本記事はドワンゴ Advent Calendar 2019の16日目の記事です。
はじめに
2016年から毎年、Redis Cluster的なお話をしていました。
- プロダクションで2年間Redis Clusterを運用してみて - Qiita
- プロダクションでRedis Clusterを3年間運用し続けた所感 - Qiita
- production環境で41個のRedis Clusterを4年間運用してみて - Qiita
現在も主にドワンゴの開発者向けに
- Redisを合計688インスタンス提供(運用)していたり
- MySQLを合計422インスタンス提供(運用)していたり
- 今年からElasticsearchを45インスタンス提供(運用)し始めたり
とPrivate CloudのManaged DataStore系サービスを続けています。
上記の開発・運用をチームで行うためのマネジメントで上手くいっているものを紹介します。
ジリ貧を回避する習慣を作る
マネージャーとしての私が非常に恐れていること
チームとして絶対に避けないといけない状況、それは「ジリ貧」だと考えています。
「ジリ貧」とは、特に定常的に発生する日々の保守・運用作業に手をとられ、学習および改善のための開発に手を割けない状態を指しています。
GoogleのSRE本の言葉で表現すると、『toil(労苦)』で体力/気力/時間が慢性的に不足し、自発的にその状況を抜け出せない状態でしょうか。
やったこと
毎日夕方※に一時間の会議室を確保し、各々が好きな開発や学習を行えるもくもく会※(場と時間)を作る。
※ドワンゴ標準時における夕方のため18時からです。
※厳密な意味でのもくもく会ではありませんが、似ているのでそう呼んでいます
毎日一時間のもくもく会のルール
- やってはいけないこと
- SlackやJIRAなどの各種問い合わせ対応
- 定常的な保守作業
- 推奨されていること
3. 調べ物・学習
4. 効率化のための開発や検証(タスクチケット化されてなくても良い)
5. アサインされた定常的な保守以外のタスクチケット - 入退室自由、参加自由
- タスクをやる前に、ホワイトボードにやることを書く
- 会終了後、ホワイトボードの写真を取り、slackに流して記録する
やってみた効果
普段のタスクへの悪い影響:なし
自由意志での参加のため、一日すら惜しいレベルの忙しい日はそもそも参加しなくて良く、
また、もくもく会ではアサインされた開発系のタスクも行って良いため、
この会が原因で遅れることはありません。
このため、この会は部長や本部長から理解されており、タスクやロードマップの優先度調整とは無縁で実施できています。
突然ペアプロが始まる
普段の席では、個々人の席がパーティションで軽く区切られており、
また人によっては会議で席にいない時間があったり、席が遠いこともあります。
しかし、もくもく会では1時間のまとまった時間がお互いあり、パーティションのない場が提供されることで
「今少し教えてもらいたい」と思ったときのハードルが非常に下がるようです。
2-3分程度のペアプロや会話しながらの作業が増えました。
※常にパーティションがない場に拘束されると気が散るので、「この1時間だけ」という制限が良いようです
突然運用改善のブレスト会が始まる
「ここの運用少し重いんですよね」→「じゃあ今日のもくもく会でブレストしてみますか」みたいな流れが多く、
またもくもく会は複数の別チームも同席しているため、他チームのナレッジを教えあったり。
※「もくもく会」というネーミングとは逸脱していますが...
外部の勉強会へ参加するメンバーが増える・頻度が増える
元々ドワンゴは勉強会参加のために職場を抜けることには寛容ですが、
組織・チームとして、学習に積極的な姿勢を示せているからか、勉強会に参加する人が増えました。
また、今までサイレントで参加していた方(それで問題なし)も、可視化されました。
「外部勉強会参加」→「翌週のもくもく会で周りに報告や議論」といった良いループも発生しています。
誰が何に興味を持っているか可視化できる
今の業務に直接関係ないOSSを数種類検証し始めたり、技術選定の勘所を文書化したり、
会計に関する本を読み始めたりといった、各個人の興味が可視化される部分がありました。
最終的にslackに記録されているので、あとから遡ることも容易で、
実際に業務に必要になった人が、もくもく会で自己学習していた人に質問しにいく、といったことも発生しています。
ラフなコミュニケーションの場
しばらく黙々と作業とした後、そのまま会議室に残って雑談が始まることもままあります。
あるシステムの歴史的経緯・負債についての話だったり、会社の規則の話だったり、様々です。
モチベーションコントロール
周りが自己成長のための投資をしていると、ちょっとだけ感化されて自分も成長しないとな。となる気がします。
欠点
オフィスの限られた資産である会議室を毎日1時間消費する点は無視できません。
会議が少ない時間やコワーキングスペースを利用するなど、改善の余地は大いにあります。
また、なるべく一人で集中して作業したい人にはノイズが増えるため、向き不向きがあります。
まとめ
ジリ貧を回避するために、上記に記載したようなもくもく会を一年ほど継続しました。
当初は5-7名ほどを誘ってやっていましたが、今はメンバーは16名に増えました。
※実際の参加者数は、そのときどきによります
マネージャーとしては、会議室以外はほぼノーコストで継続実施でき
チームビルディングの雑談や成長や興味を可視化できる点で非常に重宝しています。
特に最近はテレワークでの業務も増えたので、ちょっとした雑談をする場・時間があるやりやすさは助かっています。