte[] decryptedData = cipher.doFinal(Base64.getDecoder().decode(encodedData));
        String decryptedText = new String(decryptedData);
        System.out.println("復号化: " + decryptedText);
    }
}

9.3 AES共通鍵暗号化

import javax.crypto.Cipher;
import javax.crypto.KeyGenerator;
import javax.crypto.SecretKey;
import java.util.Base64;

public class AesEncryptionExample {
    public static void main(String[] args) throws Exception {
        // 共通鍵の生成
        KeyGenerator keyGen = KeyGenerator.getInstance("AES");
        keyGen.init(256); // 256ビットのキー長
        SecretKey secretKey = keyGen.generateKey();
        
        // 暗号化するデータ
        String originalText = "これは共通鍵で暗号化されたメッセージです";
        byte[] data = originalText.getBytes();
        
        // 暗号化
        Cipher cipher = Cipher.getInstance("AES/CBC/PKCS5Padding");
        cipher.init(Cipher.ENCRYPT_MODE, secretKey);
        byte[] iv = cipher.getIV(); // 初期化ベクトルの取得
        byte[] encryptedData = cipher.doFinal(data);
        
        // 復号化
        cipher = Cipher.getInstance("AES/CBC/PKCS5Padding");
        // IVも使用して初期化
        // 実際の実装では、IVも受信者に安全に送る必要がある
        // ...
    }
}

10. Linux操作例

10.1 OpenSSLでの鍵ペア生成

# 秘密鍵の生成
openssl genpkey -algorithm RSA -out private_key.pem -pkeyopt rsa_keygen_bits:2048

# 公開鍵の抽出
openssl rsa -pubout -in private_key.pem -out public_key.pem

10.2 ファイルの暗号化と復号化

# 公開鍵で暗号化
openssl pkeyutl -encrypt -pubin -inkey public_key.pem -in secret.txt -out encrypted.bin

# 秘密鍵で復号化
openssl pkeyutl -decrypt -inkey private_key.pem -in encrypted.bin -out decrypted.txt

10.3 デジタル署名の作成と検証

# ファイルのハッシュ値を計算し署名
openssl dgst -sha256 -sign private_key.pem -out signature.bin document.txt

# 署名の検証
openssl dgst -sha256 -verify public_key.pem -signature signature.bin document.txt

11. 暗号技術が難しく感じる理由

11.1 理解を妨げる要因

  1. 抽象的な数学的概念:素数、剰余、離散対数など理解しづらい数学に基づいている
  2. 専門用語が多い:多くの技術用語が登場し、それぞれの正確な意味を押さえる必要がある
  3. 目に見えない処理:暗号化のプロセスは目に見えないため想像しづらい
  4. 似た用語の混在:「公開鍵」「秘密鍵」「共通鍵」など似た用語が多い

11.2 理解するためのアプローチ

  1. 具体的な例で考える:実際の使用シーンをイメージする
  2. 段階的に学習する:基本から順に理解を積み上げる
  3. 視覚的な図やフローを使う:プロセスを図で表現して理解する

12. 実際の応用例

12.1 ウェブ通信セキュリティ

  • HTTPS通信:ウェブサイトを閲覧するとき、ブラウザとサーバー間の通信を暗号化
  • SSL/TLS:セキュアな通信を実現するプロトコル

12.2 認証と署名

  • 電子署名:契約書などの電子文書に署名して真正性を証明
  • SSH接続:リモートサーバーへの安全な接続
  • 電子証明書:ウェブサイトの信頼性を証明

12.3 データ保護

  • 電子メール暗号化:S/MIMEやPGPを使用した安全なメール送信
  • ディスク暗号化:コンピュータのストレージを暗号化して保護

12.4 新技術への応用

  • ブロックチェーン:暗号通貨の取引で秘密鍵・公開鍵を活用
  • 量子暗号:量子力学の原理を利用した次世代の暗号技術

13. 理解のためのポイント

13.1 鍵の関係性を理解する

  1. 公開鍵と秘密鍵は常にペア:数学的に関連した一対の鍵
  2. 一方向性が重要:公開鍵から秘密鍵は導出できない
  3. 鍵の管理が重要:秘密鍵の漏洩は全てのセキュリティを崩壊させる

13.2 用途による使い分け

  1. 暗号化と復号化

    • 公開鍵で暗号化→秘密鍵で復号化
    • 受信者の公開鍵で暗号化し、受信者だけが復号化できる
  2. デジタル署名

    • 秘密鍵で署名→公開鍵で検証
    • 送信者の秘密鍵で署名し、送信者の公開鍵で検証

13.3 実用的な組み合わせ

  • ハイブリッド方式の利点
    • 大量データは共通鍵で高速処理
    • 共通鍵自体は公開鍵暗号で安全に交換
    • 実用的なバランスを実現
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