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Systemi(システムアイ)Advent Calendar 2022

Day 20

PMBOKガイドの紹介と活用の仕方

Last updated at Posted at 2022-12-19

自己紹介

私は元々ソフト開発のエンジニアですが、ここ15年くらいはプロジェクトマネージャー職に携わってきています。プロジェクトマネジメントを実践するにあたってはPMBOKガイドの存在は大きく、私もよく参照していました。今回はPMBOKガイドの活用の仕方について簡単に書こうと思います。ちなみにPMP(Project Management Professional)は2015年に取得しました。

PMBOKガイドとは

PMBOKは、Project Management Body of Knowledge の頭文字をつなぎ合わせたもので、プロジェクトマネジメントに関する考え方や手法を体系立ててまとめたものです。
PMBOKガイドは、1987年にアメリカの非営利団体PMI(Project Management Institute:プロジェクトマネジメント協会)によって制定されましたが、現場のプロジェクトマネージャからのアドバイスや成功事例などを基に、数年に1度のペースで改版され、都度、新しい流れに順応するような対応をとってきています。 現在の最新版は2021年に発行された第7版 です。私がPMPを取得するために一生懸命勉強したのが第5版でしたから、それから2回改版されたことになります。

PMBOKガイドの簡単な紹介

第6版までの構成
第6版までは大まかに言えば、プロジェクトマネジメントをするために必要な知識を、「5つのプロセス群」「10の知識エリア」 として体系立ててまとめていました。「5つのプロセス群」 とは、プロジェクトの立ち上げから終結までをフェーズで分けて、5つのプロセス群として定義したもの。「10の知識エリア」 とは、プロジェクトマネジメントを実施する際に求められる知識を10の分野に分割したもので、中には先述の5つのプロセス群に組み込まれて、49のプロセスが定義されていました。これらをまとめると下図のようになります。
プロジェクトマネジメント・プロセス群と知識エリアの対応表.png

また、PMBOK第6版では、上記、49のプロセスで利用するインプット、ツールと技法、アウトプット も含まれていました。

実際のPMBOKガイドの中では、これらについて非常に細かく説明されていますが、よく言われることは、これを読むと知識としてはある程度理解できるけど、それを具体的なプロジェクトに当てはめて考えるのが難しい、ということです。また、第6版まではベースとして、ウォーターフォール型のプロジェクトを念頭に置いて書かれているため、近年多くなってきたアジャイル型のプロジェクトに適用するにはかなり違和感がある、ということも言われていました。

そういった背景を踏まえて、第7版ではアジャイルの考え方ベースとするように構成がガラッと変わってページ数も半分以下になったという感じです。第6版までは、現場の意見を吸い上げて、いろいろな角度からその場面場面の対処法みたいなものを積み重ねてきたのがPMBOKガイドに盛り込まれてきたのだと思うのですが、それをやり続けると膨れ上がるばかりで対応が出来なくなってきたというのが、背景にあるのだろうと思います。そこで、これから記載するように、第7版では具体的なHow toの内容ではなく、原理・原則といったような内容にまとめることで、対応しようと考えられたのだろうと思います。

第7版での構成
では、現在の最新版であるPMBOK第7版ではどのように変わったのか、について記載します。

上述した 「5つのプロセス群」が廃止 され、「12の原理・原則」へと変更 になりました。この12の原理・原則というのは、プロジェクトを推進するための原則的な指針という意味合いです。この内容はかなり一般的な内容の記載となっているため、実際のプロジェクトに適用するには、具体的な調整が必要となります。

また、「10の知識エリア」が廃止 され、「8つのパフォーマンス領域」へと変更 になりました。この8つのパフォーマンス領域は、プロジェクトの成果を効果的に提供するために不可欠な関連する活動のこと。これらは具体的なHow toではなく、それらの領域がプロジェクトにどのような影響を与えるのかが記載されたものです。

12の原理・原則.png
ここに記載されている内容は、原理・原則と言っている通り、具体的な内容ではなくこういう風に振る舞え的な内容です。この内容をプロジェクトにどのように適用するかは、都度考えていく必要があるような内容です。

8つのパフォーマンス領域.png
このパフォーマンス領域は、1つ1つのカテゴリがいくつもの章に分かれていますが、こちらも結局は、原理・原則の部分と同じように、どのような振る舞いをすればよいのか、といった視点で書かれています。しかしここのパートは、比較的具体的な記載が多いのでわかりやすいように感じます。

といったように、第6版と第7版では全く別物のような内容になっていますが、簡素化されすぎてしまって第6版までに存在していた、ツールと技法といった、どのようなツールを使って対応していけばよいのか、といった記載が第7版では全くなくなってしまっています。なので、第7版だけを読んでプロジェクトマネジメントがうまく実践できるかといえばノーだと思います。結局のところ、第7版の考え方はよいとしても、第6版の内容も参照し理解することが必要と思います。

PMBOKガイドを活用するには

PMBOKガイドを活用して、実際のプロジェクトに役立てようとする場合、個人的に最も重要だと思うことを3つ挙げてみました。

1. テーラリング
2. ステークホルダー・マネジメント
3. ツールと技法の参照

1. テーラリング

最も重要なことは、PMBOKの中でよく出てくるテーラリングというものに着目することだと私は思っています。このテーラリングという言葉は、一般的には使われないような言葉だと思いますが、テーラリングは第7版でもプロジェクトマネジメント知識体系ガイドに1つの大きな章として存在しています。上述した8つのパフォーマンス領域の説明の後に、かなりのページを割いて説明されています。その冒頭部分の記述を抜粋すると、下記のようなことです。

テーラリングとは、プロジェクトマネジメントのアプローチ、ガバナンス、プロセスが特定の環境および目前の>タスクにより適合するように、それらを慎重に適応させることである。
(PMBOKガイド第7版より抜粋)

ここもちょっとわかりにくい表現となっていますが、PMBOKガイドでは、記載されていることすべてをプロジェクトに適用しろとは言っておらず、そのプロジェクトの規模や特性などいろいろな要素を考慮して、どの部分をどのように適用していくか、をプロジェクトマネージャーが調整していく必要がある、ということです。

PMBOKガイドに記載されていることをすべて実践すれば、プロジェクトをより成功に導ける確率は高くなるとは思いますが、短期のプロジェクトや小規模プロジェクトでは、そんなことをしたら重くなるばかりで、逆に上手く進められないと思います。そこを適切に、調整していくという意味合いがテーラリングです。

しかしながら、このテーラリングは、経験による部分が大きいと思いますので、やはりプロジェクトマネジメントを上手く実践できるようになるには、場数を踏んで、自分で体験し経験を積み上げることが必要になると個人的には思います。

2. ステークホルダー・マネジメント

2つ目に重要なのは、10の知識エリアで考えると、第5版にて最後に10番目の知識エリアとして知識エリアに昇格してきたステークホルダー・マネジメントの領域だと思います。最新の第7版においても、12の原理・原則の中にも「ステークホルダー」は存在しますし、8つのパフォーマンス領域の中にも「ステークホルダー・パフォーマンス領域」が存在します。このステークホルダー・マネジメントはPMBOKの中でも、第4版まではコミュニケーション・マネジメントの中のプロセスとして存在していたものです。それが重要度が増したからだと思いますが、第5版からは10番目の知識エリアとして昇格し、4つのプロセスを持つようになりました。PMBOK上でも重要と判断されていますし、実際にプロジェクトに当てはめて考えると直接のお客様であったり関連する人たちすべてを適切にマネジメントすることは、プロジェクトを成功させるためには非常に重要なことだとつくづく思います。

3. ツールと技法の参照

3つ目に重要なのは、第7版では紙面から消えてしまったツールと技法を適宜参照することだと思います。いろいろなフェーズや知識エリアで各種のツールや技法が定義されています。ツールの中には別にPMBOKじゃなくても使うだろう、というツールもありますが、例えば、クリティカル・パス法なんかはスケジュール作成の際によく使いましたし、責任分担マトリックスなんかもプロジェクト開始時に作成して、責任の所在を明確化するために使いました。

PMBOK第6版では132種類のツールと技法が掲載されているようなので、そういったツールや技法を適宜必要に応じて参照し利用すること、というのもPMBOKを活用する上では重要かなと思っています。

最後に

何かと取っつきにくいと言われるPMBOKガイドですが、書いてあること自体はとても知識として必要なことばかりなのでプロジェクトマネジメントを実践しようとする人は一読することをお勧めします。ただ、上述の通りこれをどう実践に活かすのか、というのがなかなか難しい部分なので、まずは小規模なプロジェクトで実践してみるのがよいのではないかと思います。実際に読んでみると、記載されていることは、そうだよな、もっともだよな、ということが多いので、これらの知識を身に付けることはよいことだと思います。

また、PMPの試験に関しては、もはやウオッチしていないので全くわかりませんが、多分第7版だけを読んで試験に合格するということは難しく、あの分厚い第6版も読み込まないといけないのではないか?と思います。それを考えると、今、PMPの試験に挑戦する人はなかなか大変だなと思ってしまいました(笑)

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