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Node.jsAdvent Calendar 2020

Day 22

iOSでNode.jsを動かしたい(ついでにWebRTCシグナリングサーバーも)

Last updated at Posted at 2020-12-21

はじめに

これは Node.jsアドベントカレンダー2020の記事です。実用性皆無のネタ記事ですが、リラックスしてお楽しみください。

twitterで「iPadでLinuxが動く」というツイートを見たことがきっかけで、iPad/iPhone上でNode.jsを動かしてみました。内容は次の通りです。

  • iSH Shell で Node.jsを動かす
  • Node.jsでWebサーバーを動かし、Safariでアクセスする
  • オマケ:WebRTCのシグナリングサーバーを動かして、iPadとiPhoneで通信する

iSH Shell

iSH Shellとは

利用するアプリは、「iSH Shell」(App Store)というアプリです。私は知りませんでいたが、以前からあるアプリのようです。
名前は「Shell」とありますが、実際にはアプリケーションレイヤーでlinuxをエミュレーションしています。利用されているディストリビューションは、Alpine Linuxです。

ちなみに使用するには、Bluetoothキーボードがあった方が便利です。

iSH Shellのインストール

普通にApp Storeからインストールします。

中身の確認

  • デフォルトのユーザーは root
  • /etc/issue をみると、Alpine Linux 3.12
  • CPUアーキテクチャーは、i686(インテル系32ビット)
シェルで操作
~# whoami
root

~# cat /etc/issue
Welcome to Alpine Linux 3.12
Kernel \r on an \m (\l)

~# uname -m
i686

[iPadの画面キャプチャー]
iSH_info.png

パッケージマネージャーの追加

アプリをインストールした状態では、Alpineのパッケージマネージャー apk はインストールされていません。どうやらApp Storeの規約上、取り除く必要があったようです。
(※2020.12.15現在、App Store版でもapkがインストール済みになったようです)

こちらの手順に従い、apkをインストールします。

シェルで操作
~# wget -qO- http://dl-cdn.alpinelinux.org/alpine/v3.12/main/x86/apk-tools-static-2.10.5-r1.apk | tar -xz sbin/apk.static && ./sbin/apk.static add apk-tools && rm sbin/apk.static && rmdir sbin 2> /dev/null

~# apk --version
apk-tools 2.10.5, compiled for x86.

[apkインストールまでのキャプチャー]
iSH_apk.png

Node.js を動かす

Node.jsのインストール

iSHとapkが用意できたら、念願のNode.jsをインストールします。

~# apk add nodejs
~# apk add npm

~# node -v
v12.18.4
~# npm -v
6.14.6

2020/12/5現在、node v12.18と、npm 6.14がインストールされました。(※npmは応答が返ってくるまで、時間がかかります。何かのタイムアウトが発生している?)

[node, npmインストールまで]
iSH_node_npm.png

REPLの利用

さっそくREPL(対話モード)を動かしてみます。

~# node
Welcome to Node.js v12.18.4.
Type ".help" for more information.
> 1+2+3
6
> console.log('Hello Node.js')
Hello Node.js
undefined
> .exit
~#

[Node.js REPLの様子]
iSH_node_repl.png

Webサーバーを動かす

次はNode.jsを使って、簡単なWebサーバーを動かしてみます。

server.js
const http = require('http');

const server = http.createServer((req, res) => {
  res.end('<html><h1>Hello World!</h1></html>');
});
server.listen(8000);

シェルから起動します。

~# node server.js

iPadの場合

iSHがバックグラウンドに回ってしまうと、内部のプロセスの実行が停止してしまいます。そのためiPadの場合はSplit View(Appleの説明)を使って、iSHとSafariを横に並べて使います。

iPadなら、そこそこ実用的にNode.jsを動かすことができます。

[iSHでWeサーバーを起動、Safariでアクセス]
iSH_web_server.png

iPhoneの場合

iPhoneでは、Split Viewが使えず、同時に2つのアプリを動かすことができません。そこで次の手順で無理やり実行します。

  • iSH上で、サーバーを起動
  • Safarを起動し、http://localhost:8000/にアクセス
    • ロード待ちになる
  • iSHに切り替えると、サーバーがリクエストを処理する
  • 再びSafariに切り替えると、Safari上でページが表示される

リクエストが飛ぶたびに、iSHとSafariを切り替えてやる必要があります。iPhoneではかなり厳しいです。

iSH Shellの制約

iSH Shellではx86をエミュレーとしてLinuxが動いていますが、一部デバイスに近い部分では使えない機能があるようです。具体的には、ネットワーク周りの機能では動かないものがありました。
例えば、Node.jsで次のコードを実行しようとすると、エラーが発生します。

コードの抜粋
  const os = require('os');
  const interfaces = os.networkInterfaces();
エラー
Uncaught:
SystemError [ERR_SYSTEM_ERROR]: A system error occurred: uv_interface_addresses returned Unknown system error 22 (Unknown system error 22)

ネットワークスインターフェイスの情報が取れていないようです。

オマケ:WebRTCのシグナリングサーバーを動かす

ここからは、完全に個人の興味によるオマケです。

WebRTC とシグナリング

Node.js が動くなら、WebRTCのシグナリングを動かしたくなるのが性分です。

  • WebRTC ... Web Realtime Communitaion
    • Web上で、音声/映像/データをやり取りするための仕組み
    • P2Pでのユースケースを想定して規格が作られたが、いまはサーバー経由の利用が増えている
  • シグナリング
    • これから通信を始める2者が、通信開始に必要な情報を交換するための手続き
    • WebRTCではやり方は規定されていない
      • サーバー経由で、WebSocket等の双方向通信の仕組みでやり取りすることが多い

ここでは説明は省略します。興味がある方は(ちょっと古いですが)こちらをご参照ください。

シグナリングサーバーとWebサーバー

よくあるケース

通常はシグナリングのサーバーはローカルネットワーク内のPC上か、インターネット上で動かし、通信したい2つの端末で接続します。

[通常の構成図]
webrtc_signaling.png

iOSデバイスだけで動かしたい

今回はPC(Mac)やインターネット上のサーバーを利用せず、2台のiOSデバイスだけでシグナリングサーバーを動かし、WebRTC通信を行ってみます。

  • iPad と iPad
  • または、iPad と iPhone

(不自然ではありますが、そういう縛りのある状況でデモしなければならない、という設定をご想像ください汗)

また、ブラウザでメディア通信で使うカメラ/マイクにアクセスするには、セキュリティ上の制限により次の場所にあるWebページの必要があります。

そのため、2台のデバイスそれぞれでWebサーバーは動かします。

[今回の構成図]
webrtc_signaling_deviceonly.png

iSH でWebサーバー/シグナリングサーバーを動かしてみる

Webサーバー/シグナリングサーバは、Node.js + express + ws(WebSocket) で実装しています。

準備(セットアップ)

  • 2台のiOSデバイスを用意 (iPad + iPad, or iPad + iPhone)
  • それぞれに、iSH Shell をインストール、apk, node.js もインストール
  • それぞれに、gitもインストール
    • apk add git
  • それぞれに、コードを取得(ブランチを指定してください)
コードを取得
~# apk add git

~# git clone https://github.com/mganeko/webrtc_1to1.git
~# cd webrtc_1to1
~# npm install

準備(情報収集)

今回シグナリングサーバー役のデバイス1は、iPadを利用する必要があります。(iSHをバックグラウンドに回さないように)。一方、デバイス2側からは、デバイス1のIPアドレスを知っておく必要があります。

  • (A) 両方が、同じWiFi環境にいる場合
    • デバイス1側で、割り振られているIPアドレスを確認
    • 「設定」-「Wi-Fi」- 詳細情報(iボタン)で、ネットワークの情報を確認
      • IPV4アドレスの表から、自分のIPアドレスを取得
      • 192.168.0.xxx など

iOS_addr.jpg

  • (B) それ以外の場合
    • デバイス1側で、「インターネット共有」(テザリング)をオンに
    • デバイス2側で、デバイス1で共有したWiFiに接続
    • デバイス2側で、接続情報を確認
      • IPV4アドレスの表から、「ルーター」のアドレスを確認
      • 172.20.xxx.1 など
      • ※テザリングしているデバイス1でなく、そこのぶら下がるデバイス2側で確認します

iOS_router_addr.jpg

(A),(B)それぞれに応じた方法で取得したシグナリングサーバー(デバイス1)のIPアドレスを、次のステップで利用します。

実行

(1) サーバーの起動

デバイス1、2の両方で、サーバーを起動します。

起動
~# npm start

> webrtc_1to1@1.0.0 start /root/work/webrtc_1to1
> node server_1to1.js
websocket server start. port=8080
Web server start. http://localhost:8080/

(2) SafariでWebサーバーにアクセス

起動したらそれぞれのデバイスでWebサーバーにつなぎますが、デバイスごとにURLが異なります。

  • デバイス1(ローカルのシグナリングサーバーに接続する)
  • デバイス2(シグナリングサーバーのURLを別途指定する)
    • http://localhost:8080/sub.html
    • ※デバイス2がiPhoneの場合は、SahariとiSHを交互に切り替えながら、Webページをロードしてください

[デバイス1の画面(iPad)]
ipad_webrtc.png

[デバイス2の画面(iPhone)]
iphone_webrtc.png

※iOSデバイスがスリープしてしまうと、サーバーの実行が止まります。再度起動し直してください。

(3) カメラ映像の取得

  • デバイス1で、[Start Video]ボタンをタップ
    • アクセス許可を求められたら、[許可]をタップしてください
  • 同様にデバイス2でも、[Start Video]ボタンをタップ
    • アクセス許可を求められたら、[許可]をタップしてください

(4) 接続

接続はデバイス2 (sub.html)側から行います

  • デバイス2側で、テキストエリアにシグナリングサーバーのURLを入力
    • 例えば、「ws://192.168.0.10:8080」
    • ※ポート番号は 8080 です
  • デバイス2側で[Connect]ボタンをタップ
    • 接続情報が交換され、通信が開始します。

ios_webrtc_connected2.jpg

(5) 切断

  • デバイス1,2 どちらでも良いので、[Hang Up]ボタンをタップします
    • ※この状態で[Connect]ボタンをタップすると、再接続できます

コード

https://github.com/mganeko/webrtc_1to1.git にあります。

おわりに

「iOSでNode.jsを動かしたい」という何の実用性もない記事でした。もし不幸にも(?)そういう状況に陥ったら思い出してみてください。

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