私たちは生成AIとどう付き合うのか
私たちのプロダクトは、人間の思考や行動のスピードを高めることを目指しています。
そのために「理解の深化」や「合意形成」をAIで支援し、人間同士のコミュニケーションをサポートします。
人間がAIに仕事をさせるには、人間の意図を伝える必要がありますが、そもそも人間同士でも意図を言葉にするのは容易ではありません。
情報の漏れや、何を伝えればよいか分からなくなる問題がよく起こります。
そこで私たちは、人間同士の「会議」「談義」「会話」に注目しています。
会議は思考を言語化する装置のようなもので、複数人が話し合うことで、一人では到達できない答えに行き着くことが多いのです。
私たちは、このコミュニケーションをそのまま、AIへの最適なインプットにしようと考えました。
コミュニケーションでは「理解のギャップ」と「合意のすれ違い」が常に障害となります。
しかしAIが受け取った意図さえ明確なら、AIはそれを整然と並べ替えたり、分かりやすい形に翻訳したりできます。
たとえば、曖昧な問い合わせ文でも、AIは簡潔で要旨のはっきりした文に変換できますし、他言語への翻訳や高度な推論を活用した図示まで行えます。
そうした出力を見ると、「ここはこうしてほしい」など新たなコミュニケーションが生まれ、さらに理解や合意を深めるきっかけになります。
我らが天才プロンプター佐伯がAIによく言う「なんかよく分かんないけどおすすめの英語のきょーかしょおせーて」みたいなふざけた文章も、AIにかかればこうなります。
「英語を基礎から学びたいのですが、初心者に適したおすすめの教科書を教えてください。読み書きを中心にバランス良く学べるものを探しています。」
エストニア語にもしてくれます。
Ma sooviksin õppida inglise keelt algtasemelt. Kas saaksite soovitada algajatele sobivat õpikut, mis aitaks tasakaalustatult arendada lugemis- ja kirjutamisoskust?
高度な推論を駆使して図式化までしてくれます。
ここまで表現されると、「ここはそう、ここは違う」など新たな突っ込みどころが生まれ、
新たなコミュニケーション=問いが始まります。
「読み書きのバランスはそこまで重要じゃないが、絵が多いほうがいい」
「日常会話レベルはできるので初心者ではない」など。
またこれを重ねていくうちに、問題解決の糸口が明確に見え始める感覚を得られるはずです。
こうした手法を「明確な目的を持った人間同士の双方向コミュニケーション」に適用すると、
「会議を行うだけで開発ドキュメント」が生成され、
「議論の分析で製品アイデア」が見つかり、
「会議を記録するだけで提案書」が完成するなど、
業務効率と生産性の向上が望めます。
人間にしかできない「何故?」
あらゆる問題の解決や洗練は、問いを0→1で生み出すことから始まります。
そして、問いが新たな創造性を生み出すためには、その問いが陳腐ではなく、新奇性を持っていることが絶対条件です。
子供が何にでも「何故?」と問う事に、理屈などありません。
そして理屈=陳腐性がない故に、その問いは強烈に本質的です。
往々にして、大人は陳腐な常識で、表層的なルールに基づいてその問いに答えますが、その問答から、新しく有益な「何か」を生む事は、実際にはとても難しい行為です。
新奇性のある問いは、人間の自意識が生み出すものであり、機械にはできない領域です。
一方で機械は0→1が苦手でも、1→10、10→100といった拡大生成を得意とします。
人間の0→1に対して、機械がサポートを行い、それを大きく膨らませる。
多くの人が、AIに労力削減を求めますが、相手は所詮機械、出来ないものは出来ません。
AIの応答を、批判的に読み、人間が新たな問いを発生させるという行為は、実はそんなに多くの人が、無意識的に出来るものではありません。
訓練がどうしても必要です。
このツールを通して、その感覚を体得してもらいたい。
この「理解の深化」と「合意形成」の支援こそ、私たちが描くAIとの共存のビジョンです。
AI App Modelerで出来ること
AI App Modelerが汎用β版として提供するのは、「会議するだけ」でドキュメントを作成できる仕組みです。
会議の内容をそのまま取り込み、ユーザーがプロンプトエンジニアリングに悩むことなく、安定した出力を得られます。
次に、「チャットで深堀」が可能です。
搭載されている独自プロンプトエンジンHolonを介して、会議データとチャット形式でやり取りし、必要な情報や形式を随時確認できます。
holonについてはこちら
さらに、依頼をプリセットできる機能を備えています。
プリセットのプロンプトによって、簡単な操作で必要なドキュメントのドラフトを自動生成し、手動で仕上げることも可能なため、効率を高めながら品質を保てます。
最後に、視覚化にも対応しています。
テキストのみでなくUMLを用いて図式化し、誰でも直感的に理解しやすい形式で情報を整理できます。
小話:App Modeler α版の話
私たちは、App Modelerというプロダクトを育てる過程で、App Modeler α版というプロダクトを上梓しています。 (無料で利用できるのでご興味のある方はぜひ触ってみてください)
App Modeler α版は、わずかな言葉から要件定義を行うツールです。
たとえば「勤怠管理アプリを作りたい」という一言から、情報不足をAIが推論で補い、
システム企画書やアクションフローチャート、ユースケース一覧、テストケース一覧、ワイヤーフレームなどをまとめて生成できます。
しかし、実際のシステム開発では、一言のアイデアだけで必要なドキュメントをすべて作成することはありません。AIに十分な入力を与えることが課題となり、人間が文章にAIへの指示や要望をまとめることは容易ではありません。
そこで「会議を入力する」というアプローチに着目したのが、AI App Modelerβ版最大の特徴です。
AI App Modelerのモデルケース:システム開発現場での活用
システム開発現場で、AIに任せられることは何か。
私たちAI App Modeler開発チームは、
・人間の思考の補助
・人間同士のコミュニケーションの補助
・人間のアウトプットの補助
この3つを、システム開発現場における最大のAI活用ポイントであると認識しています。
中でもシステム開発の要件定義の最大の難所は、「人間同士のコミュニケーション」。
要件定義の文脈は、会社ごと、プロジェクトごとに異なります。
関係者の思惑や意図、アイディアにどう整合性を取るか。この点が要件定義の最も難しい点となります。
私たちは、まさにこの点に、AIを活用できると考えています。
平たく言うと、
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AI App Modelerで会議を分析する
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AI App Modelerでユースケース一覧やユースケース詳細、画面一覧、ワイヤーフレームなど各種ドキュメントを生成する
この2つの手順だけで本当に要件定義が成り立つのだろうかと思われるかもしれません。
しかし、実は「要件定義」という作業は文脈によって大きく異なるものです。
会社の文化やメンバー同士の関係性、プロジェクトの特性などによって求められる要素は大きく変わります。
そこで私たちは、基本機能を最小限に絞りつつ、必要に応じて自由にカスタマイズできる形を重視しています。
以下に、具体的なカスタマイズ例を交えながら、その運用方法を説明します。
具体例:全容を知っている人が誰もいないシステムのリプレイス
「全容を知っている人が誰もいないシステムのドキュメントを作れない」という問題は、リバースエンジニアリングが必要な場面でよく起こります。
例えば、COBOLなどレガシー言語で書かれたシステムのリプレイスが課題となっているケースでは、ドキュメントがなく、当時の担当者もいないうえに、開発会社にもCOBOLを理解できる人材がいないなどの状況が生じがちです。
結局のところ、システムや言語を完全に理解していないチームが、コードや操作画面などを参照しながら機能一覧を作ったり、要件定義を行ったりする必要があります。
これは非常に手間のかかる作業です
AI App Modelerでは、このような要望に対して「画面の機能」や「プリセットのプロンプト」をカスタマイズできるようにしています。
たとえば、会議だけではなくコードを入力できるように設定し、コードをインプットと想定したプリセットプロンプトを用意することで、そこから最適な出力を推論させることが可能になります。
プリセットプロンプトの開発では、課題・悩みをとにかく言語化してもらう
プリセットプロンプトの開発では多くの抽象的な議論が必要になります。
今この文脈で求められる要件定義とは何か、コードをどのように解釈するか、出力の形式をどうすべきかなど、会社やプロジェクトの背景によって異なるためです。
たとえば「コードから仕様を書く」プリセットプロンプトの一例では、コード・コマンドを「命令文の集合体」とみなし、そこから仕様(「あり方」の集合体)へ落とし込むという抽象的定義をAIに伝えます。
こうした概念の扱いを明示的に教えることで、AIの出力は安定しやすく、再現性も高まります。
このプロンプトを開発する段階で、要件と仕様の橋渡しをどうするかを人間側で合意し、その合意内容をAIへの入力として使えば、より人間の意図に即した出力を得られます。
そのため、私たちは開発中にお客様と多岐にわたるディスカッションを行っています。
経営に直結する様々なシーンでの活用価値
AI App Modelerは、システム開発現場だけでなく、人間同士のコミュニケーションが行われるあらゆる場面で価値を発揮します。
たとえば要件定義に限らず、提案資料の作成や意思決定ロードマップの把握、業務フローの可視化など、人間同士のコミュニケーションを深めたり、合意を形にする作業が容易かつ正確に行えるようになります。
結果として、経営やビジネスの面でもチームの思考・行動スピードが向上するのです。
要件定義での認識齟齬を無くす
瞬時に提案資料を作る
意思決定ロードマップを作成
業務フローの可視化
どんな形で利用できるか
AI App Modelerで解決できる課題は幅広く、基本的には人間同士のコミュニケーションや合意形成を支援するツールです。
これ以外の用途にも自在に応用できる可能性があるため、導入前にチームでじっくり議論し、自社に合った使い方を模索することで、多様な課題に取り組むことができます。