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農業現場をデジタル化しよう!農家の自作アプリ・活用サービスの紹介

Last updated at Posted at 2022-09-28

はじめまして、おおさき(@massa_potato)と言います。

僕は北海道で畑作農家をやっています。楽しく農業を続けるため、2019年頃からノーコード開発ツールやプログラミングをゼロから学んで身の回りのデジタル化やアプリ制作を行い、現場作業の効率化・経営の見える化を進めています。

本記事では、僕が実際の農業現場でどんな技術でどんなモノを作り、どんなふうにIT活用しているのかを簡単にまとめてみました。

制作物

技術としては主に、データベース代わりにGoogleスプレッドシートを使いつつ、ノーコードツール「Glide」やプログラミング言語「GAS(GoogleAppsScript)」を利用しています。全体的にあまり難しい技術を使わず、必要に応じて小さなモノを作って運用しながら改良していく、というのが好き。

Glide

GAS(GoogleAppsScript)

農場の情報管理アプリ

Glideを使って、自分で使うためのPWAアプリを作って農場の情報整理をしています。Glideは作るのも手軽なうえ、現場作業をしながらスマホでサクッと入力・確認できるのが良いですね。

①圃場管理アプリ

「圃場」とは畑や水田など農作物を栽培するための農地のこと。畑作などの土地利用型の農業経営では農地があちこちに分散していることが多く、その情報管理にちょっと手間がかかります。なので、圃場に関する情報やメモをまとめるためのアプリを作り、「圃場台帳」として活用しています(参考:阿部梨園の知恵袋 | #062 圃場台帳)。

②販売管理アプリ

僕の経営では、生産物の99%はJAや卸売業者へ出荷しているのですが、わずかながら飲食店や個人の方にも販売しています。後からPCで会計システムに入力するのですが、やり取りが発生した際に色々と忘れないように、スマホで管理できるようにアプリを制作しました。

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③償却資産管理アプリ

畑作農業は大型の機械化が進んでいます。トラクターや作業機、施設などの償却資産に関する情報は整理してこのアプリにまとめておくことで、情報が必要になった際に役立てます。突発的な修理の履歴や数年に一度のメンテナンス情報などもこのアプリ上で管理し、参照しやすくしたいと考えてます(現在制作中)。

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チームで利用できるLINE bot

GASでLINE Messaging APIを使って、少人数のグループで利用するLINE botを制作して運用しています。

LINEはほとんどの人が活用しているコミュニケーションツールで導入がしやすく、フィールドワークとの相性も良いのを実感しています。

①共同収穫作業での作業日報LINE bot

一部の作物で、機械を共同で所有して収穫作業を行っています。作業時に日報を紙で書いていたのですが、集計がとても面倒だったのでLINEで入力して自動集計できるようにしました。年齢を重ねた大先輩の方でも「これなら自分にも使える」と言っていただきました!

現在はもうちょっと改良していて、必要なタップ数を極力減らすために、LINEユーザーIDと作業者を紐付けて登録ができるようにして運用しています。

②温度管理LINE bot

こちらは自分の農場で使っている、苗づくりのための温室の温度管理のためのツールです。「おんどとり」という産業用温度計を使い、その会社が提供しているAPI(おんどとり WebStorage API)を使って取得したデータを毎朝集計して送ってくれます。

詳細は、こちらの記事にまとめています。

農場のシステム構築

農場作業の効率化、経営の見える化が目下の課題です。既存のサービスを使いつつ、それではなかなか実現できなかったりコストがかかってしまうものを自作して、身近なデジタル化を進めています。

既存サービスの活用

メインで活用しているのは、営農管理システムの「アグリノート」と、クラウド会計システムの「マネーフォワードクラウド」です。

「アグリノート」では作業日誌を記録することで、過去の情報を見返したり、作物ごとの肥料費・農薬費・労働費などの費用を集計する目的で活用しています。

「マネーフォワードクラウド」では農協口座や事業用のクレジットカードと連携して、面倒な経理作業をラクにしようと2022年度より導入を始めました。

また、紙資料をスキャンして資料のデジタル一元管理ができる環境も整いました。これには「ScanSnap Cloud」と「Googleドライブ」を利用しています。

効率化ツールの自作

これらの既存のサービスをメインで活用しつつ、足りない部分をノーコードやGASプログラミングで自作して補うことで「小さなIT活用で快適な農場づくり」を実践しています。

たとえばスキャンしたデータの整理を効率化したり、「収穫量」「収入」「生産費」「在庫」をリアルタイムで可視化できるように、地道に制作・運用しています。

  • Gmailの添付ファイルを自動ダウンロード
  • FAXがきたらLINEに通知するツール
  • スプレッドシートを使った資材の注文数量の自動計算ツール

アプリ制作と技術同人誌

じゃがいも収穫管理アプリ

GlideとGASを組み合わせた自作アプリを制作して、運用しています。農産物の収穫時期は心身ともにとても負担がかかるため、その際の情報をデジタル化する仕組みを作って少しでも負担を減らそうと考えました。

制作中の様子。

詳細は、こちらの記事にまとめています。

こちらの収穫管理アプリについては思い入れもあり、また農業者自身がITを学ぶ裾野を広げたいという動機で、技術同人誌として執筆・出版をする運びとなりました!(2022年9月の「技術書典13」にて販売)。

電子版の購入はこちら

紙書籍の購入はこちら

実際に自分で使っている機能の中から、最低限の機能に絞ってシンプル化して、その作り方を紹介しています。

はじめての方でも、ノーコードツールを使ったアプリ制作とプログラミングを体験してもらえるように、わかりやすく書くことに気をつけました。

おわりに

以上、僕が実際の農業の仕事の中で制作したアプリや、活用している効率化ツールを紹介してみました!

農業のようなフィールドワークの現場では、まだまだデジタル化の浸透に課題があると感じています。色々な市販のシステムがあるので、コアな部分はそういったシステムに頼りつつ、実際の現場に即した細かいものは現場で作ってしまうのが一番良いと思っています。

これからも効率化ツール・アプリ制作と情報発信を通じて、多くの農業生産者に身の回りのデジタル化やアプリ制作の魅力を伝えていきたい!と思っています。

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