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b.tokyo2019において語られた、ブロックチェーンの可能性と課題(前編)

Last updated at Posted at 2019-11-12

はじめに

仮想通貨の基盤技術として用いられてきたブロックチェーン(blockchain)は、データの改ざんを難しくし、価値を再定義する画期的な技術として注目を集めている。近年では仮想通貨というユースケースを超え、幅広い活用方法が模索され、実際にブロックチェーンを用いたシステムの商用化事例も登場している。

ブロックチェーンを活用した最前線の取り組みにはどのようなものがあるのか、日本最大級のカンファレンスb.tokyoの内容をもとに考察したい。

※なお、本記事においては各スピーカーの講演内容および意図を正確に記載するため、「仮想通貨」「暗号通貨」「暗号資産」といった各スピーカーの表現の差異に関してはそのまま反映している。

b.tokyoの概要

b.tokyoは2019年10月2日~3日の2日にわたり目黒のホテル雅叙園東京にて開催された、日本最大級のブロックチェーン・カンファレンスである。

公式URL:https://navenue.jp/btokyo2019/

主催するのは世界最大のブロックチェーン・仮想通貨メディア「CoinDesk」の日本版、「CoinDesk Japan」を運営するN.Avenueであり、今回が初開催である。参加者は2日間でのべ約2,000人とのことである。

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会場は3つのブースに分けられ各ブースでのスピーカーによる講演が行われたほか、スポンサー企業による出展もあり、各社とも自社のプロダクトの展示を行っていた。

b.tokyoのテーマ

b.tokyoの公式サイトによれば、ブロックチェーンがどのようにビジネスに活用されるのか、また実用化に際しての課題について、以下のような観点からコンテンツ・スピーカーの選定を実施している。

  1. Technology-ブロックチェーン技術を支える暗号・分散化技術、第二レイヤーの最前線
  2. Startup-世界各国のブロックチェーンビジネスを動かす起業家の取り組み
  3. Fintech-決済から資産管理まで、新たなファイナンスの在り方
  4. Industry-各産業におけるケースと活用方法
  5. Government-各国のレギュレーションと健全なイノベーションの在り方
  6. Future-未来のビジョン

2日間にわたるセッションでは、これらのキーワードがどのように実用化につながっていくのかについて多くのスピーカーから語られていた。以下具体的に見ていきたい。

b.tokyo DAY1-2019/10/2(水)

インターネット「情報革命」から、ブロックチェーン「価値革命」の新時代へ

  • オープニングトークでは、日本初の大学間ネットワークJUNET、WIDEプロジェクトを設立し「インターネットの父」として知られる村井純教授による基調講演が行われた。
  • 現在、生活におけるあらゆる行動がインターネットを通し、サイバー空間で行われるようになっている。そのインターネットの上で動くFinanceを再定義している点に暗号通貨の意義があると述べた。

フィンテック4.0-バリュー・プロポジションを再考する

  • シンガポール金融管理局 フィンテック最高責任者のソプネンドゥ・モハンティ氏らによる、金融領域におけるブロックチェーンの活用例の議論がなされた。
  • 議論の舞台となったのは主に東南アジアであり、例えばシンガポールにおいては、実証実験ですでに独自ブロックチェーン上でシンガポールドルをトークン化することに成功している。現在は為替流通に取り組むべく、カナダドルとの相互運用を開始しているとのことである。
  • カンボジアでは、中央銀行(カンボジア国立銀行)がブロックチェーンを活用した決済システムを開発中である。
  • ソプネンドゥ・モハンティ氏によれば、金融の文脈でブロックチェーンの影響を考える場合、国際送金/銀行間送金がシームレスになることに加え、デッドキャピタルに価値を再獲得させ、金融市場を活性化することも期待できるとのことである。

なぜビジネスにブロックチェーンは必要なのか?―「アフターインターネット」の稼ぎ方

  • 仮想通貨取引量日本一の取引所bitFlyerの共同創業者加納裕三氏、Gunosyの創業者であり現LayerXのCEO・福島良典氏、楽天執行役員久田直次郎氏によるマネタイズ手法が議論された。
  • ブロックチェーンはインターネット以来の革命である。情報革命(Internet)においては、だれでも簡単に情報の発信が可能で、データの即時取得が可能だった一方、複製も簡単だった。しかし価値のインターネット(Blockchain)においては、価値の複製が不可能であり、だれでも簡単にその価値の「送付」を行うことができるようになる。
  • 中国ではブロックチェーンはすでに商用化されたプロダクトが複数登場している。ECサイトAlibabaのフィンテック関連会社Ant Financialが提供する決済アプリAlipay内の国際送金システムや、保険サービス、購入した商品のトラッキングなどにすでに活用され、従来比でコストが低下したことが報告されている。
  • 今後は、異なるブロックチェーン同士でアセットの価値を接続する「インターオペラビリティ(相互運用性)」を実現できるかが重要。

リブラ(Libra)通貨とFacebook「カリブラ(Calibra)」ウォレット

  • LibraおよびウォレットCalibraについて、head of business developmentのキャサリンポーター氏による講演。
  • 世界には17億人のUnbanked(銀行口座を持たない)人々がおり、彼らに対してFinancial Inclusion(金融包摂)をモバイルファーストでブロックチェーンを用いて解決するのがLibraのミッションである。
  • Libraを運営するのはLibra Associationという団体であり、Facebookはこの団体の一企業にすぎない。Libraのローンチまでにさらに参加企業を増やしたいと考えているとして、日本の企業へも加入を促した。
  • Libraは他ブロックチェーンと異なり、グローバル・ステーブル・セキュアといった特徴があり、一般的に活用されるための技術的特性を備えている。

ステート・オブ・デジタルセキュリティーズ―Simplexが考える「証券のデジタル化」と「金融×IT」の未来

  • DMM Bitcoin、LINE子会社LVCが提供するBITMAXなど、国内の仮想通貨取引システムの開発を担ってきたシンプレクス株式会社の三浦氏によるSTOの現状についての解説セッション。
  • ICOのブームはすでに過ぎ去り、IEO(取引所によるフィルタリングを経由した資金調達)とSTO(従来の金融商品と同様の規制を遵守したトークンによる資金調達)が現在のトレンドであり、STOのシステム開発の案件も多い。
  • STOは証券をブロックチェーンでトークン化した新しい資金調達手法である。発行体にとっては低コスト、グローバルに資金調達が可能であり、投資家にとってもこれまでにない魅力的な商品の登場が期待される。昨年は世界中で83のプロジェクトが開始され、276万ドルが募集された。
  • STOは証券と通貨が同時にブロックチェーンにのることでプログラム可能になる点に意義があり、様々な契約が自動的に行われるようになると期待されている。
  • 特に私募のプライマリマーケットは投資家を限定できるため厳格な規制を回避することができるため、比較的STOで代替が容易であると考えられる。シンプレクス社ではSTO関連システムとして、資金調達・配当開始などのライフサイクルマネジメントを備えたプライマリマーケット向けプロダクトを開発。海外を中心に、実稼働を目指し複数案件が進行中である。
  • 日本でも2020年春に資金決済法、金融商品取引法が改正されることから、STOに取り組みたいと考える企業は多いものと考えられる。

Day2の議論内容に関しては、次記事「b.tokyo2019において語られた、ブロックチェーンの可能性と課題(後編)」にて公開する。

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