はじめに
私はベトナムのオフショア会社でスクラムのプロダクトオーナーとして、日本企業のプロジェクトで活動しています。
今回、下記IPAの「アジャイルのカギは経営にあり」(2022年4月発行)の抜粋したものを共有させていただきます。
https://www.ipa.go.jp/files/000097991.pdf
こちらは、「地方銀行」と「老舗旅館」を題材にした実際のアジャイル導入奮闘記で、有料級の内容です。是非、オリジナル版を読んでみて下さい!
ここでは「地方銀行」編に関して、印象に残った箇所をピックアップし、私自身の実体験を交えた感想をまとめてみました。スケールの違いは気にしないでくだし。。
「ある銀行でのアジャイル実践記」からの学び
経営の立場からのメッセージ
➀両利きの経営へ
既存のサービスに依存せず、素早く新しいことを探索できる環境の必要性を感じていた。実現するために、マーケティングの会社や銀行までもゼロから立ち上げた。新しい取り組みは失敗するかもしれない。しかし、挑戦したことによって得られるものの方が大きいはずである。
両利きの経営を進める中で大事にしている三本柱がある。「データ」「コネクティビティ」「内製化」である。データを集めて付加価値を付ける。さまざまな形で顧客に繋がる仕組みを用意する。真の顧客体験を自分達で作り上げて届ける。この三本柱を中心に据えて、既存、新規どちらか一方ではない、両利きでの挑戦を続けている。
新規システムを開発するとき、接続する既存システムを前提や依存したりすると、自分たちの開発コストは下げられるが、それがかえってボトルネックになってしまうことがあります。既存システムが当初の設計思想・役割から外れて付け足しで拡張していくと、よくそのようなパターンになります。それにより、顧客への提供が遅れ、仮説ではなく実データに基づく付加価値を高める機会が失ってしまいます。
その場合、新しい発想で回避できる仕組みを検討し、たとえそれが本来あるべきシステム構成でなかったとしても、目的をより早く実現できるのであれば、経営者はきっと同意してくれるでしょう。それが成功した場合、新しいシステムが今後の標準になるかもしれませんw
開発チームも経営者視点を持つことが大事であり、経営者が味方になってくれれば、開発のアジリティをますます高められます。
私のプロジェクトでは、開発チームが代替案として既存システムの開発範囲をこちらで巻取り、その代わり将来的にマイクロサービス化を進めていく方針を決めました。 もし、既存のシステムが最初から新しいシステムを想定した設計思想になっていれば大きなリスクはありませんが、そうではない場合、改修リスクやテストコストがとても高くなります。
大切なこと↓
「フィードバックを元に素早く改善しリリースを重ねていく」
この言葉を聞くと、私がアジャイル開発に出会った頃の下記の動画を思い出します。こちらも是非見てみてください!
「内製化」については、外部の力を借りずに社員のみで開発することが理想ということではなく、外注に丸投げしてしまう体制では継続的な改善が難しい ということだと思います。
②人とデジタル
これからの時代、人間にしかできないことで差別化が進んでいくのではないか。すなわち人間とデジタル化の二本立てが重要なのだと思う。人間にしか出来ないことを人間がしっかりやり、その代わりにコンピュータで出来ることはコンピュータに一つ残らずやってもらう。人や組織作りには時間がかかる。ちょっとでも早く取り掛かるのが良いだろう。
とても大切な考えですね。あとはどうやって、導入までたどり着けるか。
たとえ開発チームがコンピュータで出来るどんなに素晴らしい仕組みを作ったとしても、経営者の号令が無い限り、人間が行う既存のワークロードを組み替えることは不可能に近いでしょう。多くの人間は慣れているやり方を変えることに対して、たとえメリットがあるとわかっていても抵抗感を持っていますし、そもそも現場だけで判断することは大きなリスクを伴います。
ですから、既存のワークロードに対してシステムを導入するときには、事前に経営者を巻き込んで対話し、経営者の旗振りのもと、段階的に移行する方法が最良と言えるでしょう。
私もそういった場面に直面したことがありますが、現在はビジネス価値だけ優先順位を決めるのではなく、リスクが小さい範囲から段階的に導入を進める作戦をとっています。
③行動すること
DX思考の銀行、IT組織のような銀行、最高の顧客体験を提供できる銀行、そんな銀行にしていきたい。今はアジャイルマインドでデジタルに舵を切っている。とにかく行動を。行動を起こし、新しい人が加わり、組織が変わっていく。少しづつではあるが確実に価値を産んでいると実感している。
開発チームの全員が高いアジャイルマインドを持つことは理想ですが、地方銀行の登場人物のようにアジャイルマインドが高い強いリーダーシップを持っている人間がその中に一人でもいれば、チームとしての行動による変革は決して難しくないでしょう。なぜなら、人間は自然とそうした人に引っ張れます。これは前回投稿したナッジ理論に通ずるものがあります。
わたしも登場人物のような人間になれたらいいなと思います
現場の立場からのメッセージ
➀継続的な改善とは
試していたのはプロダクト開発のことだけではない。様々なプロセスの検証も行ってきた。むしろ重要なのはプロセスの方だった。
守らなければならないものと新しく挑戦していきたいこと、これらを両立させるためにはプロセスの変革が必須だった。何を守り、何を許容するのか、試行錯誤と対話を繰り返しながら、アジャイル開発のための新しいプロセスを作り上げた。プロセスを実行していくための権限委譲も進んだ。適切な運用をするための組織体制も整備された。プロダクトに留まらず、プロセスさらには組織的な体制まで、継続的に改善する。その姿勢が、新たな挑戦への下支えになっている。
プロダクトオーナーが大変な作業としては、プロダクト開発外の様々なプロセスの検証・改善かもしれません。なぜならば、プロダクト開発ではアジャイルのフレームワークによりプロセスが確立されていますが、たとえば下記のようなプロダクト開発外にはそのようなフレームワークはありません。
プロダクトオーナーは、既存プロセスをステークホルダーからヒアリングし、自分たちで何ができるのか考える思考が大事になってきます。私は確実な成果はまだ出ていないですが、とにかく行動をとっており、いい方向に向かっていると信じています。
- ステークホルダーとの定例会
- 実際の運用者から意見をもらえる場を新規に設置
- 営業のための動画作成
- 営業が新機能を理解するための時間短縮
- 営業のためのパンフレット作成
- お客様が新機能に興味を持ってもらうために、価値を中心とした印象に残る資料
- 標準提供メニュー化
- お客様がすぐに体験できるための機能の分類化と契約申込書の廃止
開発チームは、アジャイル開発外のプロセスが見えないため、レトロスペクティブのProblemに上がることはありません。ですが、今後見える化によって、ステークホルダーだけではなく、開発チームともプロダクト開発以外についても議論できる環境作りを行っていきたいと考えています。
②学びという価値
サービスがビジネスとして成功する。もちろん重要だ。しかし簡単に上手くいくものでもない。そんなことはわかっている。大切なのは、どう取り組んで、そこから何を学んだかである。目先の成果に気をとられ、本来の目的を見失っていなかったか。
定期的に対話をし、チームの状態をよく見る。挑戦を妨げるのではなく、促す。どう取り組んで何を得たかを重視して、信頼して任せる。そういった経営の後押しを受けて、チームが力を発揮していく。
行動することによって、成功・失敗に関わらず、そこには必ず学びがあります。学びから人間は成長し、モチベーションもあがり、また次の行動が取れるようになります。
また大切なことは、時間をかけて学ぶのではなく、スピーディに学んで行くことだと思います。以下に効率的に学び、そして実践のなかで繰り返していくか。それによって、ビジネスの成長スピードに大きく影響を及ぼしていくことでしょう。
私も、今年仕事に関連して新しいチャレンジを行う予定です。期間は6ヶ月。今年中に報告できることを自分自身楽しみにしています。
③役割は違えどワンチーム
銀行でアジャイル、そして、変革が進んできた理由。それは、経営層の発信、現場の活動、マネジメント層の支援。それぞれが最大限に力を発揮し、互いに協力しながら進めてきた結果に他ならない。新しい文化と既存の文化の融合は、こういった組織文化の中で進んでいる。
プロダクト開発のスクラムチームが一つのチームと考えず、もっと枠を広げて、ステークホルダーもワンチームという考え方は好きですw
さいごに
自分自身の考えをアウトプットすることはとても大切な習慣だと思っています。私は国語が苦手なので語彙力・文章力はないですが、これからもアウトプットしていきます!