かれこれProcessing授業歴15年の私ですが、BNNの「Code as Creative Medium」を読みました。教える立場として非常に参考になる本です。まずは、著者をはじめ日本語版の出版にご尽力いただいた関係者の方々に深く御礼申し上げます。
この記事ではこれを独学でやろうと思っている方に向けて、私が本書を読んで感じた、ちょっとしたアドバイスをいくつかのポイントに分けて書いてみたいと思います。
学ぶペースについて
第1部の課題はとても刺激的ですが、1日1つやるとかそういうペースじゃなくて全然いいと思います。1つにつき少なくとも3週間くらいはじっくり味わう感じです。1ヶ月かけてもいい。私だったらこの中から3つ選んで15週の授業を組み立てるかな。
対して第2部のエクササイズは一つをサクサクこなしていく感じで力がつくと思います。さすがモチベーションが刺激されるように練られている印象です。何人かで集まってもくもく会をする時のお題にも良さそうです。
どの段階で読むべきか
イントロダクションにも書いてある通り、基本的に教育者向けの本なので、独学しようと思う場合には何らかの言語でグラフィクカルなプログラミングの基礎がないと、そもそもこの本から学びを得ることが難しいと思います。
ひとつの目安として、例えば田所淳さんの
Processing クリエイティブ・コーディング入門―コードが生み出す創造表現
の第3章(欲を言えば第5章)くらいまでは学習してみてからこの本に向き合うのがおすすめかと思います。
用語について
唐突に難しい単語が出てくる箇所が散見されます。
例えば、第一部の最初の課題で特に注釈もなく「デカルト座標系」とか「カプセル化」といった入門者向けではない用語が出てきます。しかし、これもやはり教員向けに書かれているためだと思います。
知らない用語が出てきても凹まず、良い機会だと思って調べてみてもいいと思いますし、それでモチベーションが下がるくらいならその課題をパスして後に回してもいいと思います。
全体の感想
コンセプトに掲げられている通り、非常に長く読まれる本になるように思いました。噛めば噛むほど味が出る「スルメ」のような本という印象です。
私の経験として、独学でクリエイティブコーディングを学んで基礎を終えた方からの相談としてよくあるのが
- 「Processingの入門本に書いてあることは理解できたけれど、その先をどう発想してして良いかわからない」
- 「やりたいことのイメージがあるのだけど、実現するためにどういう要素に分解したら良いのか知りたい」
- 「やりたいことが漠然としていて、どういうキーワードで検索すればいいかわからない」
といった内容です。
こういったお悩みは、クリエイティブコーディングの入門から中級に上がるあたりの独学できるちょうど良い書籍がなかったことが要因の一つでしょう。
サンプルコードやサポートサイトのリファレンスがとても充実していることも本書の特筆すべきポイントです。
これまで大学教育の中だけでしか体験できなかったクリエイティブコーディングの学びを、独学できる可能性を開く本だと感じました。