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Annual Report of the Ubuntu Weekly Recipe 2014

Last updated at Posted at 2014-12-25

2014年最後のUbuntu Weekly Recipeは12月13日に行われたオフラインミーティングのレポートとなりました。ただ、このレポートが本当に年内に公開できるかどうかは不透明だったため1、いざというときのために、2014年に掲載された記事のまとめみたいなものを用意していたのです。

幸いなことにレポートは無事掲載されましたし、バックアップ用のこの記事も2015年になってからやるにはあまりふさわしくない内容なので2、こちらに掲載することにしました。

2014年のUbuntu

2014年のUbuntuも、2年振りのLTSリリース、最初のリリースである4.10から10周年、サーバー・仮想化向けプロジェクトいろいろ立ち上げ、 いつまでたっても出ない Ubuntu Touchデバイスと話題満載の年でした。

2014年のUbuntu Weekly Recipeは、1月1日に新春特別企画としていくやさんが執筆した「第305回 2014年新春特別企画 Linuxデスクトップの2014年」から始まりました。今年を振り返るにもちょうど良い記事ですので、今一度読み直してみるのもいいかもしれません。

新年2回目の第306回は小知和さんに2013年末に行ったRecipe&Topics 300回記念のイベントのレポートを書いていただきました。2014年は第305回から第355回までの51回の掲載だったので、順当にいけば来年には400回に到達できそうです。その小知和さんには第355回で先日のイベントのレポートも書いていただいています。

RecipeっぽいRecipe

Ubuntu Weekly Recipe」は「 Ubuntuの強力なデスクトップ機能を活用するための、いろいろなレシピをお届けします。 」とあるように、本来はUbuntuの(主としてデスクトップの)ソフトウェアやカスタマイズ方法を紹介する連載でした。今ではデスクトップやサーバーに関係なくUbuntu特有の機能を突っ込んで紹介したり、リリースごとの変更点のまとめ、イベントレポートなど執筆陣が思いついたものを自由に掲載していますが、今でもこのタイプの紹介記事はそれなりに存在します。

ざっと見ていくと第316回で坂本さんがスクリーンレコーダー「SimpleScreenRecorder」を、第336回第343回では水野さんが画像ビューアー「Geeqie」や天体写真の加工ノウハウを、第350回第353回では自分がEPUBリーダー「Beru」やUbuntu標準のファイアウォールソフトウェア「ufw/gufw」を紹介しました。さらに長南さんは第309回でUnityのカスタマイズ方法として透明化を紹介していますし、第340回では自分がFirefoxのFlashを変更する方法を紹介しています。

ちょっとした応用編として、第328回ではいろんな差分ツールを使い、第332回ではいくつかのソフトウェアを組み合わせてWebフォントを作る記事になりました。水野さんが書かれたRoute 53でダイナミックDNSを運用する第334回もスクリプトを作うタイプの記事でしたね。作ってみた関係だと第351回は、GoとQMLを組み合わせてGUIアプリを作る方法を紹介しました。この手の記事はコードがちゃんと動くかだけでなく、「書き方が正しいかどうか」も調べる必要があるため、書く方としてはなかなか精神が削られる大変な記事だったりします。そして大抵の場合、どんなに調べてもどこかにミスが残っていたりします。

いくやさんが執筆した第335回第338回はMATEデスクトップ環境をビルドするというとてもおもしろい記事になっています。そういえば第342回ではいくやさんに同じくデスクトップ環境であるCinnamonを紹介していただきました。

こういうRecipeは書く方としても新たな発見があるため書いていて楽しいし、もっと書きたいとも思っています。ただ、執筆陣が普段Ubuntuを使っているといっても、常に新しいソフトウェアを探し、試しているというわけではありません。それなりに時間が経ってくると、(自分にとって)既知のソフトウェアの組み合わせでなんとかなる方が大半なので、そうそう新しいソフトウェアを試すわけにはいかないのです。

といっても記事のネタ自体はけっこう思いつきます。「こういうのをUbuntuで実現するソフトウェアはないかな」「これUbuntuで動くかな」「このネタとこのネタ組み合わせると便利そう」などなど。問題はそのネタが本当に記事として使えるかどうか調査したり、実際に動かしてみたりといった、記事を書き始める前の下調べがけっこう大変だということです。実際に調べた結果、記事には使えないと判断することもかなりあります。

執筆陣も普通の会社員なので、Ubuntu関係の作業に使えるのはほぼ土日ぐらいです。その土日もイベントなどが入ることもあるため、時間にはかなり限りがあります。ネタの卵は増えていくものの、その卵を孵化するための時間がないというのが実情です。

よって普段書いている人以外 にも 書いてもらうのが一番いいのかなと自分は思っています。「ネタ持ってそう」って人にオフラインで会った時には、ちょいちょい声がけしてはいるのですが、忙しいのは他の人も一緒なのでなかなか難しいですね。そもそも自分が人見知りなので、気軽に声をかけられる人が限られているという問題も。

そんな理由もあって、2015年のこの系統の記事はいろいろ模索しながら書いていこうと自分は考えています。特に過去の記事の焼き直しみたいなのは少しずつ増やしていきたいのですけれども、だれか書いてくれないかな。

リリースごとの紹介記事

Ubuntuは半年毎にリリースしているので、半年毎に「 今回のUbuntu! 」みたいな記事が書けるわけです。ただ最近はおとなしめのリリースが続いているため、ちゃんと追っかけておかないと記事にできるだけの変更点を把握できなかったりもします。

そんな中、今年は2年振りのLTSリリースということもあって、12.04からの移行者向けの記事や水野さんによるVPSに新しいLTSをインストールする方法といったLTSならではの記事を提供できました。14.04リリース直後には坂本さんに14.04のリリースノートの読み方を書いていただいています。Ubuntuのリリースノートは新機能紹介はそこそこにリリース時に発覚している不具合一覧を重点的に掲載している本当の「リリース時の注意点」になっていますので、LTSかどうかに関係なく毎回確認したいところです。

5月にはリリースパーティを開くこともできました。LTSということでクラウド系の事業者の皆様に集まっていただき、おかげさまでずいぶんと盛り上がったイベントとなりました。当時の様子は寺内さんに第325回でまとめていただいています。

リリース前後にいくやさんが書いている日本語入力やUbuntu GNOMEの変更点などの記事は毎回ランキングに残る恒例の人気記事になっています。今年も第319回第320回第347回と書いていただきましたし、新しいフレーバーとして提供されるようになったUbuntu MATEについても第348回で紹介していただきました。

ちなみにUnity 7を紹介する第349回はこれらの記事の人気にあやかろうとして自分が書いたものです。書いてみてわかったのですが、この手の記事って「開発コミュニティの空気を読む能力」いわゆる「コミュ力」がかなり必要でした。特にUbuntuの場合、開発コミュニティの情報がML・IRC・Launchpad・Wikiからハングアウト・SNS・GitHubへも分散している傾向があるので、今後もリリースごとに書けるかどうかはちょっと自信ないです。

仮想化関連のRecipe

仮想化はデスクトップでもサーバーでもとても息の長いトレンドとなっています。特に今年はコンテナー型の仮想化としてLXCやDockerといった単語が世間を賑わせました。Ubuntuには商用OSと異なりライセンス数という概念がないため、1台の物理マシン上に複数のインスタンスを立ち上げるタイプの仮想化ととても相性が良いOSでもあります。

そのためRecipeでも仮想化関連の記事が非常に多く掲載されるようになっています。特に今年は4分の1が仮想化に関する記事でした。

デスクトップ上の仮想化といえばまず出てくるのがVirtualBoxです。Ubuntu上のVirtualBoxといえばまず出てくるのがいくやさんです。というわけで第313回第352回はいくやさんによるVirtualBoxの再入門記事でした。さらに第354回ではVMWareについて、第330回ではリモートで起動したマシンのデスクトップを利用する方法も紹介してくれています。第317回では坂本さんがKVMを使った開発中のUbuntuを手軽に動作確認できるTestDriveを紹介していましたし、第344回で紹介したuvtoolを使えばサーバー上でもお手軽にKVMインスタンスを立ち上げることができます。

今年の2月にはLinuxのコンテナー技術を利用したツールであるLXCの1.0がリリースされました。そこで第318回では坂本さんがLXC上でHHVMを試す方法を、第329回では自分がVPS上のLXCの上でOpenVPNを使う方法を執筆しています。

仮想環境と切り離せない関係を持っているのがOpenStackなどのクラウド環境です。UbuntuでもはやくからOpenStackと連携してきましたし、Red Hatも専用のディストリビューションや導入ツールを用意するなど、Linuxサーバーにおいても重要な位置づけになっています。第341回ではUbuntuで簡単にOpenStackを導入するソフトウェアを紹介しました。さらに第345回第346回では大田さんがOpenNebulaというクラウド構築・管理ツールを紹介してくれました。

さらに仮想マシンが増えてくることで重要になってくるのがプロビジョニングやデプロイなどを自動化するツールです。ChefやAnsible、Puppetといったメジャーどころもさることながら、DockerならDockerfileで構築を行えるようになっているなど、多種多様なツールが揃っています。Ubuntuの場合はJujuというサービスオーケストレーションツールを開発していますが、サービスのデプロイをウェブブラウザから行えるJuju GUIを第307回で紹介しました。

変り種としては第310回のUbuntu Emulatorも仮想化技術を使っています。

2015年も仮想化、特にコンテナーについてはトレンドとなることでしょう。自分としても年末に発表されたSnappy Ubuntu CoreやデスクトップでLXCを便利に使う方法などを紹介できればいいなーと思っています。

買ってみた・インストールしてみた

何かデバイスを買ってきてUbuntuをインストールしてみたり、Ubuntu上で使ってみる系の記事も比較的人気です。世の中のデバイスは大抵WindowsやMacには対応しているもののLinuxについては記載がないため、本当にUbuntuで使えるのかということを購入前に確認できることがうれしいという話を聞きます。

いくやさんは第308回でIntel Core i7 4770Sが載ったPCに、第324回で昔ながらのネットブックに、第326回でCeleron J1900が載った省エネPCにUbuntuやXubuntuをインストールした顛末を執筆してくれました。第323回では吉田さんが超小型格安PCとして人気のECS LIVAにUbuntuをインストールした例を紹介してくれました。

また突如日本での発売を開始したChromecastについて、かずはまさんが第339回でストリーミングを試した例やデバイスがなくても疑似体験できる例を紹介してくれています。

来年あたりにはきっと誰かがChromebookやChromebox、その他新しいPCやARMマシンなどにUbuntuをインストールした例を紹介してくれることでしょう。きっと紹介してくれることでしょう。

パッケージ関連

UbuntuといえばDebian由来の豊富で強固なパッケージ管理システムも特徴の1つです。今年はそんなパッケージに関するRecipeもいくつか掲載しました。

第312回第331回ではパッケージを更新する場合やパッケージに関する情報を調べたい時に役に立つであろうノウハウをいろいろとまとめて紹介しましたし、第314回では坂本さんがPPAを使う上で便利なツールについて、第315回では黒瀬さんがAPT用のキャッシュプロキシについて執筆してくれました。第327回はaptパッケージに新規に追加された「apt」コマンドを紹介しています。

実際にパッケージを作る人向けには、第311回でパッケージテストを自動化する仕組みを、第333回ではカーネルパッケージを実際にビルドしてみる手順を解説しました。

最近のUbuntuはTouch用にClickパッケージ、サーバー用にSnappyなど従来のdebパッケージを特定の用途・目的に特化させたパッケージフォーマットを提案しています。2015年のRecipeでは、このあたりの新しいパッケージについても紹介できればと思っています。

数字で見るRecipe

今年掲載された51回のうちUbuntu Japanese Teamの投稿が44回、ゲスト投稿が7回でした。マンネリ感を払拭するためには月1ぐらいはゲストになるといいなぁと自分は思っています。

自分の担当回数は去年よりちょっとだけ増えて、今年は数としては一番になりました。まぁ、Software Designで連載しているMonthly Reportも含めるとダントツでいくやさんが多いのですが。

はてなブックマークの総数は755件でした。2013年の1015件、2012年の1001件より3割近く減っています。傾向を見る限り全体的にまんべんなく減っているようです。ソーシャルブックマークを使う人が減ってきたということならともかく、そうでないとすれば打ち切りにならないようがんばらないといけないかもしれませんね。

Twitterの共有総数は1797回、こちらも2013年の1886回、2012年の1922回に比べて減っています。やはり何がしかのテコ入れが必要なのでしょうか。というか自分の担当回数の増加と上記の減少が同期しているようなのですが……。

個別の記事のウケのよさを見るために、12月24日時点での状況を軽くまとめてランキングにしてみました3

順位 はてなブックマーク数
1 第319回(79)
Ubuntu 14.04と日本語入力
2 第327回(49)
aptコマンドを使ってみよう
3 第351回(35)
GoとQMLとGUIアプリ
4 第305回(32)
2014年新春特別企画 Linuxデスクトップの2014年
5 第313回(28)
UbuntuとVirtualBox再入門
6 第328回(27)
「違いがわかる人」になろう
7 第337回(26)
12.04から14.04へアップグレードする際に気をつけるべきこと
8 第324回(24)
懐かしのネットブックにXubuntu 14.04 LTSをインストールする
9 第318回(23)
HackとPHPの実行環境HHVMをLXCで試す
10 第348回(21)
新フレーバー,Ubuntu MATE入門
10 第341回(21)
OpenStack環境を30分で構築する

今年一番ブックマーク数が多かったのは第319回のいくやさんによる「Ubuntu 14.04と日本語入力」です。ブックマーク数79件は、2位の49件に比べて30件の差をつけており、3位の35件に対してダブルスコア以上の値でした。なお昨年の「Ubuntu 13.10と日本語入力」も全体の2位で74件でしたので、この記事は毎回トップクラスの人気になっているようです。ちなみに記事1つあたりの平均ブックマーク数の一位もいくやさんで280ブックマーク÷15記事の18.67でした。

順位 Twitter共有数
1 第319回(99)
Ubuntu 14.04と日本語入力
2 第327回(81)
aptコマンドを使ってみよう
3 第305回(75)
2014年新春特別企画 Linuxデスクトップの2014年
4 第351回(74)
GoとQMLとGUIアプリ
5 第310回(68)
Ubuntu Touch用「Ubuntu Emulator」を使う
6 第337回(60)
12.04から14.04へアップグレードする際に気をつけるべきこと
7 第340回(57)
Firefoxで最新バージョンのFlashを使用するには
8 第324回(51)
懐かしのネットブックにXubuntu 14.04 LTSをインストールする
9 第345回(48)
UbuntuとOpenNebulaでクラウド環境を構築してみよう(前編)
10 第321回(45)
Ubuntu 14.04 LTSのリリースノートの紹介

Twitter共有数一位もいくやさんの第319回です。Top 10の顔ぶれはブックマーク数とほとんど変わらないものの、Twitterの場合はUbuntu EmulatorやAdobe Flash、OpenNebulaの話などがランクインしています。1記事あたりのトップは吉田さんが43回(第323回のLIVA)、かずはまさんが42回(第339回のChromecast)となっています。なおこの共有数、投稿時の設定(?)によって数字がだいぶ変わることがあるので、ブックマーク数に比べて誤差は大きいと思った方が良さそうです。

しかしこうやってみると、もう少し「いくや人気」におんぶにだっこな状況をなんとかしないといけませんね。自分はこの手の「他人の評価」がとても気になるタイプなので、来年は1位を奪えるよう大衆受けする、おおっと、多くの人に役に立つ と読者が錯覚するようなタイトルの ネタを模索していきたいところです。

今年のRecipe一覧

まとめ

今年のUbuntu Weekly Recipeはいかがでしたでしょうか。なんか最後の方の「まとめ」は内輪向けの忘年会ネタの様相をていしてきましたが、読んだ記事・読んでない記事の振り返りとして参考になれば幸いです。

  1. なにせイベントを開催してから数日でレポートを提出してもらうという強行軍でしたから。

  2. 「2014年を軽く振り返りつつ2015年を展望する」ような体裁なら2015年になってから掲載しても良かったと思います。ただ、これを書いていた時は展望するよりも2014年をがっつり見直し、Recipeのインデックスとなる内容にしたかったのです。

  3. この手のランキングは話題がタイムリーかどうかやタイトルがキャッチーかどうかといったことはもちろんのこと、一週間前の記事が良記事だったどうかでも変わってくるため、「内容の良さ」とはほとんど関係がないことに注意が必要です。どんなネタやタイトルに食いついてくれるのかなと考える際のとっかかり程度に思ってもらえれば。

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