概要
Customer Data Platform(CDP)に関する調査結果を紹介します。CDP は、企業が顧客データを統合し、セグメントを作成して効果的なマーケティング施策を実施するためのテクノロジーです。
CDPの機能として、データのバッチ処理やリアルタイムインジェスト、顧客プロファイルの統一、セグメンテーション機能などがあり、その概念モデルとして整理しています。さらに、最近のトレンドとして、Zero Copy機能を利用したクラウドデータウェアハウス(DWH)との連携や、顧客ID統合サービスの普及が取り上げられています。これにより、企業はより精緻なマーケティング戦略を展開できるようになると期待されています。
CDP の定義
CDP とは、統合した顧客データにてセグメントを作成(顧客モデリング)すしそのセグメントに基づいたマーケティング施策を実施するサービスです。
ガートナーにて次のように定義されおり、端的に表現されている印象をもちました。
A customer data platform is a marketing technology that unifies a company’s customer data from marketing and other channels to enable customer modeling and to optimize the timing and targeting of messages and offers.
引用元:Definition of Customer Data Platform - Gartner Marketing Glossary
カスタマーデータプラットフォーム(CDP)とは、マーケティングおよびその他のチャネルから企業の顧客データを統合し、顧客のモデリングを可能にし、メッセージやオファーのタイミングおよびターゲティングを最適化するためのマーケティングテクノロジーです。
上記の翻訳
Customer Data Platform Institute のウェブサイトには、CDP の定義や種類について詳しく記載されています。興味のある方はぜひご覧ください
引用元:What is a CDP? - CDP Institute
CDP の概念モデル
CDP には下記の機能が含まれています。
機能名 | 概要 |
---|---|
バッチインジェスト機能 | データ取得元からバッチ処理によりデータベースへ書き込む機能。ソースシステムからデータを取得する機能であるコネクターを含む。 |
リアルタイムインジェスト機能 | ソースシステムからリアルタイムでデータベースへ書き込む機能 |
ライブ接続機能 | ソースシステムに直接接続してデータを取得する機能。 |
データベース機能 | CDP 内のデータを蓄積する機能 |
データ統合機能 | 1つ以上のデータを処理して必要なデータセットを作成する機能。 |
カスタマープロファイル統一機能 | 複数のソースからの顧客データを統合し、統一プロファイルを構築。 |
カスタマーセグメンテーション機能 | 顧客データを分析し、特定条件でセグメントを作成する機能。 |
可視化機能(BI機能) | 顧客データを視覚化する機能。 |
統計解析機能 | 顧客データに対する統計分析を行い、行動や傾向を予測する機能。 |
アクティベーション機能(データ連携機能) | セグメントや顧客データを外部のツールに連携する機能。 |
データ提供機能 | 外部システムからデータを取得する機能。一般的には、JDBC、ODBC、REST API 等のテクノロジーによりデータ提供を実施する。 |
AI 支援機能 | AI によりデータの分析と活用を高度にサポートするための機能。 |
データクリーンルーム機能 | セキュアな環境でデータを共有・解析する機能。プライバシーを保護しながら、パートナー企業とデータを利用することが多い。 |
データカタログ機能(顧客データ管理機能) | 顧客に関するメタデータを一元管理し、データの検索・分類を容易にする機能。 |
オーケストレーション機能 | CDP 内でジョブの実行・管理を行う機能。顧客行動に応じて適切なタイミングで施策を実行する際にも利用される。 |
ユーザープライバシー機能 | 顧客データのアクセス保護・監査を行い、GDPRやCCPAなどの規制遵守を実現する機能。 |
最近のトレンド
1. Zero Copy による CDP with DWH
CDP を提供している Salesforce Data Cloud や Treasure Data CDP では、クラウド DWH (Snowflake や Databricks 等)とのリアルタイム連携機能(Zero Copy 機能)を発表しました。これらの発表が CDP を調査するきっかけとなりました。従来は CDP 内で完結させようという方針があったように感じていましたが、 クラウド DWH との共存、つまり、 CDP with DWH に方針を切り替えたのではないかと考えております。企業は CDP と DWH を組み合わせることで、よりよいマーケティング施策を実施できるようになります。
引用元:Salesforce、「Zero Copy Partner Network」を発表 - Salesforce
リアルタイム性を重視した CDP サービスである Tealium においても、Cloud Data Warehouse(SnowflakeやDatabricks)との統合機能に力を入れているようです。これにより、データの相互連携がスムーズに行えます。また、クラウド側のDWHに限らず、Amazon EventBridgeやAzure Event Hubsなどのリアルタイムデータインジェストサービスとの連携も可能であることが記載されています。
引用元:How To Leverage Your Cloud Data Warehouse with A Real-Time CDP - Tealium
引用元:Tealium Cloud Data Warehouse (CDW) パートナーエコシステム - Tealium JA
2. ID 統合サービスの普及
CDP にはカスタマープロファイル統一機能があるのですが、 顧客 ID を統合できるサービスが普及しているようです。私は顧客 ID 統合サービスについて詳しくありませんが、 SAP Customer Identity and Access Management(CIAM)の導入事例に関する話を聞くことがありました。社内で適切に顧客 ID が管理されるようになり、以前よりは CDP によるカスタマープロファイル統一機能の重要度が下がってきている可能性があります。
引用元:SAP Customer Identity and Access Management | CIAM ソフトウェア
3. AI 支援機能の充実
Salesforce の Einstein や Treasure Data の Marketing Copilot など生成 AI テクノロジーによるマーケティング支援機能が普及しているようです。
引用元:Salesforce、Einstein 1 Platformに新しくData Cloud ベクトルデータベースとEinstein Copilot Searchを追加 - Salesforce
引用元:【お知らせ】トレジャーデータ、生成AI機能とCDPネイティブな AIフレームワークを発表 - CDP(カスタマーデータプラットフォーム)のTreasure Data