コラムをご覧いただきありがとうございます。
ニッセイ情報テクノロジー株式会社 プロダクト・サービス事業推進室の川崎と申します。普段は、当社におけるプロダクト・サービス事業の開発およびプロジェクトマネジメントを中心に担当し、自社製品の販売活動(製品説明やデモンストレーションなど)も担当しております。
今回のコラムとして、 AI-OCR技術を用いた自社開発プロダクトに関して、現在のプロダクトライフサイクルも交えた展望と、次へのステップについて、個人的に思っている事を記事にさせて頂きます。
1. AI-OCRの歴史
どういった仕組みか?(概要)
AI-OCR(Optical Character Recognition)は、紙に書かれた文字や印刷された文書をスキャンし、デジタルデータとして認識・変換する技術です。AI技術を取り入れることで、従来のOCRが苦手とした非定型帳票や手書き文字や複雑なレイアウトの認識精度を大幅に向上させました。特にディープラーニング技術を活用し、専門用語対応や多言語対応や文脈を理解した文字認識が可能になっています。
なぜ、AI-OCR技術が生まれたのか?
デジタル化の進展により、紙媒体に依存した業務プロセスの効率化が強く求められるようになりました。金融機関や医療機関などでは、大量の書類を迅速かつ正確に処理するニーズが高まり、AI-OCR技術がこの課題を解決する手段として注目されました。AI-OCRは従来型OCRの弱点を補う形で進化し、業務効率の向上やコスト削減に大きく貢献してきました。
2. AI-OCRサービスとは
どのようなことができるのか?
AI-OCRサービスは、書類のスキャンからデータ抽出・整形までのプロセスを自動化します。これにより、契約書や請求書、アンケート用紙などさまざまな形式の文書データを迅速にデジタル化し、他のシステムと連携することが可能です。 また我々が提供するAI-OCRサービスには領収書や診療明細書、人間ドック検診票など非定型帳票を保険事務に利用できるようデジタルデータ化し、これまでの人手の入力負荷軽減にしっかりとリーチするようサービス提供を行っています。
利用者はどのような恩恵を受けたか?
利用者は、手作業でのデータ入力にかかる時間とコストを大幅に削減することができました。また、ヒューマンエラーのリスクが低減されることで、業務の正確性が向上しました。特に、膨大なデータを迅速に処理する必要がある業界や専門性に特化した(例えば医療用語など)帳票では業界用語内での表記ゆれが起こりうるため、AI-OCRは「業務効率化の鍵」として高く評価されています。
3. プロダクトライフサイクル
AI-OCRは業界的に見てどのあたりか?
AI-OCRは現在、プロダクトライフサイクルの「成熟期」に位置していると個人的には考えます。多くの企業で採用され、一定の市場規模を形成しましたが、新規参入者の増加や技術のコモディティ化により、成長率が鈍化してきています。 また日本ではマイナンバーカードの利活用が促進され、今まで紙出力していたデータがデジタル化されることで、紙媒体からの読取という作業も少なくなる事も予見できます。
成熟期の抱える悩み
成熟期の製品が抱える課題は、差別化とコストのバランスです。AI-OCR市場では競争が激化しており、価格競争の中で付加価値を提供し続けることが求められています。また、新技術である生成AIの登場によって、AI-OCRの将来性に疑問が投げかけられることもあります。
4. 次の代替プロダクトへの視点移動
最新技術の速さ
生成AIは、自然言語処理やデータ生成の分野で飛躍的な進化を遂げています。これにより、従来のAI-OCRが担っていた領域を代替する可能性が出てきました。特に、文脈を理解してデータを処理できる生成AIは、単純な文字認識を超えた価値を提供します。
生成AIとAI-OCRとの融合
AI-OCRのノウハウを活用し、生成AIとの融合を図ることで、より高度なサービスを生み出せる可能性があります。例えば、文書データを認識するだけでなく、そこから重要な情報を抽出し、洞察を生成するような新たなサービスが考えられます。AI-OCRは、その基盤技術として次のステップに繋がるポテンシャルを秘めています。
5. おわりに
プロダクト収束への踏み切り
AI-OCRサービスは成熟期に達し、一定の役割を果たしてきましたが、生成AIの登場により、次なる時代に向けた変化が求められています。AI-OCRの市場は縮小傾向にあるものの、その開発過程で培われた技術とノウハウは、次のプロダクト開発の大きな資産となります。ただ手塩に掛けたプロダクトが巣立って(収束)いくのは悲しい気持ちになり、なかなか収束への踏み切りに至らないのが世の常なのではないでしょうか。しかしそこは心を鬼にして、次のプロダクトへの力に変えていき、AI-OCRと生成AIやAIエージェントとを掛け合わせる事で、新しいプロダクトへ視点を移していく事が必要となります。
今後の新たなプロダクト開発へ意気込み
私たちはAI-OCRで築いた基盤とAIモデルを内製化開発した組織のケイパビリティを活かしながら生成AIとの融合を視野に入れ、業務効率化を更に加速させる、プロダクトの開発に取り組んでいきます。