このPythonコードは、簡単なRISC-V仮想マシン(VM)を実装したものです。この仮想マシンは、メモリ、レジスタ、プログラムカウンタを持ち、いくつかの基本的なRISC-V命令(ADD, ADDI, BEQ, JAL, HALT)を実行できます。
riscv_vm.py
class RISCV_VM:
def __init__(self, memory_size=256):
self.registers = [0] * 32 # 32個の整数レジスタ
self.memory = [0] * memory_size # メモリ領域
self.pc = 0 # プログラムカウンタ
self.running = True
def load_program(self, program):
self.memory[:len(program)] = program
def fetch(self):
instr = self.memory[self.pc]
self.pc += 1
return instr
def decode_execute(self, instr):
opcode = instr & 0x7F # 7ビットのオペコード
rd = (instr >> 7) & 0x1F
rs1 = (instr >> 15) & 0x1F
rs2 = (instr >> 20) & 0x1F
imm = (instr >> 20) # 即値
if opcode == 0x33: # ADD命令 (rd = rs1 + rs2)
self.registers[rd] = self.registers[rs1] + self.registers[rs2]
elif opcode == 0x13: # ADDI命令 (rd = rs1 + imm)
self.registers[rd] = self.registers[rs1] + imm
elif opcode == 0x63: # BEQ命令 (if rs1 == rs2 then PC += imm)
if self.registers[rs1] == self.registers[rs2]:
self.pc += imm
elif opcode == 0x6F: # JAL命令 (jump and link)
self.registers[rd] = self.pc
self.pc += imm
elif opcode == 0x67: # HALT (仮の命令として設定)
self.running = False
else:
print(f"Unknown instruction: {instr}")
def run(self):
while self.running:
instr = self.fetch()
self.decode_execute(instr)
print(f"PC: {self.pc}, Registers: {self.registers}")
# サンプルプログラム (ADDI x1, x0, 5; ADDI x2, x0, 10; ADD x3, x1, x2; HALT)
program = [
(0x13 | (1 << 7) | (0 << 15) | (5 << 20)), # ADDI x1, x0, 5
(0x13 | (2 << 7) | (0 << 15) | (10 << 20)), # ADDI x2, x0, 10
(0x33 | (3 << 7) | (1 << 15) | (2 << 20)), # ADD x3, x1, x2
0x67 # HALT
]
vm = RISCV_VM()
vm.load_program(program)
vm.run()
コードの構成
RISCV_VM クラス: 仮想マシンの主要なコンポーネントをカプセル化します。
init: 仮想マシンの初期化を行います。32個のレジスタ、メモリ、プログラムカウンタ(pc)、実行フラグ(running)を準備します。
load_program: メモリにプログラムをロードします。
fetch: 現在のpcが指すメモリ位置から命令をフェッチ(読み込み)します。その後、pcをインクリメントします。
decode_execute: フェッチされた命令をデコード(解釈)し、実行します。命令のオペコードとオペランド(レジスタ番号、即値)を抽出し、それに応じてレジスタの値を変更したり、pcを更新したりします。
run: 仮想マシンの実行ループです。runningフラグがTrueの間、命令をフェッチ、デコード、実行し続けます。命令の実行後、pcとレジスタの内容を出力します。
サンプルプログラム:
program: 仮想マシンが実行する命令をリストで定義しています。各命令は整数で表され、RISC-Vの命令フォーマットに従ってエンコードされています。
ADDI x1, x0, 5 : x1レジスタにx0レジスタの値+5を代入(x1=5)
ADDI x2, x0, 10 : x2レジスタにx0レジスタの値+10を代入(x2=10)
ADD x3, x1, x2 : x3レジスタにx1レジスタの値+x2レジスタの値を代入(x3=15)
HALT: プログラムを停止します。
実行部分:
vm = RISCV_VM(): RISCV_VMクラスのインスタンスを作成します。
vm.load_program(program): サンプルプログラムを仮想マシンのメモリにロードします。
vm.run(): 仮想マシンの実行を開始します。
プログラムコードの説明:
(0x13 | (1 << 7) | (0 << 15) | (5 << 20)) # ADDI x1, x0, 5
0x13:これはADDI(即値追加)命令のオペコードである。RISC-V ISAでは、オペコードは7ビット・フィールドである。16進数の0x13は2進数では0b0010011であり、これがADDIの正しいオペコードである。
(1 << 7): この部分はデスティネーション・レジスタ(rd)をエンコードする。
1: レジスタ番号。この場合はx1(レジスタ番号1)。
<< 7: 左シフト演算子。RISC-V命令形式のrdフィールドがビット7から11(合計5ビット)を占めるため、1を7ビット左にシフトする。
1 << 7の結果は、0b10000000(10進数128)となる。これにより、レジスタ番号1がrdの正しいビット位置に配置される。
(0 << 15): この部分は最初のソース・レジスタ(rs1)をエンコードする。
0: レジスタ番号。x0は常に値0を保持する特別なレジスタである。
<< 15: rs1フィールドが15ビットから19ビットを占めるので、0を15ビット左にシフトする。
0 << 15の結果は0b0(10進数の0)である。
(5 << 20): この部分は即値(imm)を符号化する。
5:即値。rs1の値(x0)に5を加えたい。
実行
コマンドラインまたはターミナルで、保存したファイルがあるディレクトリに移動します。
python riscv_vm.py と入力して実行します。
結果確認:
実行結果として、各命令実行後のPCの値とレジスタの内容が出力されます。
最終的に、x3レジスタに15(5 + 10)が格納されていることが確認できるはずです。
$ python riscv_vm.py
結果
PC: 1, Registers: [0, 5, 0, 0, 0, 0, 0, 0, 0, 0, 0, 0, 0, 0, 0, 0, 0, 0, 0, 0, 0, 0, 0, 0, 0, 0, 0, 0, 0, 0, 0, 0]
PC: 2, Registers: [0, 5, 10, 0, 0, 0, 0, 0, 0, 0, 0, 0, 0, 0, 0, 0, 0, 0, 0, 0, 0, 0, 0, 0, 0, 0, 0, 0, 0, 0, 0, 0]
PC: 3, Registers: [0, 5, 10, 15, 0, 0, 0, 0, 0, 0, 0, 0, 0, 0, 0, 0, 0, 0, 0, 0, 0, 0, 0, 0, 0, 0, 0, 0, 0, 0, 0, 0]
PC: 4, Registers: [0, 5, 10, 15, 0, 0, 0, 0, 0, 0, 0, 0, 0, 0, 0, 0, 0, 0, 0, 0, 0, 0, 0, 0, 0, 0, 0, 0, 0, 0, 0, 0]