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DWHでここまでできる!サイト上のユーザー回遊を「虫の目」で見て詳細観察

Last updated at Posted at 2021-09-13

今回の記事では、Adobe Analyticsの標準機能の1つである「Data Warehouse」の活用の一例として、ユーザーごとの行動をヒット単位で詳細観察・調査するためのデータ抽出手法をご紹介します。特別な準備(事前のカスタム実装など)が全く無くてもある程度の観察が可能ですので、機会があれば是非試していただければと思います。

ヒット単位 … Adobe Analyticsはユーザーのページビューやクリックの際にAdobeのデータ収集サーバにイメージリクエストを送信することで計測をおこなっています。本記事では、それらページビューやクリックを指して「ヒット単位」と呼称・記載しています。

本記事は投稿時点の情報に基づいて掲載しています。その後の機能アップデート等によっては内容が変更となっている場合がありますのでご了承ください。

#Adobe Analyticsの「Data Warehouse」機能とは
まず最初に、Data Warehouseについて簡単にご紹介します。Data WarehouseはAdobe Analyticsの集計データをcsv形式(あるいはtableau形式)で出力する機能です。抽出したいディメンションや指標、日付範囲を指定し、メール添付やFTPダウンロードなどの方法でファイルとして取り出すもので、一般語としての「Data Warehouse」ではなく、あくまでAdobe Analyticsの機能名称の1つとなります。利用の現場では「DWH」と略記あるいは略称される場合もあります。
Adobe Analyticsには、蓄積したデータを活用するための複数のインターフェイスや機能が用意されており、その中で、Data Warehouseはいわゆる「生ログを出す」場面で利用される機能の1つです(無加工のアクセスログではなく、厳密な意味での生ログではありませんが)。

Data Warehouse機能の配置
Adobe Analytics画面の「ツール」メニュー内に配置されています。
dwh.png
機能が選択できない、利用ができない、などの場合は権限が不足していると考えられますので、貴社のAdobe Analyticsアカウント管理ご担当者様にご相談ください。

また、今回の記事では、Data Warehouse機能そのものの操作手順については触れておらず、ある程度、基本的な使い方を押さえていることを前提とした記述となっております。操作方法についてなどは、こちらの公式ヘルプ記事も参考にしていただければと思います。

観察の観点 〜 「鳥の目、虫の目、魚の目」

ウェブサイトやアプリのデータに限らず、物事を観察する際の代表的な視点の持ち方として「鳥の目、虫の目、魚の目」という言葉をお聞きになった(使った)ことがあるかと思います。対象物との距離や、置かれた環境、デバイス(眼の構造)の違いによる見え方、捉え方の差を表現したもので、一般に以下の特徴を持つものとして位置づけられています。

鳥の目
大空を飛ぶ鳥が遠くまでを見渡せるように、大所高所から俯瞰する(マクロ視点)
虫の目
地面の近く、対象物の間近で、複眼、単眼を用いて細部に至るまで観察する(ミクロ視点)
魚の目
絶え間ない動きのある水中で、前後に広い視野(魚は目が顔の前方ではなく横にある)を使い、変化や流れを把握する(トレンド視点)

一般に「データを見ていく(=蓄積されたデータから、裏側のメカニズムを理解していく)」ということをしようとした場合、粗いデータから始めて、徐々に解像度を上げながら絞り込んでいくという進め方が多いかと思います。つまり、視点としては「鳥の目」や「魚の目」が中心で、実際にAdobe Analyticsの分析用UIである「ワークスペース」に用意されている機能も「フロー」「ヒストグラム」「コホート」「折れ線」「積み上げ(ほか、各種トレンドグラフ)」など、ユーザー属性や回遊傾向を大きく掴んでいく目的、即ち「鳥の目」「魚の目」視点でとても役に立つものが多いです。

Data Warehouseを使って「虫の目」で観察する

一方で、例えば以下のような状況に対しては「虫の目」での観察が有効であり、「ワークスペース」は必ずしも最適なUIではなくなります。「ワークスペース」には「訪問者IDごとのアクセスデータを記録された順番で並べて出力する」という形の抽出機能は用意されていないためです。

  • 「鳥の目」「魚の目」視点で得た洞察や仮説に対する補完や裏付けのため、より詳細なデータ観察をおこないたい、といった状況
  • 想定しづらい動きをしている回遊がデータ上で発見され、その回遊を発生させているユーザーに絞って実際の動きを1つ1つ追跡したい、といった状況

これら状況の具体的なイメージとしては、例えば以下のようなユースケースがあげられます。

具体的なユースケースのイメージ例

  • 特定の行動をしたユーザー群についてセグメント分析を実施し、全体としての回遊傾向の把握と、洞察や仮説の導出まではおこなった。裏付けのため、サンプリング抽出した実際のユーザーの動きをヒット単位で観察し、その回遊行動が洞察や仮説と矛盾のないものになっているだろうか?を確認したいが、ワークスペースのUIでは限界がある
  • 本来は入口になるはずのないページから訪問が始まっているパターンが一定数存在する。それら訪問がどのように発生しているか、当該訪問者の前後の訪問と合わせて、ヒット単位で確認したい

こういった「虫の目」観察ニーズのユースケースに対して、今回ご紹介する設定で抽出するデータファイルが力を発揮します。

#「虫の目」観察のためのディメンション設定
まずは、この6個
以下の6個のディメンションを順番に選択することで「1人1人の訪問者の回遊」がヒット単位で出力されます。これらは全て標準実装で自動計測・集計されるディメンションですので、殆どの場合どなたでも(どのような計測実装であっても)利用可能です。基本的な回遊観察であれば、これら6個のみの指定で十分です。

[1] Experience Cloud の訪問者 ID(あるいは「訪問者 ID」)
[2] 通算訪問回数
[3] ページへのクリック数
[4] パスの長さ
[5] ページ
[6] ページの URL

実際のData Warehouse画面での設定例がこちらです。
dwh_2.png
それぞれのディメンションの意味を解説していきます。

ディメンション 内容
[1] Experience Cloud の訪問者 ID 訪問者の識別用にアドビが発行したIDの値です。実際の値自体には分析観点での意味はありませんが、この値でソートすることで「1人1人の訪問者」の単位でデータを観察することが可能となります。

※なお、Adobe Analyticsの計測実装において「Experience Cloud ID Service」を利用していない場合は、このディメンションではなく「訪問者 ID」というディメンションを利用します(名称が似ていますが、別のディメンションです)

Adobe Analyticsの訪問者判定方法についてはこちら。
https://experienceleague.adobe.com/docs/analytics/components/metrics/unique-visitors.html?lang=ja-JP
[2] 通算訪問回数 その訪問者の通算での訪問回数が記録されています。[1]に続いてこの値でソートすることで、個々の訪問者のデータを訪問単位で観察することが可能となります。
[3] ページへのクリック数 訪問内でのヒット発生順が記録されています。[1]と[2]に続いてこの値でソートすることで、「ある訪問者が、それぞれの訪問内で、どのようにヒットを発生させていたか?」が分かるようになります。
[4] パスの長さ 訪問中のページビューの総数が記録されています。「ヒットベースでの回遊観察」という目的に対して必須ではありませんが、観察のしやすさに繋がる場合も多く、指定しておくことをお勧めします。

※ヒットの総数ではなくページビュー数の総数であるため、カスタムリンク計測(カスタムリンク、離脱リンク、ダウンロードリンク)がある場合には[3]の合計とは一致しません(逆に言うと、カスタムリンク計測が発生していない訪問の場合は[3]の総数と一致します)
[5] ページ
[6] ページの UR
どのページを見ていたか?を観察するために指定するディメンションです。必要に応じて(あるいは実装に応じて)他のディメンションも活用いただけますが、多くの場合で標準的に利用が可能(※)な基本ディメンションとして指定しています。

※厳密には、カスタムリンク計測のヒット([5][6]とも空になる)やネイティブアプリ計測のヒット([6]が空になる)など、これらディメンションが利用できないパターンもあります

このような形で出力されます(出力されたcsvファイルをExcelなどで開いた時の画面イメージ)。
dwh_4.png
[1]〜[6]のカラムが左から右に並びます。その際、[1][2][3]のカラムで順にソートされた状態になり、結果として、指定した日付範囲内における訪問者ごとの全てのヒットが発生順に出力された形になります。
※キャプチャはファイルイメージをお伝えするために手動で作成したダミーデータです
※出力カラム名は英語表記固定となります

その他によく使う5個
最初の6個だけでは少し足りない、という場合によく追加するのが次の[7]〜[11]です。これらも、特別な計測実装が無くても利用可能なディメンションや設定項目です。

[7] カスタム リンク
[8] 離脱リンク
[9] ファイルのダウンロード数
[10] ページでの滞在時間
[11] 精度(時間)

それぞれ解説していきます。

ディメンション 内容
[7] カスタム リンク
[8] 離脱リンク
[9] ファイルのダウンロード数
カスタムリンク計測を用いたヒットでは「ページ」が記録されないため、サイトによっては[1]〜[6]だけではユーザー行動を捉えるのが難しい場合があります(例:カスタムリンク計測箇所が多いサイトなど)。そういった場合は、これらディメンションを指定に加えます。
[10] ページでの滞在時間 ページビュー間の時間差を10個のグループで記録したディメンションです。ページ回遊におけるユーザー行動の理解の一助になる場合があります(どの場面で時間がかかっているのか?など)。

値の例)
Group A: <15 seconds
Group B: 15-30 seconds
など

値のバリエーションについては以下のヘルプページに記載があります(「ページでの滞在時間 - グループ」箇所)。
https://experienceleague.adobe.com/docs/analytics/components/metrics/time-spent.html?lang=ja#%E3%80%8C%E6%BB%9E%E5%9C%A8%E6%99%82%E9%96%93%E3%80%8D%E3%83%87%E3%82%A3%E3%83%A1%E3%83%B3%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%B3
[11] 精度(時間) こちらは、ディメンションではなく「レポート日」の設定項目の1つです。「いつのデータか?(何月何日の何時台のデータか?)」の観点が必要な場合は、この指定を加えます。
dwh_3.png
※ただし、この指定は抽出したデータの最初のカラム(A列)に出力〜ソートされるため、出力データを再度ソートし直す必要が生じます(前述の[1][2][3]でソートし直す必要がある)

その他のディメンション
あとは、観察したい内容や計測実装の状況に応じて適宜、項目を足していきます。
・トラッキングコード
・サイトセクション
・オペレーティングシステム
・ブラウザ
・リファラー
・ActivityMapの各種ディメンション
・サイト固有のカスタムトラフィック変数(prop)、カスタムコンバージョン変数(eVar)
など

必要な作業はこれだけです!

#活用時の注意点
今回ご紹介した詳細観察はヒット単位でデータを抽出するため、生成されるファイルのサイズが大きくなりがちです。不必要に大きなファイルは扱いが難しくなりますので、あらかじめデータを絞っておくことをお勧めします。

絞り込みの例
・詳細観察の対象としたい訪問(あるいは訪問者)をセグメント機能を用いて限定しておく
・対象とする期間を広く取りすぎない(じっくりとデータを観察することになるため、あまり広げても観察し切れない)

#まとめ
文中でも触れましたが、Adobe Analyticsはどちらかというと「鳥の目」「魚の目」視点での分析ツールが充実しているように感じられることも多いかと思います。今回ご紹介した手法で「虫の目」視点での観察(から分析)を工夫することもできますので、機会があれば是非お試しいただけますと嬉しいです。

私が所属するアドビのカスタマーサクセス部門では技術のエキスパートを随時募集しています。
私たちの部門や職種のご紹介をしていますので、以下のページもぜひご覧ください。
https://blog.adobe.com/jp/publish/2021/06/21/corp-adobe-life-talent-interview-11

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