はじめに
NECソリューションイノベータ株式会社で次世代インターフェース(xR)研究を行っている藤野です。
今回は、Notionの活用事例として Notion Web Clipper を社内コミュニケーションに活用した事例を紹介します。
本記事は以下の2部構成です。具体的な Notionデータベースやオートメーションの設定 について詳しく知りたい方は、次回の記事をご覧ください。
- 【本記事】社内コミュニケーション活性化を目的としたNotion Web Clipper活用の仮説検証
- 社内コミュニケーション活性化のためのNotionデータベースとオートメーション活用
目的と背景
研究部門の情報共有の課題
「研究成果を出すまでには時間がかかる。でも、その過程で得られる気づきや知見を共有できないだろうか?」
研究部門では、論文執筆や研究発表といった アウトプット(OUTPUT) の共有が推奨されています。しかし、価値のある成果を出すまでには相当な時間を要します。その間、各チームがどのような情報を収集し、どんな課題に取り組んでいるのかは、意外に見えづらい ものです。
また、従来の情報共有には以下の課題がありました。
- チャットツール(Teams)での共有は投稿場所に迷いがち
- 共有された記事がスレッドの流れの中で埋もれてしまう
- 情報が蓄積されにくく、後から検索しにくい
加えて、テレワーク環境では 社内コミュニケーション不足 も問題になっています。
2021年に実施されたテレワークに関する調査 によると、若手社員の約6割が「テレワークでのコミュニケーションがしにくい」と感じている という結果が出ています。
Notion Web Clipperの導入とその理由
これらの課題を解決するため、Notion Web Clipper を導入しました。
なぜNotion Web Clipperか?
「気軽に情報共有できる仕組み」を実現するため です。
X(旧Twitter)のリポストのように、ワンクリックで簡単に情報共有できる ようにしました。
Notion Web Clipperを使うことで、以下のような利点があります。
✅ ワンクリックで記事をデータベースに保存可能
✅ Notion AIによる自動タグ付けで検索しやすい
✅ カテゴリごとに整理され、後から参照しやすい
Notion Web Clipperの概要と機能
Notion Web Clipperは、ChromeやSafariなどのブラウザで利用できるアドオンです。
公式ページ
具体的なNotionデータベースの設定やオートメーションの詳細は、次回の記事で詳しく解説します。
実装
実際のNotionの画面は以下のようになっています。
投稿者の所属グループごとにフィルタリング
各グループごとに投稿を整理 し、グループごとの興味を可視化しました。また、気になるボタンも導入してコメントするほどではないが、気になる記事にはリアクションできるようにしました。
投稿記事一覧
日々の投稿が一覧で表示され、過去の共有記事も簡単に参照可能 です。
Notion AIによる自動タグ付け
記事の内容に基づき、AIが自動でタグを付与 することで、検索性が向上します。
投稿記事の分類チャート
投稿された記事の傾向を可視化 し、部門の関心がどこにあるのかを分析できます。
期待していた効果
導入により、以下の効果を期待していました。
- 研究チーム間の情報共有が活性化 し、相互理解が深まる
- 情報が蓄積され、後から検索・参照しやすくなる
- 共有を通じて、新たな研究やビジネスのアイデアが生まれる
実際の導入結果
Analytics
2024年11月中旬に 数グループへ試験導入 し、フィードバックを収集。その後、2月中旬に部署全体へ公開 しました。
- 公開直後に利用がピークとなり、その後は特定の5~6名が継続利用
- コメント数が少なく、活発な交流は生まれていない
→特定の1~2名がコメント欄で会話する程度 - コメントは自分用のメモに使われることが多い
→自分用メモに対して興味を示した人がコメントするという想定していた流れは少なからず存在している
期待していた効果と実際の結果
期待と実際の結果を比較してみる。
期待していた効果 | 達成度 | 実際の結果 |
---|---|---|
研究チーム間の情報共有が活性化 | ⭐⭐☆☆☆ (40%) | 投稿数は一定数あるが、コメントなどの交流は少ない |
情報が蓄積され、後から検索・参照しやすくなる | ⭐⭐⭐⭐☆ (80%) | Notion上にデータが整理され、検索性は向上。特定のユーザーは定着している。 |
共有を通じて、新たなアイデアの種が生まれる | ⭐☆☆☆☆ (20%) | コメント等で確認できる交流がまだ少ないため、具体的な新規アイデア創出は確認できていない |
Notion AIの要約や翻訳を活用して海外の記事も読むようになったという声やAIタグによって検索しやすくなったという声があり、情報の蓄積と検索性の向上に関しては一定の成果が得られた。
対して、情報共有を起点としたコミュニケーションの活性化という面では課題が残る。そのため、発展的な期待として挙げていた「情報共有を起点とした新たなアイディア」はまだ実現できていないと言える。
課題と解決策
1. アクティブユーザーの伸び悩み
課題
- アクティブユーザー数が 部門のトップページ利用者(20~30名)の2割程度 にとどまる
- 一部の人しか利用しておらず、広がりが生まれていない
解決策
- 人気記事ランキング機能を追加し、閲覧を促進
- 毎週のピックアップ記事をTeamsやSlackに自動投稿
2. 利用促進のためのプロモーションが不足
課題
- 部門全体への公開直後にセカンドピークがあったものの、継続利用者が増えていない
- プロモーションが不足し、存在を知らない人もいる
解決策
- 情報収集の時間を設けているチームには、その時間に活用してもらうように交渉する
- 上記の1.の解決策で提示した「Teamsにピックアップ記事を投稿」のような機能によって目に触れる機会を増やす
- ** Notion AIとの連携で得られる検索性の向上やデータの加工が容易になる点、について宣伝する**
3. 全体共有に対する心理的ハードル
課題
- 「全体へ共有するほどではない」と感じ、投稿をためらうユーザーがいる
- 個人用のデータベースには投稿しているが、全体への共有には抵抗のある人が一定数いる
- 現在活用してくれている方々は元々全体へ共有する習慣のあった人が多い
解決策
- チーム単位の小規模グループでの共有を推奨し、投稿習慣を醸成
- 「シェアしなくても、見るだけで価値がある」ことをアピール
まとめと今後の展望
Notion Web Clipperを活用した情報共有の仕組みは、「気軽なシェア」や「知識の蓄積」という点で一定の成果を上げました。
特に、記事がデータベース化され、検索性が向上したことは大きなメリットです。
一方で、コメントやディスカッションの活性化、新たなアイデア創出といった部分では、まだ十分な成果が得られていません。
また、アクティブユーザーの伸び悩みや、全体共有への心理的ハードルなどの課題も浮かび上がりました。解決策で示したものを次年度に実践してみたいと思います。
これらを通じて、「情報が自然と集まり、新たな価値が生まれる場」 を目指します。
今後も結果をレポートしようと思いますので、読んでいただけますと幸いです。
次回の記事では、Notionデータベースやオートメーションの具体的な設定方法 について解説しますので、ぜひご覧ください!