フューチャーアーキテクト Advent Calendar 2016の9日目1の記事です。
はじめに
技術書って良いですよね?オライリーとか○○実践入門の本とか。電子・紙問わず、積読がヤバくても、気になる新書はついポチっちゃう的な。自宅とオフィスに所狭しと並べられた技術書を見るとテンションが上がるというか。家族がいる人は、これ以上自宅に技術を持ち込まないで!って怒られたりとか。
そんな 愛する技術書、いざ自分で作れるとしたらどうしますか?ちょっとワクワクしませんか? 今まで消費する側の人間だったのが生産する側に回って見て、裏側を知れるというか。その気になれば簡単に作れるものなので思い切って出版しちゃいませんか?
いやまぁ、色々言いましたが本音は、
ボクはお前らの書いた本を読みたい! もっと色々な技術書を読ましてくれ!
という感じです。
いや、本当、実践テクでもポエムでも何でも読みたい。
技術系同人ってなんなん?
同人誌と聞くと、知っている人は 薄い本、知らない人も漫画やイラストのちょっとHなやつ という印象を持っている方が多いと思います。
しかし、本来の同人誌は 同好の士(≒同じ趣味趣向を持つ人)が出版した雑誌のこと で、決して漫画に閉じた意味ではないです。当然ITなど「技術書」というジャンルも存在し、コミケでは「213 同人ソフト」か「600 評論・情報」がそれに当たります。
中身がどんな感じかといえばこんな感じです。(自分が書いたやつから抜粋)
意外と普通です、漫画じゃなくても良いんです。
他にもCodeZineさん「コミックマーケットに行って、ニッチな技術系同人誌を探そう!」に多くのサークルが紹介されているので、気になる方は目を通してはいかがでしょうか。
いやいや、コミケとか行きたくないし…ね?
日程とか合わないし、なんか臭そうだし・・・?大丈夫です。
多くの先達・有志の方々のおかげで、夏コミ・冬コミ以外にも頒布できる場所が増えつつあります。本当に良いムーブメントだなと感じています。
特にデブサミの即売会コーナーは個人的には画期的だと思います。
- 技術書典
「主催 TechBooster/達人出版会」の技術書オンリーイベントです。
https://techbookfest.org/
技術書典は2016年から始まった出来たてホヤホヤのイベントですね。今後すごくデカくなると思っています。
- デブサミ技術系同人誌・コンテンツ即売会コーナー
日本最大級のエンジニア祭典であるDeveloppers Summitに2017年より即売会コーナーができるそうです!
http://www.slideshare.net/devsumi/developers-summit-2017-69704708
デブサミとか本当に憧れますね。素敵すぎます。
- コミックマーケット
ご存知、夏・冬に@東京ビッグサイトで開催される、日本最大の同人誌即売会イベントです。お盆真っ只中と年末の糞忙しい時期に開催され、りんかい線をやたらと混ませ、東京都品川区あたりの沿線住民から白い目で見られるアレ。開催時期によって夏コミ、冬コミと略され、Twitter上のハッシュタグでは #C89(2015冬)や #C90(2016夏)というように連番付きコード2で表現されます。
http://www.comiket.co.jp/
ちなみに、技術書典ははじめてのサークル参加者向けのミートアップも開催されたみたいです。初心者歓迎という雰囲気は非常にありがたいですね!
また、2016冬のコミケ12/29~12/31におけるIT技術系の日程は12/29(木)3です。平日ですので有給取得が必要そうですが参加してみてはどうでしょうか?
し、幸せになれるの・・?
苦労はあれど、目に見えて一つの作品が出来上がるということはちょっとした感動を覚えます。
エモい話は置いておくと、成果発表のチャネルを増やす というのは楽しさの幅を広げること繋がると思います。Qiitaやカンファレンス登壇など成果発表の場はたくさんありますが、そこに技術同人誌を加えるということ。どれが自分に一番マッチする発表スタイルなのかやってみないとわからないものですが、実は出版というチャネルが一番向いているかもしれません。
ほらほら、やりましょうよ。
で、どうやって技術書つくるん?
とっても簡単です。特にQiitaや技術ブログなどで投稿経験があれば完璧です。文才は不要。絵心も図表が書ければ問題ナッシング。
記事を書いて、原稿データ作って、印刷所に持ち込んで、頒布するという流れです。
記事を書く
原稿に関してはもうほとんどQiitaの記事を書くノリとさほど変わりません。
自分の経験を語っても良いですし、執筆のために新しい技術を習得しても良いと思います。量は20pくらいがちょうどよいかと。
観測範囲ではMarkdownで書くことが多く、GitBookのようなサービス/ツール使っている人もよく見ました。
https://www.gitbook.com/
体裁をがんばるのであればTexが自由度高いと思います。でもWordでも何でも良いかと。最終的にPDFが出力できればなんでも良いです。
コツですが、Markdown変換で見栄えを調整するのは大変なので、表はKeynoteやパワーポイントで作って画像添付してしまうことです。図につける黒枠も画像にする段階で付けてしまいましょう。
あとは複数人で本を作るときは、Slackとかにチームを作ってお互いの進捗を報告しあって励まし合うとか。
原稿データを作る
表紙
表紙は色々な人が指摘しているとおり、出来れば可愛いイラストが望ましいです。
こればかりは、絵心がある知り合いに依頼するしか無いかもです。でも心ぴょんぴょんすればテキストでも何でも良いと思いますよ、無理なく楽しく。
本文
原稿データは PDF でOK。
印刷上、色々注意することがあるので注意。
- 印刷するサイズはA4ではなくB5が多い
- ページ番号(ノンブルとも呼ぶ)が必須
- 奥付が必須(下図)
体裁
紙媒体ならではの整形を行うことがあります。このへんはMUSTではなくWANT。
[例]遇奇ページでヘッダ位置をずらす
ヘッダは最低でも章題をつけましょう。こだわるなら奇数ページのヘッダを節題にすると素敵です。
最適化の余地は他にも様々にあり、凝りだすとけっこう楽しいですが時間も食われます。出来る範囲で良いと思います。
書体
「ゴシックか明朝どっちにすんの」問題です。可愛くならゴシック、内容が真面目なら明朝が良いかなと。わたしはハイブリット型( 本文を明朝・章節の見出しはゴシック)が絶対良いと思っているマンです。フォントサイズは9-11だと思いますが、プリンタで数枚印刷して確認すると良いと思います。
結合
複数人で作業するときの裏技ですが、各々でPDFを出力してもらい、それをPDF結合ツールで1つにすると結構楽でした。人によって使いたいフォーマットやツールが異なるので、ページ番号のオフセットだけ整合性を取れば良いのです。
なるべくラクしましょ。
わたしは以下のツール使いました。単純なPDF結合なのでなんでも良いかと思います。
http://www.cube-soft.jp/cubepdfpage/
構成管理としてはこんな感じ。索引と奥付も分離しておいた方が後々ラクラクです。
ファイルのプレフィクスに連番降っちゃうのも定番ですよね。笑
<book-title>
└──01.索引.pdf # インデックスページ
└──11.${原稿1}.pdf # 原稿本体。${原稿1}の名称は任意
└──12.${原稿2}.pdf
└──1N.${原稿N}.pdf
└──91.奥付.pdf # 出版社とか出版日とか書くための最後のページ
印刷所に持ち込む
まず出版社選びです。「同人誌 印刷社」などでググって選びます。
技術書出版ですが、だいたいが以下の設定です。
- B5
- オフセット
- 表紙フルカラー、本文スミ
マッチしそうなプランを選んで指定のサービスに原稿データをアップロードして、代金を振り込んで終了です。簡単!
気になる印刷料金ですが、早割 と 通常料金 があります。早割は10-30%程度の割引プランなのでぜひ活用したいところです。大体が間に合わないツラミです。ページ数は一人20pくらいがラインかなと思っています。50pもあれば厚みを感じられます。
気になる料金ですが、ざっくりと相場感4は以下な感じです。もちろん印刷所やプランにより前後します。
部数が多ければ多いほど単価が安くなりますが、初回は100部以下がおすすめです。というか50部売るのすらかなり大変な気が…。
売価は永遠の課題ですが、500円とか1000円が多いと思います。なんせお釣りの管理が大変なので…。
頒布する
だいたいの出版社はイベントの当日、直接会場に搬送してくれるサービスがあると思います。50冊でも書籍って重いのでこれはとても助かります。
あとは興味を持ってくれそうな参加者の方にがんばって声をかけて手に取ってもらいましょう♪
もっと詳しく
@kentarosasaki さんの新人同人作家に捧げる技術系同人誌出版ガイドは最高にまとまってますね。
やってみてよかった
色々な人に声をかけてもらえるようになりました。話のネタにも良い。
また、まがいなりにも書籍にするということで体系的に自分のアイデアや考えをまとめるということは良い経験でした。だれかの積読になっていてもそれはそれで良いじゃないですか。
また、いろいろ面白いことが多いので個人的に面白かった小ネタを紹介します
Webと異なる
アウトプットとしての出版はQiitaなどWebベースでとは色々と異なり面白いです。
紙レイアウトを調整するのは普段絶対しないことなので貴重な経験です。目に見えて見やすくなるプロセスは面白いですね。また、一度印刷にかけたら直せないので、QiitaみたいにだれかPRを送ってくれとかいう感じじゃないのも緊張感があって面白かったです。出したらオシマイという諦めもつくし。クロスレビューをお互い実施してワイワイブラッシュアップするのは良いものを作り上げる感がでて良いですね。
出版業界
業界全体的に不景気らしく、同人出版をがんばっている出版社さんも多いみたいです。そのためなのか、対応がとても親切なのが意外でした。
最初は職人肌の印刷屋さんに怒鳴られるのかと思っていましたが、そうでないです。
収支管理計画
最初は紙で本が作れて、コミケという素晴らしい環境で頒布出来て満足でしたが、少なくても収支トントンくらいに持っていきたいということで、作戦を考えます。
どう考えても早割はお得すぎるのでかなりスケジュール管理がんばりました。
そういう意味で、一人でやるとダラダラしてしまうので原稿を3人くらいで書くのが良いと思います。それ以上の人数だと一人あたりのページ数は減らせますが、逆に管理が大変なのでトレードオフで判断かなと思います。
まとめ
- 同人誌出版は絵描きのものだけにあらず、エンジニアもどしどし参加すると良いよ
- コミケ以外にも頒布場所は増えているよ
- 一人20pくらいで本文はPDFに出せば良くて、印刷所への依頼も簡単だよ
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言い出しっぺなのに、Advent Calendar投稿むっちゃ遅れてすいません。笑m(_ _ )m ↩
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こう言われると #C1 って何年なのか計算したくなりますが、1971年ではないです。年に2回以上開催された年もあったからで、調べると1975冬でした。 ↩
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http://www.comiket.co.jp/info-c/C91/C91genre.html より。1列目の数字が何日目かを指しています。 ↩
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https://mikan-no-ki.com/check/estimate.php?SET=11&BS=1&SZ=1&PG=20#list より ↩