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RAG(Retrieval-Augmented Generation)の落とし穴とその対策

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RAG(Retrieval-Augmented Generation)は、大規模言語モデル(LLM)と情報検索を組み合わせることで、正確で最新の情報を生成できる強力な手法です。しかし、適切に設計しないと検索精度の低下、生成内容の誤り、パフォーマンス問題などの課題が発生します。本記事では、RAGを導入する際の落とし穴と、それを回避するための具体的な対策を詳しく解説します。


1. 検索精度の低さ

落とし穴

RAGでは、ユーザーの質問を埋め込み(ベクトル化)し、類似度検索によって関連する情報を取得します。しかし、埋め込みモデルの選定が不適切、検索アルゴリズムの最適化不足、データのフォーマット不備などがあると、適切な情報が検索されず、回答の精度が低下します。

対策

埋め込みモデルの適切な選択

  • 一般的なQAシステムには all-MiniLM-L6-v2msmarco-distilbert-base-v4 を使用。
  • 高精度な検索が必要な場合は text-embedding-ada-002(OpenAI)を利用。

クエリ拡張(Query Expansion)を活用

  • ユーザーの質問が短すぎると、適切な検索結果を得られない。
  • 類義語を追加することで検索範囲を広げる。

検索手法の最適化

  • FAISSのIndexFlatIP(内積類似度)を使うことで、コサイン類似度に最適化。
  • 再ランキング(Re-ranking)手法を用いて、検索結果を適切に並び替える。

データの正規化とフォーマット統一

  • FAQデータは Q: ... A: ... のような形式に統一。
  • 長すぎる文書は分割し、適切なスニペットを検索対象にする。

2. 生成AIのハルシネーション(誤情報の生成)

落とし穴

検索で適切な情報を取得できても、LLMが事実と異なる情報を追加してしまう(ハルシネーション)ことがあります。特に、検索結果が不十分な場合、LLMは「最もらしいが正しくない」情報を補完しようとします。

対策

「検索結果のみを使って回答する」制約を追加

  • プロンプトエンジニアリングで、「提供された情報以外を基に回答しない」と指示。
あなたはFAQボットです。以下の情報のみを使って質問に回答してください。
それ以外の情報を加えたり、事実を推測したりしないでください。

検索結果のスコアを用いたフィルタリング

  • 関連度の低い文書は使用せず、閾値を設定(例: 類似度スコア0.7以上のものだけ採用)。

検索結果の多様性を確保

  • ユーザーの質問に対し、複数のソースから情報を取得。
  • 特定の1つの文書だけに依存しない。

ファインチューニングを行う場合は正しいデータセットを使う

  • 誤情報を含むデータでファインチューニングすると、ハルシネーションが増える。
  • 教師データには「信頼性の高い情報」を厳選する。

3. パフォーマンスの問題(検索速度・応答速度)

落とし穴

  • 検索対象のデータが膨大になると、検索速度が低下する。
  • LLMへのAPIリクエストが多くなると、処理時間が長くなる。

対策

インデックス最適化(FAISSのHNSW, IVFなどを活用)

  • IndexFlatL2 ではなく、IndexIVFFlatHNSW を使用すると検索速度向上。
  • 検索対象データが10万件以上なら、クラスタリング(IVF)を適用。

キャッシュを活用(Redisなど)

  • 同じ質問に対する検索結果をキャッシュし、繰り返し検索を防ぐ。
  • LLMの出力もキャッシュしてAPIコールを減らす。

非同期処理(Async)を導入

  • Pythonのasyncioを活用し、並列処理で検索と生成を同時に実行。
import asyncio

async def retrieve_documents():
    # 検索処理(非同期)
    pass

async def generate_response():
    # LLMへのリクエスト(非同期)
    pass

async def main():
    results = await asyncio.gather(retrieve_documents(), generate_response())
    return results

4. セキュリティとプライバシーのリスク

落とし穴

  • RAGの検索対象に機密データが含まれると、誤って外部に情報が漏れるリスクがある。
  • LLMが機密情報を保持してしまう可能性もある。

対策

検索対象データのフィルタリング

  • 機密情報(個人情報、取引データなど)が含まれる場合は、検索対象から除外。
  • データマスキング(PII Masking) を適用。

アクセス制御と監査ログの導入

  • RAGシステムを社内専用環境で運用し、外部アクセスを制限。
  • APIリクエストのログを監査し、不審なクエリを検出。

LLMの出力を監視し、機密情報をブロック

  • 生成された回答をフィルタリングし、個人情報が含まれていないか検出。
if "機密情報" in generated_response:
    raise Exception("機密情報が含まれています!")

まとめ

RAGは強力な手法ですが、適切に設計しないと 検索精度の低下、誤情報の生成、処理速度の問題、セキュリティリスク などの課題に直面します。

効果的なRAGシステムを構築するためのポイント

  1. 適切な埋め込みモデルと検索アルゴリズムを選定する
  2. ハルシネーションを防ぐために検索結果を適切にフィルタリングする
  3. 検索速度を最適化し、非同期処理やキャッシュを活用する
  4. 機密情報の取り扱いを徹底し、セキュリティ対策を行う

これらのポイントを押さえることで、より信頼性の高いRAGシステムを構築できます。

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