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小児敗血症の早期発見と発熱を伴う高リスク患者のケア改善に関する研究~NAMヘルスケアレポート

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はじめに

小児敗血症(セプシス)は世界中の子どもたちに重大な健康リスクをもたらす生命を脅かす感染症反応です。今回は、デューク大学小児病院で行われた2つの重要な研究について解説します。1つ目は小児敗血症の早期発見のためのデジタルフェノタイプ(特徴パターン)開発に関するもの、2つ目は小児救急部門における高リスク患者への迅速な抗生物質投与を実現するための通知システムに関するものです。

研究1:小児敗血症の早期認識のためのデジタルフェノタイプの評価

背景

敗血症は子どもたちの入院と死亡の重要な原因となっています。2004年から2012年の間、米国の小児入院の約3.1%が敗血症によるもので、その死亡率は8.2%に達しました。国際的なガイドラインでは、敗血症認識後1時間以内に抗生物質投与を開始することが推奨されています。しかし、デューク小児病院では、敗血症の子どもたちのうち時間内に認識されるのは38%、時間内に治療を受けるのはわずか28%でした。

研究方法

研究チームは2016年11月から2023年4月までのデューク小児病院における28,399件の小児入院データを分析しました。彼らはDuke Pediatric Sepsis Phenotype(DPSP)と呼ばれる新しい診断基準を開発しました。これは「Real-Time Weiss」と「Duke Children's Trigger Tool」という2つの既存の診断ツールを組み合わせたものです。

結果

  • 28,399件の入院のうち、3,104人(10.9%)がDPSPの基準を満たしていました
  • DPSPは敗血症のICD診断コードに対して0.79の感度と0.18の陽性的中率を示しました
  • 完全なWeiss定義に対しては0.95の感度と0.30の陽性的中率を示しました
  • DPSPを満たす患者は他の患者と比較して:
    • 入院期間が有意に長い(23.48日 vs 6.72日)
    • 死亡率が高い(5.67% vs 0.74%)
    • 平均年齢が低い(6.99歳 vs 7.79歳)
    • 男児が多い(54% vs 52%)
    • 黒人/アフリカ系アメリカ人の割合が高い(36% vs 31%)

結論

開発されたDPSPは、リアルタイムで敗血症のリスクが高い患者を正確に特定できることが示されました。次のステップとしては、前向き検証、臨床的妥当性の確認、実際のベッドサイドでの展開などが計画されています。

研究2:小児救急部門における発熱を伴う高リスク患者のための情報通知システムの実装

背景

高リスク状態(HRC)にある患者が発熱とともに小児救急部門(ED)を受診した場合、全身感染症や敗血症を発症するリスクが大幅に高まります。ガイドラインでは、これらの患者には理想的には来院後1時間以内に抗生物質を投与することが強調されています。デューク小児病院では、2016年から2023年の間、高リスク状態+発熱の基準を満たした患者のうち、1時間以内に抗生物質を投与されたのは42%でした。

研究目的

この研究の主な目的は、デューク小児救急部門に発熱で来院した高リスク状態の患者を即座に特定し、抗生物質投与までの時間を短縮するための情報駆動型システムを実装することでした。

研究方法

2024年1月から7月までの間にデューク小児救急部門に発熱で来院した高リスク状態のすべての患者が研究対象となりました。高リスク状態には、活動性の化学療法を受けている患者、臓器移植チームによるフォローアップを受けている患者、鎌状赤血球症の患者が含まれます。発熱は救急部門で測定された38℃以上の体温、または発熱の主訴と定義されました。

高リスク状態+発熱の基準を満たし、まだ抗生物質が投与されていない各患者に対して、救急部門の担当看護師と薬剤部に自動通知ページが送信され、迅速な評価と治療を調整する仕組みを実装しました。2024年1月から2月までは「サイレント検証」期間として通知は生成されましたが臨床医に送信されず、2月26日から臨床医への通知が開始され、4月13日からは45分経過しても抗生物質が投与されていない場合にリマインダー通知が追加されました。

結果

  • 2024年1月から7月の間に、高リスク状態+発熱の基準を満たした123人の患者がアラートを生成しました
  • 4月13日以降、さらに32件のリマインダー通知が生成されました
  • サイレント試験アラートの87.8%と実際に救急部門で発生したアラートの78.0%が「対応可能」でした
  • 救急部門入院から抗生物質投与までの中央値は変化しませんでしたが(75分)、通知から抗生物質投与までの中央値は114分から58分に減少しました
  • 入院から1時間以内に抗生物質を投与された患者の割合は38.9%から40.3%にわずかに増加し、通知から1時間以内は5.5%から53.7%に大幅に増加しました

結論

研究チームは、小児救急部門で発熱を伴う高リスク患者を特定するための情報ベースの通知システムを成功裏に実装しました。全体的な入院から抗生物質投与までの時間と遵守率は大きく変化しませんでしたが、通知から抗生物質投与までの時間は大幅に短縮され、遵守率が向上しました。これは通知が抗生物質投与までの時間短縮に効果的であったことを示唆しています。

総括

これら2つの研究は、小児敗血症および高リスク患者の治療における時間的要素の重要性を強調しています。デジタル技術と電子健康記録(EHR)データを活用することで、リスクの高い患者を早期に特定し、適切な介入を迅速に行うことができます。特に注目すべきは、これらのシステムが臨床現場でのリアルタイム意思決定をサポートし、最終的には患者のアウトカム改善につながる可能性があることです。

今後の研究では、これらのツールの前向き検証や臨床的妥当性の確認、さらなるワークフローの改善などが期待されます。敗血症のような時間依存性の高い疾患において、情報技術を活用した早期発見・早期介入システムの開発は、小児医療の質向上に大きく貢献する可能性があります。

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