スクラムとSECIモデル
SECIモデル
ナレッジマネジメントの基礎理論。
「知識」がどのように発生して成長するかを、「暗黙知」と「形式知」の2つの知識形態を螺旋として捉えたもの。
暗黙知と形式知とは
- 暗黙知
- 言葉や文章で表現するのが難しく、主観的で、身体的な「経験知」。
- 例えると、自転車の乗り方。どうやってバランスをとるのかは人それぞれの感覚で言語化しづらく、経験として得られるもの。
- 形式知
- 暗黙知と対極
- 言語化、形式化されており、言葉や文章で表現できる。
- 客観的でかつ理性的な「言語知」。
- 例えると、マニュアルとか理論など。
暗黙知で得た経験を言語化し、文書化した時、形式知になる。
自転車の乗り方で言うと、サドルに跨って勢いよく地面を蹴り、勢いを殺さずにペダルを漕ぎ続ける。
(こんな感じで文章化する?)
SECIモデルはこの2つの「知」を相互に繰り返し、「新しい知」に変換していく運動を知識創造活動としている。
この知識創造活動を4つの運動に分類する。
- 共同化
- 表出化
- 内面化
- 連結化
共同化(暗黙知→暗黙知)
個人が組織の中で暗黙知を共有する活動。
個人が所有する暗黙知を他人と共同作業していく中で伝え、組織の暗黙知とする。
組織で1つの体験を通して、暗黙知を共有・共感していく活動。
- 活動例)
プロの野球選手が、キャッチボールの仕方を小学生にレクチャーする。
レクチャーする際に、プロ選手がキャッチボールをする様子を見せて、小学生が同じように動作を真似する。
表出化(暗黙知→形式知)
共同化の中で得た暗黙知を文書化することで形式知に変換し、伝達可能な形式にする活動。
組織の個々人が得た直感、経験を言語化し、文章や図の形に創造する。
- 活動例)
レクチャーを受けた小学生が、自分なりのボールの投げ方をレポートにまとめる。
連結化(形式知→形式知)
形式知どうしを組み合わせたり、編集することで新しい体系化した知識を生み出す活動。
- 活動例)
レポートから、ボールのリリースポイント、目線、体の使い方など普遍的なキャッチボールのやり方を本にする。
内面化(形式知→暗黙知)
新たに生み出された形式知を個々人の暗黙知として取り込む活動。
行動で形式知を具現化し、実践することで個人の身体で理解・学習する。
本という形式知を読み、本に書いてある通りに実行し、体験を通して体で理解する活動。
- 活動例)
別の小学生が本を読んで、書いてある通りにキャッチボールをする。
スクラムとSECIモデルの関連性
アジャイル開発は場とコミュニケーションを重視するので、ペアプロやモブプロなど、共同で作業することが多い。
上級者から初級者への暗黙知の伝達している。しかも、様々な暗黙知を伝達する。(共同化)
スプリントレビュー
- デモ
開発チームは動く製品が成長していることを確認、POはデモを見て現物から製品の出来栄えに対する感覚を得られる。(表出化)
製品をリリース→ユーザーが使用→フィードバックを得る(内面化) - ふりかえり
自分たちの仕事のやり方を改善し、新しいやり方をチームが獲得する(表出化→連結化→内面化)
スクラムはスプリントによって獲得・創造した知識を「動くソフトウェア製品の成長」と「スクラムチームの成長」という2つの形で蓄積していく活動。