$$
\def\bra#1{\mathinner{\left\langle{#1}\right|}}
\def\ket#1{\mathinner{\left|{#1}\right\rangle}}
\def\braket#1#2{\mathinner{\left\langle{#1}\middle|#2\right\rangle}}
$$
私達が普段使っているようなコンピュータは量子コンピュータと区別して、古典コンピューターと呼ばれます。
古典コンピュータでは、情報は0と1の組み合わせで表現され、この0や1を「bit」と呼びます。
これを8つ合わせてbyte、さらにたくさん集めると、GB(ギガバイト)やTB(テラバイト)になるわけです。
このbit、量子コンピュータでは区別のため、Quantum(量子) bit と呼び、
さらに省略して「Qubit」や「q-bit」と呼ばれることが多いです。
さて、この「q-bit」、単純な0,1で記載すると都合が悪いため、
(古典コンピュータでの0)=
\begin{pmatrix}
1 \\
0
\end{pmatrix}
、
(古典コンピュータでの1)=
\begin{pmatrix}
0 \\
1
\end{pmatrix}
と表記します。
と、いきなり行列で書きましたが、
これまで、0と1で済んでいたものが毎回行列で書かないといけない。
これは面倒すぎてやってられません
そこで、ケットと呼ばれる見慣れないカッコで囲うことで楽をしましょう。
\begin{pmatrix}
1 \\
0
\end{pmatrix} = \ket{0},
\begin{pmatrix}
0 \\
1
\end{pmatrix} = \ket{1}
さて、q-bit上での「0」と「1」の表記をすることができるようになりました。
あるq-bitを
\ket{\psi}
と仮に記載するとすると、古典コンピュータ的な考え方では、
このq-bitは$\ket{0}$,$\ket{1}$のどちらかの状態をとるはずです。
ところが、量子コンピュータでの考え方では、
q-bitでは2つの状態の重ね合わせの状態が許されているので、
どちらの状態をとるか観測するまでわかりません。
ですので便宜上どちらになってもいいよう
\ket{\psi} = \begin{pmatrix}
\alpha \\
\beta
\end{pmatrix}
と表すことにしましょう。
これを$\ket{0}$,$\ket{1}$を使って表してみると、
\ket{\psi}= \begin{pmatrix}
\alpha \\
\beta
\end{pmatrix} = \alpha\begin{pmatrix}
1 \\
0
\end{pmatrix} + \beta\begin{pmatrix}
0 \\
1
\end{pmatrix}
=\alpha\ket{0}+\beta\ket{1}
と記述することができます。この最後の式
\ket{\psi} = \alpha\ket{0} + \beta\ket{1}
これこそが量子コンピュータで扱う量子ビットの表現になります。
$\alpha$, $\beta$ はそれぞれ、$\ket{0}$, $\ket{1}$にかかる重みで「複素確率振幅」と呼ばれ、それぞれになる確率の平方根の値を取ります。1
複素?確率?振幅?もう嫌な予感のワードのオンパレードですが、ここの物理的な意味を考え出すのは沼の入り口なのでひとまず、「ふむ量子ビットはこうやって表現するきまりなのか」位に思っておいたほうがいいです。
ここで、$\alpha$, $\beta$は下記の式を満たします。絶対値を取っているのは複素数まで拡張するため2なのですが、まぁ難しいことはさておき、$\ket{0}$, $\ket{1}$のどちらかにはなるので、両方とも0になることはないんだなぐらいの理解でいいかと思います。
|\alpha|^2 + |\beta|^2=1
さて、量子ビットを定義したところで、少し余談にはなりますが、この量子ビットで遊んでみましょう。古典ビットでは、0か1のどちらかしか取れませんでしたが、量子ビットでは、50%の確率で$\ket{0}$, $\ket{1}$のどちらかになる状態というものを取ることができます。
$\alpha$, $\beta$はそれぞれ、二乗した絶対値が確率でしたので、
|\alpha|^2 =\frac{1}{2}, |\beta|^2=\frac{1}{2}
量子ビットは下記のように書き表せます。
\ket{\psi} = \sqrt{\frac{1}{2}}\ket{0} + \sqrt{\frac{1}{2}}\ket{1}
この量子ビットでは、$\ket{0}$, $\ket{1}$のどちらの状態になるのかが、測定するまでわかりません。どちらになりやすいといった傾向もなくランダムです。古典コンピュータでは実現できていない真性乱数が量子コンピュータでは理論上可能なのです!と、まぁ理論上は可能なのですが、実際にはハードの精度や、信頼性の担保など問題は多かったりと、実現への努力がなされています。