これは何
UXリサーチ超初心者が、
KA法(本質的価値抽出法)を用いてユーザーインサイトを見つけるまでに
どれだけの時間がかかり、どういった人員体制で行ったかを
セルフツッコミを交えながら書き記したものです
KA法とは、紀文食品の浅田和実氏が、新商品開発のために開発した分析法です。調査データを分解・カード化・マップ化し、ユーザーの日常生活の行為に関する調査から、ユーザー行為の背景にある“価値”を導出します。
引用:KJ法とKA法の特性と使い分け
このKA法を、羽山祥樹さんの記事を頼みの綱にして進めました。
作業詳細を知りたい方はこちらを参考にしてください👀 (この記事では作業詳細については程々にしか記載しません。)
対象読者
- KA手法での分析に、どれくらいの労力(作業・工数・人員)が必要か掴みたい方✋
何が得られるか?
- ユーザーインサイトを見つけ出すまでの作業工程が掴めます。
- 分析作業工数が見積れるようになります。
- この記事をもとに、「だから、手伝ってくれよ~」と協力者を得られる(はず)です。
なぜ、KA手法を選んだのか
理由はいくつかあります。
1. ユーザーインサイトを見つける為の定性分析で、最もよく使われる手法が「親和図法」だから。
2. KA手法は初心者でも使いやすいらしいから。
3. 羽山さんのスライド説明がわかりやすく、腹落ち感があった
どうやってインサイトに辿り着いたかの説明も必要になりそうな環境でしたので、
「ユーザーインタビューのプロがオススメしてくれてる手法なんだし、これなら皆納得するっしょ!」
という考えも大いにありました。(小声)
まとめると、
初心者でも確証バイアスを避け、抜け漏れなくユーザーインサイトを見つけ出せる手法だと思った為です。
「いや、仮説が当たっているかを発話録から探せば良いのでは?」
という意見も、もちろん頭によぎりました。
しかしながら、羽山さんはスライドにこう記載していました。
(お気づきの通り、私は羽山さんスライドを水戸黄門の印籠かのように出していきます)
- 人は「自分の仮説に合う情報」に意識を奪われる為、どんなに頭のいい人でも避けられない。(確証バイアス)
- 人間が人間の事を考えるので、仮説は3つくらいは当たる。
- 人間は複数の心理をいったりきたりする。
- 立てた仮説以外の心理を見逃さないようにする。
つまり、分析では「自分の仮説は当たっているか?」の確認をしつつ、「他の心理を見逃していないか?」 を洗い出すことが重要。
この洗い出しを確証バイアスを避けながらやりきるため、 KA法 を用いました。
背景はこれくらいにして、本題に入っていきます。
分析したインタビューの概要
- 対象者
- ある高額商材を検討しているユーザー(商材名は伏せさせて頂きます)
- インタビューの目的
- 「情報収集~契約」に至るまでのプロセスにおけるペインとゲインを洗い出す
- インタビュー人数
- 5名
- インタビュー時間
- 90分
- インタビュー形式
- ZOOMでのデプスインタビュー(1対1の対面でじっくり話を聞く調査手法)
作業工程と見積工数
上記のインタビュ概要をもとに、実際に行ったざっくりとした作業工程・工数見積もり方法を記載します。
- ① 📝発話録の書き起こし
- 見積方法:インタビュー時間×インタビュー人数×1時間あたりにかかる時間(※1)
- ※1:60分のインタビューでかかる時間はプロで4~5時間、初心者で6~8時間
- 見積方法:インタビュー時間×インタビュー人数×1時間あたりにかかる時間(※1)
- ② 📝付箋(KAカード)の作成
- 見積方法:インタビュー人数×付箋1枚あたりの作成時間(※2)×作成枚数(※3)
- ※2:付箋1枚当たり3分~6分
- ※3:インタビュー1分あたり1枚
- 90分のインタビューだと90枚
- 見積方法:インタビュー人数×付箋1枚あたりの作成時間(※2)×作成枚数(※3)
- ③ 📝付箋内に記載された「価値」の抽象化作業
- 各付箋に書かれた「価値」が似ている付箋をグループにして名前を付ける。
- 小グループ→中グループ→大グループする作業
- 見積方法:未知数 (ふざけるな)
- 一旦、2400分・・・40時間で見積り。
- ④ 📝全体のまとめ (仮説に対しての結果、仮説から漏れていた結果は何か)
- 見積方法:担当者のまとめ力次第 (いきなり放り投げ)
- 一旦、120分
- 見積方法:担当者のまとめ力次第 (いきなり放り投げ)
作成物の事例
実際に作成したものを貼っておきます。
これらを作るまでにかかる想定工数 123時間
聞こえます、あなたの心の声が👂
「・・・ちょ、待てよ」 ですよね?
なぜ、その時間をかけるべきかについて、次の失敗談を読んでご納得頂ければと思います。(ゴリ押しスタイル🦍)
以前、私はある失敗をしています😨
直近で行った、同じような内容のインタビューを実施して分析をした時の話です。
その際はインタビューの3日後にレポート提出というタイトスケジュールだった為、
素早くレポートをまとめることを重視してしまい、
重要そうなところを抜粋して、枠組みに当てはめながら作業をしていました。
・・・そう、バリバリにやらかしてたのです ↓。
- 人は「自分の仮説に合う情報」に意識を奪われる為、どんなに頭のいい人でも避けられない。(先入観(確証バイアス))
- 人間が人間の事を考えるので、仮説は3つくらいは当たる。
- 人間は複数の心理をいったりきたりする。
結果、ユーザーインサイトが見つかったとはいえない、微妙な分析レポートを作っていました。
その為、ユーザーインサイトに確実にたどり着く上で、効率化は逆効果だということを体感しました。
さて、工数に関して腹は括った所で次は人員体制の話をします。
人員体制
インタビュー分析に知見のない方チームで始める場合は、2~3名👨👧👧で行う事を推奨します。
(作業内容が間違っていないか、進捗管理できる人数)
- 理由
- ①1名でやった方が良い理由はない。複数名の方がレポートが確実に早く上がる。
- ②プロダクトのチームメンバーを巻き込んだ方が、チーム全体でのユーザーインサイトへの理解が深まる。
- その後行われるインサイトを元にした議論がスムーズになる。
どの作業を誰に依頼すると良いか
作業 | 誰に | 依頼時のポイント |
---|---|---|
発話録の書き起こし | アルバイト・外注で〇。 | とにかく抜け漏れなく、文脈変えないようにと依頼。 |
付箋作成 | ①プロダクトメンバー ②接客をしている方 ③口コミ・アンケート分析している方 |
マニュアル※をもとに10分ほど軽く説明すれば、問題なく作業にあたって頂けます。 |
付箋まとめ | 同じチームメンバーの方。 | マニュアル※をもとに10分ほど軽く説明すれば、問題なく作業にあたって頂けます。 |
※マニュアル
羽山さんの神スライド内に詳しい作業内容が書かれているので、作業ごとにページを指定して渡してあげるとスムーズです。
(めちゃくちゃ人様のひとつのスライドを多用)
依頼する方について補足説明
-
① プロダクトメンバーに依頼する理由
- レポート結果の精度は定量的に測れない為、「このインタビュー結果が正しいのか?」という問いが付きまといます。
- その為、レポートを元にした議論をする方にはKA法の理解と共に、作業に入って頂くことでレポート結果への納得感が高まるよう環境を作りましょう。
- レポート結果の精度は定量的に測れない為、「このインタビュー結果が正しいのか?」という問いが付きまといます。
-
② プロダクトメンバー以外の方にお願いする場合、誰が適任か
- 付箋作成をヘルプする場合は、文脈をもとにユーザー心理を捉えることが出来る方が適任です。
- 普段からお客様の接客をしている方
- 口コミ・アンケートからユーザーインサイトを掴む業務を行っている方
- 付箋作成をヘルプする場合は、文脈をもとにユーザー心理を捉えることが出来る方が適任です。
【結果】どれだけの工数・人員をかけたのか・・・
- 工数
- 119時間
- 人員
-
MAX3名
- 発話録:1.5名 (社員+アルバイト)
- 付箋作成:3名 (社員)
- 付箋まとめ:2名 (社員)
- 全体まとめ:1名 (社員)
-
MAX3名
わー!!!!👏👏👏👏👏
まずまずの時間で収めることが出来ました。(当初、何も考えずに24時間とか見積もってたという恥を画像上部にそっと晒しておきます)
この作業を乗り越えて得たこと
- ユーザーの心理の全体像が見渡せた。
- プロダクトにまつわるサービス全体で利用できる。
- 市場が大きく変わらない限り、何年かは再利用できそう。
また、次回同じ工程を進める際にはもう少し時間を短縮できそうです。
- 1回きちんと通してやった人は時間を短縮できる。
- 1回も通しでやったことがない人は、インサイトを取り違える。
- 通してみてはじめて感触がつかめる
- 切片とグループの粒度、文脈を解釈するということ。
- 複数の人間の異なる行動が、同じ文脈であるということ。
- 人間の心理や行動はでもグラフィックではさほど変わらない事。
参考:あなたの手元の本よりいい方法がある! UXデザインのプロはこうやってユーザーのインサイトを確実に見つける
※何回使わせてもらうねん・・・
やり直し発生ポイント~対策😢
発話録の作成
事象: 解釈して書き起こすと、文脈がズレてしまう
- 原因
- 文字お越しツールを使えばいいやん!と使ってみたら、結局は録画をみて再度書き直しに。
- 対策
- ツール導入含めて、文字起こしツールを利用する時間と天秤にかけて判断するとよいでしょう。
- ツールは精度が高いものであれば軽微な修正だけなので時間短縮が叶います。
- ツール導入含めて、文字起こしツールを利用する時間と天秤にかけて判断するとよいでしょう。
付箋作成
事象: 複数名で行うと、作業方法によって解釈度合いにバラつきが出て、やり直し・書き直しによる工数が肥大化。
- 原因
- 作業効率UPの為に、1つの付箋内に書くこと(出来事・心の声・価値)をそれぞれ別々の人達が書くと、付箋KAカードの出来事だけを見て心の声を抽出するため、文脈がズレた心の声になりがち。
- 対策
- ① ひとりで発話録からKAカードまでを担当すれば、文脈がズレにくい。
- ②分担する場合、発話録をきちんと読みながら行えば、文脈がズレにくい。
- どの会話から抜き出されたものか、発話録を見ながら付箋を作成する。(できれば付箋の横に発話録があると、カード作成時も後で見返すときも楽)
付箋をグループまとめ
事象:グルーピングの基準を独自の観点(機能別で分ける等)で行ってしまい、やり直し。
- 原因
- 扱う付箋は何百枚と多すぎて作業が数日にわたり、手順で押さえるべきポイントを忘れてしまう。
- 対策
- アナログですが、作業しているFigjamに抑えるべきポイントを大きく表示させて忘れないようにする。
最後に・・・
より良いプロダクトづくりに、深いインサイトは欠かせません。
その為、この作業・工数は必要なものだと腹を括ることが大切だと思いました。
急がば回れ
最後まで読んで頂き、ありがとうございました!