この記事は株式会社ビットキー Advent Calendar 2022 21日目の記事です。
VPoPの町田(@machdia)が担当します。
自己紹介
ビットキー創業時にSoftwareエンジニアとしてJoinし、モバイルアプリやWebの開発をしておりました。
現在は、Software中心にHome事業部・Workspace&Experience事業部両方のプロダクトマネジメントをやりながら
弊社の根幹であるbitkey platformのマネジメント、UIUXのマネジメントを行っています。
ようはプロダクトに関わること何でもやってます。
■ これは何か
そろそろアドベントカレンダーも残り僅か…!
箸休め的に、ちょっと今までと少し毛色の異なる記事を書こうかなと思います。
普通に一般的な「プロダクトマネージメント」の話ではなく、
ビットキー創業時に私が苦戦しながらも実行してきたプロダクト開発について「ビジョン」というテーマで
記事を書いてみようかなと思います。
以下の要素については今回、話題に出しません。
- 開発組織体制について
- 事業について
■ 対象読者
- プロダクトビジョンとか言われてもわからないよ
- ビットキー初期どうしてたか知りたい
- 今から起業しようと思ってる
- これからプロダクトグロースしていこうとしてる
こんな事を思ってる人達に「プロダクトビジョン」について、少しでも考えや作る上でのスタンスなどの
ご参考になればと思ってます。
※決して、こうあるべきとかはなく、状況によって様々な選択肢があると思ってるのでいちVPoPの意見
と思って頂けると幸いですw
■ 創業当時(2018年8月)
どんな企業であれ、創業時はその会社のCEOが強いビジョンやミッションを持っているし、そのビジョン・ミッションに
共感したメンバーが創業メンバーとして集まってると思います。
弊社も同様です。弊社のミッションは「Connect Everthing ~テクノロジーの力で、あらゆるものを安全で便利で
気持ちよくつなげる~」です。
....
これで何作るかわかります!?創業当時、私はイメージできませんでした。
このミッションを作ることに至ったストーリーを聞けば、当然少しはイメージ湧きます。
でもこれだけじゃ、プロダクトは作れません。
どんなマーケットに対して、どんなペルソナのペインをどう解決したいのか
これが明確にないと、プロダクトの形も見えません。
当時2018年にあったキーワードは
「不動産賃貸」「スマートロック」「権限のシェア」「ドア中サービス」
です。
※ドア中サービス・・・「暮らし」に関わるサービス(家事代行や配送など)を非対面で実現するサービス(弊社内の言葉です)
そして当時の事業は「トビラ」という名前です。
.....
さて、ここから何を作るか具体化させる必要があります。
どこの会社もミッションは強ければ強いほど、より抽象的であり、受け取る人にとっては異なる解釈が存在するような
ものだったりします。
でもプロダクトは実態のあるもので、会社のミッションを具現化したものであるべきです。
.....
この情報量でいきなりプロダクトのビジョンなんて描けるわけがない。
■ 何を作るか困り果てる創業1年目…
さて、、、2018年当時、今でこそ「プロダクトマネジメント」という言葉がいろんなところで聞くようになりましたが、
当時の私は、言葉は知ってても具体的に何をするべきかなんてわかりませんでした。
「スマートロック?触ったことも見たこともない...」
「モバイルアプリ?Webアプリケーション?経験ないよ...?」
「GCP?AWS?..私前職オンプレしかやったことないよ?」
こんな状態の中で、
エンドユーザーに直接的に届けるプロダクトとして具体的にどのようなものを作るか決める旅が始まりました。
このとき、以下の要素だけは大事にして、プロダクトを創る一番最初のアウトプットとして何がベストか
考えてました。
- エンジニア以外と共通認識を持てる何か
- より具体的である何か
- プロダクトの方向性に迷ったときに拠り所になる何か
■ プロダクトリリース後の世界の言語化
全員が同じ方向向いて「創る・売る」ができる状態にまずしようと思い、初めたのが
「物語作成」です。(当時ポエムって呼んでいました。)
毎日1話、約15日間くらい全社員にお届けしていました。
ものすごく具体的に、自分たちが創るプロダクトが入ったあとの世界(日常の営み)を物語として、
書きまくってました。
■ なぜ社員全員?
プロダクトを創ってるのは誰か...
エンジニア、プロダクトマネージャー、スクラムマスター...だけでなく
- それをマーケットに届けてくれる営業する人
- エンジニアを採用する人
- 顧客に対してカスタマーサクセスする人
- プロダクトを通して得られるお金などを管理する人
など多くの人が一丸になって初めて創れると思っています。
創業初期やプロダクト開発初期は特に、全員が同じ方向を向いて一丸になる事が大事だと思っているからです。
前述の「エンジニア以外と共通認識を持てる何か」につながります。
■ なぜ毎日、読み物に?
全員に伝えるために、MTG開催して説明するのもありですが、1度のMTGでは定着しないと考えているからです。
では、複数回MTGを開催するか?それではコストがかかり過ぎてしまう...将来Joinしてくれる人には...?
という背景から、いつでも読めるものを選択しました。
あと、「読んで!」って言っても読まない人は一定数絶対にいると思い、毎日小出しにすることで「読むきっかけ」を
高頻度で発生させようとしていました。
このときに作った物語は、「会社のビジョン・ストーリー」と「キーワード」を元に、まずは「徹底的に既存プロダクト
から学ぶ」ことに注力してます。
よほど革新的なプロダクトでなければ、絶対に参考になる領域や近い領域はあると思います。
世界中探せば必ずある...!
今でこそ、「ペルソナ」や「カスタマージャーニー」などの言葉でフレームワークを使って整理することが
主流かもしれないですが、当時はそんな事しらなかったので本当に一言一句セリフまで書いてました。笑
前述の「より具体的である何か」「プロダクトの方向性に迷ったときに拠り所になる何か」につながります。
■ やり続けたらどうなったか
当然といえば、当然かもしれないですが「どんなものを創るか」の解像度が全体的に上がったと思います。
実際にどれくらい上がったか定量的にはわからないですが、少なくとも私と一緒にSoftware開発を創業時から
やってるメンバーとは目線が合うようになったと思います。
それ以外に、
- メインターゲット層がふんわりわかる
- 提供するFunctionがふんわりわかる
- 優先順位がふんわりわかる
という状態は作れたと思います。
またエンジニアだけでなく、採用担当者や営業担当に対して
- プロダクトの具体的な世界観のイメージが湧く
- 「言葉」の共通認識が取れる
- 純粋に読み物として楽しみにしてくれる
という状態も作れる事ができました。
■ 得られた学び
いきなりプロダクトビジョンはなくてもいい
プロダクトを0から創る上で、いきなりビジョンから考え始めても時間だけ過ぎていきます。
※その時の会社の状況などによって、そうじゃない場合もあると思います
プロダクトのビジョンよりも、具体的にどうゆうものを作ろうとしてるかのイメージを作ることの方が大事だなと
思います。
全員同じ方向に向いている状態は大事
創業時作った物語があった事で、エンジニア組織だけでなくビジネスサイド含めて同じ目線や言語で
話せた事はその後のプロダクトを創る上でコミュニケーションコストもある程度低く進めることができました。
ただすべて、全員が同じ理解度ではなく全員「ふんわりわかる」状態です。
それでも、全然十分だなと感じます。全員同じ理解度に引き上げるのは難しいですが、、、全員「ふんわりわかる」
状態なら現実的にできるかなと思います。
じゃあビジョンはどうするのか?
プロダクトリリースの先にプロダクトビジョンがうっすら見えてくるタイミングがあります。
ビジョンドリブンでやったほうがいいという声もありますが、誰もがビジョンなんて0からかけるものじゃないです。
でもやりたいことはひねり出せると思います。これの積み重ねていって、プロダクトを形にし続けていくと、
「ビジョン」が明確になってくると思います。
ただ、何も無いところからそもそも「プロダクトの物語」はできないので、「会社のミッション」や
複数のプロダクトを作っている場合は他のプロダクトのビジョンなどを元に、それらと整合する「自分がやりたいこと」
を元とした物語を書くことが大事だなと思います。
■ まとめ
「なんとなくビジョンだけある」とか「何創ろうか悩んでる」とか「やりたいことだけあるけど何がいいかわからない」、
「ビジョン作れって言われたけど・・・」
みたいな状況に陥ったときは一度物語を書いてみては・・・?
※めちゃくちゃコスト高いですが。。。笑
私は、今でもCEO含めた代表陣が思い描くビジョンを理解しつつ、とは言え実際にプロダクトを創っていく際には
具体性の高い物語を描いてます。ビジョンだけでは絶対にできるできないとか何を創るかは意思決定
しないようにしてます。(何創るかわからないので笑)
※実際に作文することはなくなりましたが....
描いた物語通りにプロダクトができなくても究極いいと思いますし、正解もないです。
ただ社内に発信するだけで周りが「ふんわりわかる」状態になれば、物事は絶対に前進します。
その積み重ねの結果、いつのまにかビジョンの解像度が高くなると思ってます。
最後に
やりたいことから「物語」だけ書いても「事業」はうまく行かない可能性があります。というかほぼうまくいきません。
ここに加えて「現実解」として技術制約やリソース制約、ビジネススピード、マーケットニーズ etc...
様々な要素を踏まえて「何を創るか」を意思決定する必要があります。
これはプロダクトに携わる全員が考えるべき事であり、めーっちゃ難しい大変な事です。
この話もどこかでできればと思います。
明日の株式会社ビットキー Advent Calendar 2022は、
Workspace & Experience Product Circle所属の古川(@kzfrkw)が担当します。