テレワークを阻害するFAXを河野太郎は全廃に進めている中、デジタル化が進んでいない各省から反論が殺到している。確かに、FAXは古い技術で不便なんだが、それに相当する技術は他にはない。情報セキュリティ専門家の私の論拠を聞いてほしい。
アクセス権限
FAXは部屋に置き、鍵をかけ、キーをアクセスが必要な人のみに渡せば終わり。あなたは完璧なセキュリティシステムを完成させたのだ。こうなれば、クレジットカード情報を送っても問題はない。正に最近までVisaとMasterCardが運用しているクレジットカード情報セキュリティ委員会(PCI SSC)は会費の受金をそのように行っていた。
クレジットカード番号を含めた注文書をFAXで受けるとオンライン決済として扱われず、MOTO取引(Mail Order Telephone Order)となる。この取引の秘密性を守るための要件はPCI SAQ-Bという標準に定められている。たった15件の要件しかないから、実施するのも容易なのだ。
一方、ウェブ上のフォームにクレジットカード情報入力欄を作ってしまうとPCI SAQ-Dに変わってくる。この要件が230件以上に増え、専門知識も必要になる、万葉集に近い冗長な標準を実施しなければならない。暗号、サーバー、ネットワークセキュリティの全てを意識していてもいつかハッキングされる公算大。
FAXをハッキングする技術はありえなくはないが、高校野球のチームが巨人に勝つことと同じぐらいの奇跡なのだ。
正確に1回配信の確認ができる
スパムに入ったり、添付ファイルがアンチウィルスに削除されたり、サイズが大きいと受信しなかったりする電子メールは届いたかどうか確認する方法がない。届いたとしても、数人の事務局全員に届いて、読む必要もない情報は何枚かコピーされる。
その一方、FAXは正確に一枚のコピーを作り出して送信者に受信結果レポートを自動的に返信することができる。つまり、FAXは正確な受領証を発行してくれる唯一のシステムなのだ。
ユーザー登録とプライバシー
メールを送信するためにはパソコンまたはスマホが必要な上、メールサービスのアカウントも必須。今時の若者はメールを使おうとしていないし、自分のメアドを第三者に公開するのに対しても抵抗を感じている。一回メールを送ってしまったら、メルマガが進撃の巨人のように受信トレイになだれ込むという悩みには私も共感している。
FAXはちゃんと匿名性を守りながら、なんとわずか11桁の電話番号を入れるだけでなんでも送れてしまう他にない使い勝手を提供している。まだメールアドレスを持っていない小学生や未だにパソコンを使いこなしていない高齢者でもコンビニさえあればFAXを送れるという理想的なUXをもった代替システムはどこにあるだろう。
そろそろFAXは花道を飾る時期に来ている。こういった大事な特徴を上回った標準的なシステムはいつか蘇るだろうが、おそらくそれは電子メールではないのだ。