はじめに
Amazon Lookout for Equipmentに関してまとめた記事になります。
2022年7月時点ではドキュメントが少ないので、実際に検証した内容に関して記載します。
製造業における課題
製造業における課題は以下の通り、様々なものが存在します。
- 機械が完全に壊れると修理費用が高い
- 機械が使えなくなった際のダウンタイム
- サプライチェーンの分断
- メンテナンス作業の属人化
- システムのブラックボックス化
上記以外にもその他、沢山存在しますが、最近では特に1と2がクリティカルな課題とお聞きします。
機械が故障すると、ダウンタイムが発生し、必要とする方々へ必要とする分の供給ができなくなるなど、顧客満足度に影響する課題になりえます。
また、機械が完全に壊れてからの修理費費用と壊れる前のメンテナンス費用では雲泥の差があるとされ、修理期間にも影響を及ぼすそうです。
こういった課題を解決としてのAI活用としては、予知保全/予兆保全があげられます。
予知保全(Predictive Maintenance)は、機械の故障の兆候をとらえて故障前にメンテナンスを行うことです。故障による停止を未然に防ぐことで、長期間に渡る設備全体のダウンを防ぎ、生産性を高めることができます。
引用元:https://fa-dic.mitsubishielectric.co.jp/faq/show/37804
パブリッククラウドサービスであるAWSでは、機器に特化した予兆保全モデルを構築できるAmazon Lookout for Equipmentがリリースされております。
サービス概要
Amazon Lookout for Equipmentとは、IoTセンサーデータを分析し、機器の以上な動作を検出できるSaaSです。
独自の ML モデルを使用して、受信センサーデータをリアルタイムで分析し、機械障害につながる可能性のある早期警告の兆候を正確に特定します。
引用元:https://aws.amazon.com/jp/lookout-for-equipment/
データに基き機器用の機械学習モデルを自動で作成してくれるので、MLの知識がなくてもモデル構築を行うことができます。
また、検出された異常に関して人によるフィードバックを組み込むことで、運用上の仕様傾向を学習し、モデルのパフォーマンスとアラートの精度を継続的に向上させることが可能です。
Amazon Lookout for Equipmentは残念ながら2022年7月段階では東京リージョンで使用することができません。
そのため、データはEquipmentを構築したリージョンに移さないといけません。
また、仕様上最低データ数は6ヶ月以上となっておりますので、注意が必要です。
検証内容
弊社で検証した内容は以下になります。
-
使用データ(風力発電データを使用)
https://github.com/aws-samples/lookout-for-equipment-demo/tree/main/getting_started/dataset
使用イメージ
本検証では、以下のサービスを使用し実行いたしました。
- Amazon S3(データ格納用)
- Amazon Lookout for Equipment(API)
- Amazon SageMaker(モデルの実行)
必要データセット
前提として必要なデータセットは要件によって変わるため定義することが難しいと思います。
以下は今回使用したデータ項目です。
- 時刻データ
- センサー値(種類が多い方が望ましい)
- ラベルデータ(メンテナンスなど異常が発生した時系列データ)
詳細はリンクのGitのDatasetから内容のご確認ください。
https://github.com/aws-samples/lookout-for-equipment-demo/tree/main/getting_started/dataset
アウトプット
Amazon Lookout for Equipment側のコンソールでは以下のようなアウトプットが確認できます。
画像上部分のピンク(予測された異常期間)と青(実際のメンテナンス期間)の図では、予測値を確認することができます。
画像下部分の赤い棒グラフでは、予測された異常期間に対して関連度の予測割合を表しています。
モデル精度向上のアプローチ
今回のデータセットでは決して高い精度が出ているわけではありません。
精度向上方法に関しては以下の公式ドキュメントで紹介されております。
https://docs.aws.amazon.com/lookout-for-equipment/latest/ug/improve-your-results.html
分析時間
今回の検証での分析時間は以下の通りです。
29分(データ量:1.3GB、約10ヶ月分のデータ)
コスト(2022年7月時点)
Amazon Lookout for Equipmentは使った分だけ費用が発生する従量課金になっております。
以下3つの項目で料金が発生します。
- 取り込まれたデータ量
- 取り込まれたデータ1GB ごとに請求が発生します
- モデルトレーニング時間
- 最低1時間の経過時間に対して課金され、その後に秒単位での料金計算になります
- トレーニングを完了するためにベースラインの 9 倍のコンピューティングリソースをプロビジョニングできるため、9倍のリソースを使用した場合はベースの金額に9倍の料金が発生します
- 推論時間
- 作成したモデルを使用し推論を行う時間に対しても料金が発生し、推論料金は1時間単位(切り上げ)での請求になります
終わりに
この記事ではAmazon Lookout for Equipmentを使用した予兆保全検証を行いました。
UI的には非常に使いやすい印象ではありますが、まだまだドキュメントが少ないことや東京リージョンに無いことが歯がゆいところではあります。
Amazon Lookout for Equipment以外でも予兆保全を実現するサービスはありそうなので、触りながらアウトプットしていきたいと思います。