前提
UXとは何ぞや?だった私が(2023年5月受験実施)UX検定合格を目指し、
シラバスに則った学習記録です📝
- シラバス(出題範囲)
- 推薦図書📚
これは何
本記事ではUX検定の シラバス(出題範囲にある、「デザイン思考」について以下を目的にまとめたものです。
デザイン思考の考え方や実現プロセスを理解する
※推薦図書だけでは理解できなかった点があったため、他の図書やインターネット上の記事等を参考にしながら学習しています。
対象読者
- HCD・UX未経験者
- UX検定を受験しようと考えている方
- デザイン思考とは?をざっくり知りたい方
目次
- デザイン思考とは
- デザイン思考導入プロセス
- デザイン思考が必要とされる背景
- デザイン思考のアプローチ
- デザイン思考を用いた製品・サービスの開発プロセス
- ビジネスとデザイン思考
デザイン思考とは
デザイン思考の定義について学習を進めていくと、いくつかあったのでまとめたものが以下です。
参照元および定義者(社) | 定義内容 |
---|---|
人間中心設計入門(HCDライブラリー第0巻 第6章P74 | HCDを基本にした創造的なデザインアプローチを多様な分野で活用する事 |
IDEO社CEO ティム・ブラウン | デザイナーの完成と手法を用いて、ユーザのニーズと技術的な実現性、持続的なビジネス戦略を考慮することで、顧客価値を市場機会にしていく手法 |
スタンフォード式 デザイン思考 | 「人々が持つ本当の問題を解決する」ための考え方・マインドセット |
個人的には一番腑に落ちたのは、"スタンフォード式デザイン思考"の中にあった次の一文でした。
デザイン思考(Design Thinking)とは
「問題を解決する方法を 設計(Design)するための考え方(Thinging)」
IDEO社とデザイン思考
IDEO社のティム・ブラウン氏が提唱したデザイン思考のプロセスがあります。
イノベーションに不可欠な3つの要素
- 人間(有用性)
- 技術(技術的実現性)
- ビジネス(経済的実現性/持続的 可能性)
これらが重なり合うところにイノベーションがありますが、
デザイン思考ではまず「人間」に注目します。
そして商品やサービスを利用する人の要求を知ることを起点に、
アイデアの創出、ビジネス化の検討を行うプロセスを提唱しています。
ノーマンとデザイン思考
ノーマン氏は2013年に出版した本にて、デザイン思考を大きく取り上げています。
※参考:ノーマン氏ってどんな方
デザイナーは、対処すべき基本的で根源的な課題は何かをみきわめるのにまず時間を費やす。
彼らは、本当の問題が何かを見定めるまでは解決策を探そうとしない。
問題が定まった時でさえ、問題を解決しようとはしない。
彼らは立ち止まって、広い範囲から可能な答えを探す。
そうして初めて、最終的に彼らの提案を収束させていく。
このプロセスはデザイン思考と呼ばれる。
と記述されています。
※参照元 誰のためのデザイン?増補・改訂版
また、デザイン思考の2つの強力な道具として、HCD、ダブルダイヤモンドの発散・収束プロセスの活用について述べています。
▼ダブルダイヤモンドモデル
最初は正しい問題を見つけるためにアイデアを展開して、課題を探求。
次に、正しい問題が明らかになったら、その問題を解決するためのアイデアを展開して収束させる。
※参照元: 人間中心設計入門(HCDライブラリー第0巻 第6章P74
イノベーションとデザイン思考
ヨーゼフ・シュンペーターの定義
イノベーションとは、"経済活動の中で生産手段や資源、労働力などをそれまでと異なる仕方で新結合すること"
イノベーションは新しい技術をうみだすことだけではなく、大きく分けて2つあります。
① 新しい技術から生まれる技術中心のイノベーション
② ユーザーの理解を起点に始まる人間中心のイノベーション
現代は①に限界が来ており、②に期待されるようになりました。
そのため、デザイン思考やHCDが重要となります。
ラリー・キーリーの定義
イノベーションとは持続可能な新しいオファリングを生み出すこと
※オファリングとは・・・提供されるもの、売り出されるもの
ラリー・キーリーが分類した10タイプのイノベーション
イノベーションを成功させるためには、10タイプの1つがあればよいのではなく、
できるだけ多くの項目が含まれているとイノベーションに結びつくことを説明しています。
これらの10タイプを以下の3つのカテゴリーで整理されており、デザインという視点でまとめると以下になります。
※参照元: 人間中心設計入門(HCDライブラリー第0巻 第6章P78
イノベーションのタイプとデザイン思考
イノベーションのタイプとデザイン思考はわかりやすく下記のように分類されています。
※参照元: 人間中心設計入門(HCDライブラリー第0巻 第6章P80
デザイン思考導入プロセス
導入プロセスと課題
持続可能な新しいオファリングを生み出すイノベーションの為には、全社員がデザイン思考を活用する必要があります。そのために、デザインの活用を段階的に導入するステップが必要です。
下記の図はそのプロセスと、課題の図です。
※引用元:国際競争力強化のためのデザイン思考を活用した経営実態調査 報告書
広義のデザインへのアプローチ
上記の課題にもある通り、デザインへの見方を「狭義のデザイン」から「広義のデザイン」に変える必要があります。
そのためのアプローチ
- トップダウン
- 経営者や事業部長などのトップがデザイン思考の必要性を理解して、活用を進めること。
- ボトムアップ
- デザイン思考などの重要性を感じた担当者が共感者を広めるアプローチ。
アプローチを具体化する3つの方法
①コミュニケーションデザイン
複雑な内容を対象者に分かりやすく、魅力的に伝えるためのデザインアプローチのこと。
企業によって、デザイン思考の活用の役割や、活用方法が異なりますので、それぞれふさわしいコミュニケーションデザインを活用することで、関連者の共感を得ることができます。
②デザインワークショップ
参加者が自ら体験し、参加者同士の相互作用により、学んだり、想像したりするアプローチのこと。
参加してもらうことで、デザイン思考への共感と学びが進行します。
②リフレーミング
新たな観点(フレーム、枠組み)で、状況をとらえること。
フレーミングとは、日常的なものの捉え方です。
例)テーマ:軽い眼鏡を作る
- フレーミング
- 眼鏡を軽くするという、一般的な観点での開発となる
- リフレーミング
- 眼鏡をつけていることを感じさせない快適な生活、として考えてみる。
- 快適さをどのように定義するかで観点が変わり、新しいデザインを提案する視点となる。
- 眼鏡をつけていることを感じさせない快適な生活、として考えてみる。
※参照元: 人間中心設計入門(HCDライブラリー第0巻 第6章P82
デザイン思考が必要とされる背景
人々が持つ本当の問題を解決する製品・サービスのイノベーションのため
現代は情報が溢れており、日々たくさんのテクノロジーや新サービスが私たちの周りに現れています。
人間の行動は新しいサービスを受け入れることで変化している為、
沢山の方が使いたくなる製品・サービスを生み出すことは容易ではなく、
ユーザーの潜在的なニーズ・課題を見つけ出し、解決する力・・・つまり、良質なUXを創出することが必要とされます。
しかし、UXで注目すべきは優れたUXではなく、それを使う「人々のニーズを正しく理解する」ということです。
デザイン思考は、最小のリソースと予算で行うものでもあるので、日々との本当のニーズを見つけるのにとてもクリエイティブな効果を発揮します。また、プロトタイプからテストまでを高速で行うため、「必要のない機能を捨てる決断が早くできる」という利点もあります。
そういった背景から、近年はデザイン思考という考えを導入しようとする企業が多くなっています。
それは製品・サービスのイノベーションの為にデザイン思考が活用できる可能性があるためです。
参照: スタンフォード式 デザイン思考
個人の見解ですが、デザイン思考自体はあくまでイノベーションを生み出すためのマインドセットであり、
万能なメソッドではないということは留意しておくべきだと思います。
デザイン思考の活用先
誤解されがちですが、デザイン思考はデザイン分野以外にも多様な分野で活用することができます。
- 企業戦略
- サービス企画
- 商品企画開発
- 市場創造
- ビジネスプロセス改善
- 研究企画
- 人事部門
デザイン思考のアプローチ
デザイン思考の基本的なアプローチとして、HCDの考え方と同様の「ユーザー視点」、デザイナーが得意としてきた「多様な発想と統合」と「視覚化」があります。
デザイン思考のプロセスは基本的にはHCDサイクルと同様ですが、
HCDと比較して特徴的なポイントがあります。
- 観察による共感
- 多様なアイデア発想
- クイックなプロトタイピング
- これらを繰り返す反復に重きを置く
- プロセスが決まっておらず、プロジェクトの目的にふさわしいデザインのやり方やプロセスを考えるところから始めることが重要
IDEO社のデザイン思考 5つのステップ
-
共感
- 観察やインタビューを活用して、文脈と人を考えて、理解すること。
-
問題定義
- 正しい問題設定を探し、どこに着目したらよいか考えること。
-
アイデア創出
- ブレスト等を活用しながら、多くの可能性を考えること。
-
プロトタイピング
- アイデアを視覚化して考えること
-
検証
- 提案するデザイン案に対してユーザーのフィードバックを得る事で、ユーザーを理解するもう一つの機会
ノーマンのデザイン思考の為の人間中心デザインの反復サイクル
ノーマンはデザイン思考の強力な道具の一つとしてHCDを位置付けています。
そしてダブルダイヤモンドを活用し、デザイン思考の為の人間中心デザインの反復サイクルを提案しています。
上記の図のサイクルを繰り返すことにより、深い洞察が生み出され望ましい解決策に近づきます。
- 観察
- 応用エスノグラフィという手法で潜在顧客の元へ行き、活動を観察し、興味、動機、真のニーズを理解する
- アイデア創出
- ダブルダイヤモンドの正しい問題を見つける段階と問題解決の段階の2つの段階で行われます。
- そのためには多くのアイデアを創出し、制約を気にせず独創的で、あらゆることを質問することが大事です。
- プロトタイピング
- すばやく立体物や視覚化した物をつくることや寸劇やオズの魔法使いのプロトタイプを活用します。
- ※オズの魔法使いのプロトタイプとは、プログラミングの代わりに人間がコンピューターが行っているかのように見せる手法。
- すばやく立体物や視覚化した物をつくることや寸劇やオズの魔法使いのプロトタイプを活用します。
ビジネスとデザイン思考
デザイン思考とビジネスは密接な関係にあります。近年、デザイン思考やHCDを導入しても、そのアイデアや提案がビジネスにつながらないことがります。
考えられる原因
- 初期段階よりビジネス視点を考慮していない
- 製品・システムのイノベーションしか考慮していない
- 新しいビジネスへの対応がこれまでの仕組みとそぐわない
このような課題を解決する方法として、以下のようなアプローチがあります。
初期段階よりビジネス視点を考慮する
- ビジネスモデルの活用
- ビジネスに関連する要素や流れを視覚的に分かりやすく表現したもの。
- ビジョン提案型デザイン手法のフレームワーク
- ビジネスモデルキャンバス
- ビジネスに関連する要素や流れを視覚的に分かりやすく表現したもの。
経験のデザインのアプローチを取り入れる
「製品・システムのデザイン」と「経験のデザイン」の組み合わせにより成功している企業が多くあります。これは製品・システムのHCDだけでなく、UXを考慮するという考え方にも似ています。
10タイプのイノベーションによると、
経験のデザインにはサービス、チャネル、ブランド、顧客エンゲージメントの4タイプが含まれます。(※上記図の右への矢印)
これをUXという視点で顧客との関係を捉え、「顧客との関係」をデザインします。まさにUXデザインと同様のアプローチということができます。
▼具体的なアプローチ
- 製品・システムのデザインにオファリングとして経験デザインを活用する方法
- 例)提案書のデザイン
- 経験のデザインという視点で製品・システムのデザインを検討する方法
- 例)オムロン社のねむり時計
- どのような製品にするか決定していない段階で、まずは多くの人たちのねむりの体験を集める活動から開始して製品を開発。
- 例)オムロン社のねむり時計
組織デザインのアプローチを取り入れる
製品・システムのデザインと経験のデザインだけでは、既存ビジネスの仕組みとかみ合わず、イノベーションを継続できない場合があります。
企業の内側にある「組織のデザイン」を活用することで、このような問題に対応することができます。(※上記図の左への矢印)
「組織のデザイン」には、利益も出る、ネットワーク、組織構造、プロセスの4タイプが含まれます。この場合のデザインとは「組織の仕組み」をデザインすることです。hCDやUXの対象ユーザーを、組織を構成する社員や関連する人とすることで、この組織のデザインを進めることができます。
▼具体的なアプローチ
- ビジネスを成功させるために組織をデザインする場合
- 持続可能な新しいオファリングをするために組織をデザインする場合
- 例)新規事業への投資を行う組織や仕組みを変えることで、ビジネスが成功しやすくなる
- 例)イノベーションを継続的に創出するために、それを実行するための人事制度やプロセスをデザインする
最後に
「デザイン思考」という言葉を「顧客体験を設計する」ものだと思っていましたが、
活用範囲の広さやたくさんのアプローチがあるのだと学びました。
多様化が進み、情報や新しい技術にあふれた社会で起きる問題は複雑化しているため、
正しいソリューションを見つけるのがより困難となるケースが多発するかと思います。
そんな時に、このデザイン思考を活用できるよう引き続き学び続ける必要がありそうです。