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人工知能で、かいこが懐いているか解析してみた

Last updated at Posted at 2024-02-22

スライド2.JPG

人工知能でペットの蚕の動きを解析して、懐いているか検証してみた

私たちがペットとして飼う動物といえば、犬や猫が一般的ですが、意外と知られていないペットがいます。それは「蚕」です。蚕は主に絹糸を生産するために飼育されてきましたが、その独特の生態や動きに魅力を感じ、ペットとして飼う人々もいます。しかし、蚕が人間に懐いているかどうかを判断するのは、従来のペットと比べて非常に難しい問題です。

そこで、この記事では、最先端の人工知能(AI)技術を用いて、蚕の動きから彼らが人間に懐いているかどうかを検証してみることにしました。AIがどのように動きを解析し、蚕と人間との間にどのような相関関係が見つかるのか、その興味深い結果を皆さんに共有します。

蚕と人間との意外な関係

蚕と人間の関係は、何千年も前から始まりました。絹糸の生産という経済的価値を越え、一部の文化では蚕は特別な生き物として敬われてきました。しかし、蚕が人間の感情や態度にどう反応するかについては、あまり研究されてきませんでした。

AIによる蚕の動きの解析

この研究では、蚕の動きを細かく記録し、そのデータをAIで分析することで、蚕が示す可能性のある「懐いている」サインを探ります。

実験方法

スライド3.JPG
この実験の目的は、ペットとしての蚕が人間に懐いているかどうかを科学的に検証することでした。そのために、次のような手順で実験を進めました。

蚕の定点観測

  1. ラズベリーパイ3 Model B+セットアップ:
    定点観測のために、ラズベリーパイ3 Model B+とカメラを組み合わせたセットアップを作成しました。このセットアップは、連続して蚕の動きを記録するために最適化されています。

  2. 観測環境の構築:
    蚕が自然な行動をとれるように、彼らが快適と感じる環境を整えました。蚕には桑の葉が供給され、十分なスペースで自由に動けるようにしました。

DeepLabCutを用いた行動解析

  1. DeepLabCutの導入:
    蚕の動画データから精密な行動解析を行うために、DeepLabCutを導入しました。DeepLabCutは、深層学習モデルを利用して動物の行動を追跡し、解析する強力なツールです。

  2. 解析プロセス:
    観測された動画データをDeepLabCutに入力し、蚕の動きをフレームごとに追跡しました。このプロセスでは、蚕の各部位の動きが精密に記録され、そのデータから行動パターンを抽出しました。

  3. データの解釈:
    DeepLabCutによって得られたデータは、蚕の行動パターンと人間への反応を分析するために使用されました。このデータを基に、蚕が人間に懐いているかどうかの指標を導き出しました。

# DeepLabCutの設定と解析コード
import deeplabcut
config_path = deeplabcut.create_new_project('Silkworm_Behavior', 'Researcher', ['video1.mp4', 'video2.mp4'], copy_videos=True)
# 生成されたプロジェクトの設定ファイルのパスを使って解析を実行
deeplabcut.train_network(config_path, maxiters=200000)
deeplabcut.analyze_videos(config_path, ['video1.mp4', 'video2.mp4'], videotype='.mp4')
deeplabcut.create_labeled_video(config_path, ['video1.mp4', 'video2.mp4'])

速度、移動距離の算出は以下のコードを参考にしました。
https://github.com/Banboo-glich/DeepLearing_poseestimation

実験の結果①

実験を通じて得られたデータは興味深い結果を示しました。観測された蚕の動きは、一貫して特定の領域、具体的には著者の顔写真が置かれた場所に向かっていることが明らかになりました。

蚕の動向のデータ分析

以下のグラフは、蚕の動きを示しています。青い点が多く集まっている領域が、蚕が最も多くの時間を過ごした場所です。
スライド4.JPG

領域 遷移回数 累積時間 (秒)
著者の顔写真 167回 3099秒
それ以外 167回 2554秒
合計 334回 5653秒

このデータから、蚕が著者の顔写真の近くの領域でより多くの時間を過ごしたことが分かります。蚕は「著者の顔写真」のエリアと「それ以外」のエリアでほぼ同じ回数の遷移(167回)をしています。しかし、「著者の顔写真」エリアで過ごした総時間は「それ以外」のエリアよりも長く、約3099秒に達しています。「それ以外」のエリアでは蚕が2554秒を過ごしています。蚕がエリア間で遷移した総回数は334回であり、総時間は5653秒です。これらのデータポイントは、蚕が「著者の顔写真」エリアに対して何らかの好意または関心を持っている可能性があることを示唆しています。特に、同じ遷移回数にもかかわらず、より長い時間をそのエリアで過ごしていることから、蚕がそのエリアを好む傾向があると考えられます。

実験の結果②

深層学習による動きの解析から、興味深い挙動が観察されました。警戒処理区では、蚕の動きが著しく鈍くなることが明らかになりました。

蚕の動きの遅さの計測

スライド5.JPG

以下の表は、各領域での蚕の動きの速度(ピクセル/秒)と総移動距離(ピクセル)を示しています。

領域 平均速度 (px/s) 総移動距離 (px)
著者の顔あり区 0.71 120302.83
警戒処理区 0.35 61143.87
対照区(無) 0.64 116399.19

特に注目すべきは、警戒処理区での平均速度が0.35px/sと、他の領域と比べて明らかに低いことです。また、総移動距離においても、警戒処理区は61143.87pxと最も低い数値を記録しています。

結果の解釈

このデータは、蚕が警戒処理区においてはより慎重な行動をとっていることを示しており、可能性としては、蚕がこの区域を何らかの理由で避ける傾向があることを示唆しています。この区域に置かれたものが蚕にとって不快または不安を感じさせるものであった可能性が考えられます。

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