並進対称性をもつポテンシャルにおける波動関数はBloch関数と呼ばれる.
並進対称性は
V(\mathbf{r})=V(\mathbf{r+R})
とする.
Bloch関数はポテンシャルの並進対称性を引き継がない.
そもそも,なぜ「Bloch関数$\varphi_\mathbf{k}$がポテンシャルの並進対称性を引き継ぐ」という先入観が生じてしまうのだろうか. これは, 実際に結晶中で電子を観測したとき, その並進対称性に従って電子が存在するのが望ましいためである. 確かに
\begin{equation}
\varphi_\mathbf{k}(\mathbf{r}) = \varphi_\mathbf{k}(\mathbf{r+R})
\end{equation}
が成り立っていたら,この願いは叶う.
ただし「観測する」とは私たちの生きる実空間上の出来事であり, 複素数で表される波動関数を直接観測することはできない. つまり, 波動関数を実空間に落とし込む必要がある.
波動関数は電子の存在確率を表すため, ここまで厳しい期待をする必要はない.
\begin{equation}
|\varphi_\mathbf{k}(\mathbf{r})| = |\varphi_\mathbf{k}(\mathbf{r+R})|
\end{equation}
これで十分である.
Blochの定理
Bloch関数$\varphi_\mathbf{k}$は以下で表される.
\begin{equation}
\begin{split}
\varphi_\mathbf{k}(\mathbf{r}) = e^{i\mathbf{k\cdot r}}u_\mathbf{k}(\mathbf{r}) \\
u_\mathbf{k}(\mathbf{r}) = u_\mathbf{k}(\mathbf{r+R})
\end{split}
\end{equation}
つまり, ポテンシャルの対称性を引き継ぐのは$u_\mathbf{k}$である. この関係をBlochの定理と呼ぶ.これは確かに$|\varphi_\mathbf{k}(\mathbf{r})| = |\varphi_\mathbf{k}(\mathbf{r+R})|$を満たしている.
Blochの定理の別の表現
Blochの定理は次でも表される.
\begin{equation}
\varphi_\mathbf{k}(\mathbf{r+R}) = e^{i\mathbf{k\cdot R}}\varphi_\mathbf{k}(\mathbf{r})
\end{equation}
これはBlochの定理から直ちに求まる.
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証明はこちらのpdfファイルにて.