#はじめに
本記事は2020年7月時点の内容となります。
#「UiPath Automation Cloud」とは
RPAベンダーのUiPath社が2020年5月27日に「ハイパーオートメーションを実現するための新製品群」を発表しました。
「ハイパーオートメーション」とは、調査会社のGartner社が2020年の戦略的テクノロジ・トレンドの第1位に挙げたもので、「複数の機械学習 (ML)、パッケージ・ソフトウェア、自動化ツールなどを組み合わせて一連の仕事を実行する概念と実装」を指しています。RPAはハイパーーオートメーションの中でも重要な位置をしめ、RPA各ベンダーはAIや他のサービスとの連携を次々に発表しています。
ガートナー、2020年の戦略的テクノロジ・トレンドのトップ10を発表
UiPath社の新製品では、テスト製品やRPA化業務のナレッジや業務フローの収集、AI-OCR、プロセスマイニングなど複数の製品が発表されましたが、その中に、個人的にもずっと登場を待っていたRPA適用領域拡大には欠かせない管理・統制機能を持つのUiPath OrchestratorのCloud版も発表されました(以下、SaaS版Orchestratorと記載します。)
SaaS版Orchestratorは2019年から無償版のCommunity Editionで展開されていましたが、Enterprise向けに展開されたというのが今回の発表になります。
SaaS版Orchestrator接続用のRobotライセンスは勿論必要ですが、サーバ不要、構築不要、SQLServerのライセンス不要、CAL不要、サーバ保守不要でOrchestratorが使えるのは嬉しいです。従来もMicrosoft Azure上やAWS上のIaaS、PaaSにOrchestratorを展開することはできましたがより容易に展開することができると思っています。(あくまで展開についてです。)
話は戻って、このSaaS版Orchestratorが「UiPath社の自社クラウド UiPath Automation Cloud」にて提供されています。
UiPath社、自社クラウドサービスでUiPath Orchestrator機能を販売開始
このUiPathの自社クラウドとは何なのか探求してみるのが今回の記事です。
#なぜ探求する必要があるのか
クラウドサービスなら簡単に始められるしイニシャルコストも抑えられるという反面、本当に信頼できる環境なのかという点が重要です。
クラウドサービスといっても実態はデータセンター上にサーバを構築しその上にサービスを構築したもので、セキュリティ対策や障害対策が確実に行われているのか心配になります。実際、2019年に発生した国内クラウドサービスのサーバ停止及びデータ消失のニュースがありました。
自治体IaaSの障害、90%が復旧完了 自治体のバックアップから復元 「復旧困難」は4%に減少
そんな中で、UiPath社がクラウドサービスを提供するといった場合、どこのデータセンターでどのように構築しているのかは気にならずにはいられません。
#ホワイトペーパーを読む
Automation Cloudのページでは「Veracode および ISO 27001 認証」を取得しているという記載があります。
Automation Cloudのページ
これだけでは情報が足りないのですが、ページ下部にセキュリティ、プライバシー、コンプライアンスを記したホワイトペーパーのリンクがあります。
このホワイトペーパー(英語)を見てみます。
ものの見事に英語です。
ただ、2ページ目に移ると以下のイラストが出てきます。
Automation Cloudの構成デザインですが、このアイコンに見覚えがある方も多いと思います。
Microsoft Azureのアイコンです。
↓Azureのアイコンセットから抜粋
※こちらからsvgをダウンロードしています。
あとは各文章を読んでいくと(翻訳していくと)以下のような説明が出てきます。
###サービスの設計原理
上記のサービスはすべてMicrosoft Azureで構築およびホストされるサービスとしてのソフトウェア(SaaS)モデルを介してUiPath Automation Cloudとしてパッケージ化され、提供されます。
それらはAzureのコアサービスを使用する構成であり、コンピューティング、ストレージ、ネットワーク、SQLデータベース、アプリ、Azure Key Vaultの秘密ストレージ、IDとアクセス管理(Azure Active Directory)を使用します。
これにより、セキュリティ、プライバシー、コンプライアンスにおけるAzureの最先端の機能を利用し、その上に構築しながら、UiPathのサービスを実行するという独自の側面に集中できます。
また、Azureを通じて利用できる業界認定も利用しています。
UiPathでは、Azureでデータを保護する責任を共有し、それらが公開するガイダンスを厳守します。
###システムの強化
UiPath Cloud Servicesは、AzureのPlatform-as-a-Service(PaaS)サービスをインフラストラクチャのほとんどに使用しています。
PaaSは、既知のセキュリティ脆弱性に対して定期的なアップデートを自動的に提供します。
UiPath Automation Cloudは、UiPath社が独自にデータセンターを保持し、サーバやネットワークを構成しているわけではなく、Microsoft Azure上のPaaSをベースに構築し、高いセキュリティと高可用性を実現してクラウドサービスとして提供していることがわかりました。
また、どこのデータセンター(リージョン)を使用しているかについては、Automation CloudのRegions and Instancesのページで確認することができます。
Regions and Instances
日本のAzureのリージョンは東日本と西日本にあるので、いずれかまたは冗長化で両方ということになると思います。
#クラウド環境がAzureならOKなのか
Azureを利用する企業は増加しており、Fortune 500の企業の95%が何かしらの形でAzureを利用しています。
その他、諸々のAzureがすごいという情報はAzureの説明ページを見ていただきたいです。
https://azure.microsoft.com/ja-jp/overview/what-is-azure/
ただ、Azureも各サービス内で高い稼働SLAを掲げていますが、100%の稼働率を謳っているわけではありません。仮に稼働率を99.9%としていたとしても、24時間365日=8,760時間の0.1%であれば年間約9時間は停止する可能性があります。
そして、Azure自体は正常稼働してもSaaSとして提供するAutomationCloud側で障害が発生する可能性もあります。
そのような停止リスク(デメリット)とクラウドサービスを利用するデメリットが自社にとってどちらが大きいのかを図った上で選択する必要があります。
#困った時の障害・メンテナンス情報
クラウドサービスではサービスが利用できない時にクラウドサービス側で障害が起きているか、ネットワークの問題なのか判断が必要になります。
UiPath Automation Cloudに何かあったら以下のサイトを見ることをオススメします。
Automation Cloudの障害・メンテナンス情報については「 https://status.uipath.com/ 」で確認することができます。
また、過去の障害情報も「 https://status.uipath.com/history 」に載っているため、どのような障害があったかを元にSaaS版Orchestratorの利用を検討するのも良いと思います。
#まとめ
UiPathの自社クラウドとは、Microsoft Azure上で構成されていることがわかりました。
これもUiPath社がこのようにホワイトペーパーで自社プラットフォームの情報も提供してくれているからです。
どの製品についてベンダーサイトを見ると見きれないほどの重要で有用な情報があります。
メーカーが情報を盛っていないとも限りませんが、比較サイトのような不正確な情報を発信するサイトを見るよりも一次情報を確認するのが一番だということをお伝えして記事を締めたいと思います。