1. 年金現価係数とは
年金現価係数は、元本を一定利率で複利運用しながら、毎年一定金額を一定期間取り崩していくとき、現在いくらの元本で複利運用を開始すればよいかを計算するときに利用します。
現在の金額(元本)を$X$、毎年の取り崩し額(年金額)を$Y$、年金現価係数を$\alpha$、年利率を$r$、年数を$n$とすると
$X = \alpha Y$
また、年金現価係数$\alpha$は
$\displaystyle \alpha = \frac{1-(1+r)^{-n}}{r}$
です。
上の数式の日本語版は以下のようになります。
『現在の金額(元本) = 年金現価係数 × 毎年の取り崩し額(年金額)』
『年金現価係数 = (1 - ((1 + 年利率)^(年数 × -1))) ÷ 年利率』
2. 年金現価係数の求め方
2.1 漸化式の立式(n年目の残金について)
まず、元本$X$としたとき、0年目の残金を$x_0$で表しますと
$x_0 = X$
次に年金額$Y$、年利率$r$のとき、1年目の残金を$x_1$で表しますと
$x_1 = x_0(1+r) - Y$
次に2年目の残金を$x_2$で表しますと
$x_2 = x_1(1+r) - Y$
n年目の残金を$x_n$で表しますと
$x_n = x_{n-1}(1+r) - Y$
となります。
$x_n$の式について、右辺を$X,Y,r,n$で表すことが出来れば、
元本$X$、年金額$Y$、年利率$r$、年数$n$と設定したときに
n年目に残る金額$x_n$が計算できます。
この計算は、初項$x_0 = X$、一般項 $x_n=x_{n-1}(1+r) -Y$の漸化式を解く問題に帰着されます。
2.2 立式した漸化式を解く
今から解いていきます・・・
$x_n=x_{n-1}(1+r) -Y$について$x_{n-1}=x_{n-2}(1+r) -Y$を適用しますと
$x_n=(x_{n-2}(1+r) -Y)(1+r) -Y = x_{n-2}(1+r)^2 - Y(1+r) - Y$
更に$x_n= x_{n-2}(1+r)^2 - Y(1+r) - Y$について$x_{n-2}=x_{n-3}(1+r) -Y$を適用しますと
$x_n= (x_{n-3}(1+r) -Y)(1+r)^2 - Y(1+r) - Y = x_{n-3}(1+r)^3 - Y(1+r)^2 - Y(1+r) - Y $
順々に適用しますと、初項$x_0 = X$に注意すれば
$\displaystyle x_n=x_0(1+r)^n - Y\sum_{k=0}^{n-1} (1+r)^k = X(1+r)^n - Y\sum_{k=0}^{n-1} (1+r)^k $
となります。
2.3 n年目に残金が0となるような元本を求める
今回、年金額$Y$で毎年切り崩していき、$n$年目に残金が0となるような値を求めるので、
$x_n=0$となればよいです。
よって、今回求める元本$X$、年金額$Y$、年利率$r$、年数$n$の関係式は以下のようになります。
$\displaystyle x_n = X(1+r)^n - Y\sum_{k=0}^{n-1} (1+r)^k = 0$
2.4 年金現価係数を求める
$x_n = 0$の式から年金現価係数$\alpha$を求めます。年金現価係数$\alpha$は
$X = \alpha Y$
となるときの$\alpha$でした。
よって、$\displaystyle X(1+r)^n - Y\sum_{k=0}^{n-1} (1+r)^k = 0$の式を$X$について解けばよいです。
これを解きますと
$\displaystyle X(1+r)^n = Y\sum_{k=0}^{n-1} (1+r)^k$
$\displaystyle X = (1+r)^{-n} Y\sum_{k=0}^{n-1} (1+r)^k$
$\displaystyle X = Y\sum_{k=0}^{n-1} (1+r)^{k-n}$
$\displaystyle X = Y\sum_{k=0}^{n-1} \left (\frac{1}{1+r} \right )^{n-k}$
$\displaystyle X = Y\sum_{k=1}^{n} \left (\frac{1}{1+r} \right )^{k} \cdots (※)$
2.4.1 等比数列の総和の公式について
ここで、等比数列の総和の求め方を思い出すと・・・
$\displaystyle S = \sum_{k=1}^{n} R^k = R + R^2 + R^3 + \dots + R^n \cdots (1)$
両辺$R$を掛ければ
$\displaystyle RS = R\sum_{k=1}^{n} R^k = R^2 + R^3 + R^4 + \dots + R^{n+1} \cdots (2)$
ここで$(2)-(1)$を計算すると
$\displaystyle RS - S = R^{n+1} - R$
これをSについて解けば
$\displaystyle S = \frac{R^{n+1} - R}{R-1} = R\frac{R^{n} - 1}{R-1}$
となって等比数列の総和$S$が求められました。
2.5 年金現価係数を求める話に戻ると・・・
今回は$\displaystyle R=\frac{1}{1+r}$なので、等比数列の総和の式を$(※)$に適用すると
$\displaystyle X = Y\sum_{k=1}^{n} \left (\frac{1}{1+r} \right )^{k} = Y \left ( \frac{1}{1+r}\right )\frac{\left (\frac{1}{1+r}\right )^{n} - 1}{\left (\frac{1}{1+r}\right )-1} = Y \frac{\left ({1+r}\right )^{-n} - 1}{1-(1+r)} = Y \frac{1 - (1+r)^{-n}}{r}$
$\displaystyle \alpha = \frac{1 - (1+r)^{-n}}{r}$とすれば
$X = \alpha Y$
となります。よって年金現価係数$\alpha$は
$\displaystyle \alpha = \frac{1 - (1+r)^{-n}}{r}$
と求めることができました。
3. 具体的な値で年金現価係数を求めると・・・
年利率3.0[%]$(r=0.03)$と20年$(n=20)$の年金現価係数$\alpha$は
$\displaystyle \alpha = \frac{1 - (1+0.03)^{-20}}{0.03} = 14.8775$
となります。(ここで計算結果が分かります)