Matplotlib と Seaborn は、どちらもPythonでデータ可視化を行うためのライブラリですが、それぞれに特徴と用途があります。以下に両者の違いを詳細に説明します。
1. 基本的な概要
Matplotlib
- Python標準のデータ可視化ライブラリで、基本的なプロットを作成するために使用されます。
- 高い柔軟性を持つため、カスタマイズの幅が非常に広いですが、コードがやや複雑になることがあります。
- 低レベルのライブラリとして、可視化の基礎を構築することができます。
Seaborn
- Matplotlibを基盤として構築された高レベルのデータ可視化ライブラリです。
- 見た目が美しいテーマ設定がデフォルトで適用され、複雑なプロットも簡単に作成できます。
- データフレーム(特にPandasデータフレーム)と統合して使うのが得意で、統計的な可視化に適しています。
2. 主な違い
特徴 | Matplotlib | Seaborn |
---|---|---|
目的 | 汎用的な可視化 | 統計的可視化 |
使いやすさ | 自由度が高いが、やや煩雑 | 簡単なコードで見栄えの良いグラフを作成可能 |
見た目の美しさ | デフォルトではシンプル | 美しいテーマと配色がデフォルト |
データの扱い | 配列やリストに最適 | Pandasデータフレームとの相性が良い |
複雑なプロット | 手動で多くの設定が必要 | 関数が統合されており、簡単に作成可能 |
テーマ設定 | 手動で設定 | デフォルトで視覚的に優れたテーマを提供 |
依存性 | 独立して動作可能 | Matplotlibに依存 |
3. 詳細な違い
a. 見た目の違い
Matplotlib:
- デフォルトではシンプルで、古典的なプロットスタイル。
- 見た目を調整するには手動で設定する必要があります。
import matplotlib.pyplot as plt
x = [1, 2, 3, 4]
y = [10, 20, 25, 30]
plt.plot(x, y)
plt.title("Matplotlib Plot")
plt.show()
Seaborn:
- デフォルトで美しい配色やスタイルが適用されます。
- 軽微なコードで視覚的に魅力的なグラフを作成可能。
import seaborn as sns
import matplotlib.pyplot as plt
sns.set_theme() # デフォルトテーマを適用
sns.lineplot(x=[1, 2, 3, 4], y=[10, 20, 25, 30])
plt.title("Seaborn Plot")
plt.show()
b. データフレームの扱い
Matplotlib:
- データフレームを直接扱う機能は少なく、事前にデータをリストや配列に変換する必要があります。
Seaborn:
- Pandasデータフレームとの統合が得意で、列名を直接指定してプロットできます。
import pandas as pd
import seaborn as sns
import matplotlib.pyplot as plt
data = pd.DataFrame({
"x": [1, 2, 3, 4],
"y": [10, 20, 25, 30],
})
sns.lineplot(data=data, x="x", y="y")
plt.show()
c. 統計的なプロット
Matplotlib:
- 基本的なヒストグラムや散布図は作成可能ですが、回帰分析やカーネル密度推定などの統計的なプロットは自力で実装が必要。
Seaborn:
- 統計的なプロットが標準で用意されており、短いコードで回帰線や分布図を作成可能。
# Seabornで回帰線付き散布図
tips = sns.load_dataset("tips")
sns.lmplot(data=tips, x="total_bill", y="tip", hue="sex")
plt.show()
d. カスタマイズの柔軟性
Matplotlib:
- 非常に細かい部分まで設定可能。
- プロットのサイズ、色、軸の範囲、目盛りなどを細かく制御できます。
plt.figure(figsize=(8, 4))
plt.plot([1, 2, 3], [4, 5, 6], color="red", linestyle="--", linewidth=2)
plt.title("Customized Matplotlib Plot")
plt.xlabel("X-axis")
plt.ylabel("Y-axis")
plt.show()
Seaborn:
- 高度なカスタマイズは可能ですが、Matplotlibよりも制限があります。
- ただし、簡単に美しいプロットを作成可能。
4. 併用のメリット
SeabornはMatplotlibに依存して動作しているため、両者を組み合わせて使うことが可能です。Seabornで簡単にプロットを作成した後、Matplotlibで詳細をカスタマイズするという流れが一般的です。
import seaborn as sns
import matplotlib.pyplot as plt
sns.set_theme()
sns.histplot([1, 2, 2, 3, 3, 3, 4, 4, 4, 4], bins=4)
# Matplotlibでカスタマイズ
plt.title("Seaborn with Matplotlib Customization")
plt.xlabel("Value")
plt.ylabel("Frequency")
plt.show()
5. 選択基準
Matplotlibを選ぶ場合:
- 細かいカスタマイズが必要。
- データフレームを使わず、配列やリストを直接扱う場合。
- 可視化の自由度を重視する場合。
Seabornを選ぶ場合:
- 短いコードで視覚的に美しいプロットを作成したい。
- Pandasデータフレームを直接扱いたい。
- 統計的な分析や可視化が必要。
6. まとめ
項目 | Matplotlib | Seaborn |
---|---|---|
柔軟性 | 高い(細かいカスタマイズ可能) | 中程度(基本的な部分は自動化される) |
使いやすさ | やや複雑 | シンプルで直感的 |
見た目 | 手動で調整する必要がある | デフォルトで美しい |
統計的可視化 | 自力で実装が必要 | 簡単に作成可能 |
データフレームとの統合 | 弱い | 強い |
どちらか一方を選ぶのではなく、用途に応じて使い分けるか、併用するのがベストなアプローチです。