はじめに
最近、組織マネジメントの書籍やYouTube動画を見漁ってまして、その中でも勉強になった動画があるので、紹介します。
坂井風太さんという元DeNA人材育成責任者、現在は株式会社Momentorの代表として人材育成/基盤の構築支援をしている方がZ世代はなぜ早期退職をしていくのか、その構造や対策は?といったことを教えてくれる動画です。気になる方はぜひ。(本記事は主に1本目の動画の内容です。)
新卒社員の就職後、3年以内離職率
まずは離職率のデータからお見せします。(厚労省の発表しているデータです)
2020年3月に大学卒業し、就職した人が"3年以内"に離職したのが、32.3% となっています。
新卒の3人に1人は3年以内に辞めちゃうんですね…
優秀な若手社員がなぜ離脱していくのか
では、なぜ早期離職してしまうのかの構造的なところから。
「キャリアの早期構築願望」の高まり
終身雇用の概念があったこれまでと違うため、「キャリアの早期構築願望」が高まっているというのが、大きな要因としてあります。
SNSの台頭で同世代の活躍が可視化された結果、焦燥感のようなものが生まれているのも要因と言えますね。
これまでの時代は10年やそれ以上の時間をかけ、じっくりキャリアを積み重ねて来たところ、現代では終身雇用がなくなったことで、悠長なことを言っていられなくなったわけです。
「早く手に職付けて、よそでも通用するようにならないと」というのが、頭にあるんですから。
「見切り」の早期化
「キャリアの早期構築願望」の高まりに伴って、「見切り」の早期化が発生します。
「このまま会社に居ても大丈夫なのかな…」という不安感があるため、頭の片隅には転職の文字が浮かぶわけです。
マネージャーとの1on1や人事アンケートで10年後どうなりたいですか?みたいな件はどこの会社もあるかと思いますが、数年先のキャリア構築に囚われているZ世代にとっては、より焦燥感を煽る結果になるかもですね…
「いても無駄」と「言っても無駄」
不満はないけど、不安はある
動画内で坂井さんの仰っていた、なるほどなーというお言葉です。
早期離職がある会社で人事から「不満はありますか?」とアンケートを取っても不満はないことが多いそうな。離職者の多くは不満ではなく、漠然とした不安があるそうです。
いても無駄
働き方改革やパワハラに対応したことで、「先輩、上司は優しいけど、ぬるま湯すぎて成長できないことに不安を感じる」という別の問題が発生しているわけです。
「キャリア安全性の欠如」とは現在の職場で働き続けた場合、自分のキャリアの展望は安全であるという認識を示すものです。
例えば、キャリア安全性の高い職場なら「この会社の上司、先輩はどこでも活躍できるのにこの場所を主体的に選んで挑戦しているな」であったり、「この職場で働いていれば、どこでも活躍できる人材になれそうだし、キャリアの展望は明るいな」といった状態になるそうな。
逆にキャリア安全性の低い職場では、「この会社の上司と先輩は転職しても今以上の給料もらえる感じしないな…」であったり、「自分も将来よそでは通用しない人になってしまうんじゃないかな…」と思ってしまう。
言っても無駄
生存者バイアスはよく戦闘機で例えて説明されます。
"戦闘から帰還した戦闘機の被弾箇所を洗い出し、その被弾が多かった部分は尾翼だったそうな。それなら尾翼を補強すれば、墜落する可能性を抑えられると判断し、そこを補強した。"
一見、正しいように見えますが、調査に使った戦闘機は帰還、つまり生存した機体であって、補強しなくても墜落しなかったのです。真にみるべきは墜落した機体の被弾箇所であり、生存した機体のデータは正しいとは限らないわけです。
これは職場でも見られる光景です。
「自分はこうやって成長した」だったり、「自分はこうやって指導されてきたからこうしろ!」というやつですね。
正しいか分からないものが生存者バイアスによって、正当化されてしまい、何かを提案しても「言っても無駄」となってしまう。
ゆえに悪しきマネジメントであってもそれが横行して、優秀な若手が離脱する一因になってしまう。
現代の人事・組織施策の三大問題点
「働きがい」を置き去りにした「働きやすさ改革」への集中
働き方改革によって、労働時間の見直しや有給消化率の向上、パワハラ/モラハラ防止などはしたけど、それはあくまで「働きやすさ」の観点だよねーって話です。
理不尽な説教や法外な労働時間がなくなってもそれは働きやすさであって、「働きがい」を改善しないと優秀な社員は離脱してしまうのが、現実です。
如何に働きがいに着目して施策を打てるか、キャリア安全性を向上できるかが課題ですね。
MVV/人事制度刷新など見栄えの良い「空中戦施策」への集中
空中戦施策と言っているのは、評価制度の見直しや1on1/コーチング施策の導入、360°フィードバックなどの組織施策のことです。
これらは導入したからといって何か変わるかと言えば、中身が伴っていなければ意味がないですよね。それよりも大事なのは地上戦施策です。
地上戦施策は各マネージャー(もっと言えばミドルマネージャー)が作りあげる風土組織=組織基盤のことです。動画内では主に以下3つの風土が説明されていました。(各々の詳細な説明は省きます)
- 挑戦する風土(ジョブクラフティング/オーセンティックリーダーシップ)
- 学習する風土(経験学習論/アンラーニング/心理的柔軟性)
- 人がつぶれない風土(リアリティショック/組織社会化)
組織というのは小宇宙の集合体です。(面白いワードチョイスですよね)
数百人以上の規模の会社となれば、会社の全メンバーに関わることなんてできないはずです。
我々が見えている「うちの会社ってこう!」というのは自分から半径5M程度の限られた人々で判断した結果でしかないんですね。
会社の全従業員、全組織と関わりを持ったうえで、全体を語れている人なんていないんですよ。
直属の上司や先輩=会社になるので、上司や先輩に不安、不信感を抱くというのは会社へ不安、不信感を抱くのとイコールになるんです。
組織の実態は「小宇宙の長であるマネージャー」が作っていくものです。
なので、マネージャーが「人材の自己効力感・組織効力感」を高められる組織づくりをできるかが大事になってきます。
でも、これが無理ゲーなんですよー!っていうのが2本目の動画で説明されてますので、組織作りに苦戦されているミドルマネージャーの方は見てみてください。分かるー!ってなるかもです。(本記事では割愛します。)
人材育成/マネジメント手法における「勘とセンスと自社流」の横行
育成やマネジメントは関与人口が多いにも関わらず、体系的に説明できる人って少ないですよね。
経験則や勘みたいなところで語る人が多い印象です。
それによって、「自己流の育成理論」や「生存者バイアス」が横行し、負のマネジメントが再生産されてしまいます。
マネジメント層が体系的な理解をする必要があるってことですね。
おわりに
いかがだったでしょうか。
本記事では、概要的なところしか触れていないので、より詳細に知りたい人はぜひ動画を視聴してみてください。とても勉強になります。
なんとなく知っている現象や構造でも言語化してみると見えてくるものがあるかもしれないと思い、記事にしてみました。どなたかの参考になれば、幸いです。