この記事は "Timee Advent Calendar 2023" の1日目の記事です。
こんにちは! @luckypool です。
タイミーでプロダクトマネージャーをしています。
はじめに
諸説ありますが、プロダクトマネージャーは、プロダクトの「Why」や「What」に責任を持つと言われています。プロダクトマネジメントのすべてに記載の言葉を借りれば、「誰」を「どんな状態にしたいか」について、仮説を立て検証し続ける仕事です。
本稿では、この「誰」を「どんな状態にしたいか」と定めようとする姿勢を、“プロダクトマネージャー思考” とし、社会人の誰もが役立つ思考法だということを紹介します。
「誰」を「どんな状態にしたいか」 と定めようとする姿勢 = プロダクトマネージャー思考
なぜプロダクトマネージャー思考は有用か?
仕事は「誰か」とのコミュニケーションである
人間は社会的な生き物として進化と適応をしています。人間の”社会”として生きる必要があり、他の「誰か」なしに生きていくことは極めて困難です。かならず誰かと関わり合いをもち生活しています。それはどんな仕事の場面でもそうです。
誰かに関わりを持つことを「コミュニケーション」とするのであれば、それには2つの側面が存在しています。
- 情報を伝える側面
- 共感や関係性をつくる側面
日常の会話から仕事上の会議まで、両方の側面が常に存在しています。
例えば、日常の雑談では、意味や情報の正確性よりも、面白おかしくおしゃべりする関係性を続けることが目的だったりします。逆に、仕事上の会議では、正確な報告が必要であり、おしゃべりを継続し続けることは望ましくありません。
しかし、いくら仕事の場面だとしても、人は感情の生き物です。正しいロジックだけでは動きません。故に、コミュニケーションをする「誰か」の興味関心やその時の気分まで想像し把握していることは重要です。
- どんなパーソナリティなのか、何に興味を持っているのか
- どのような役職や部門にいるのか、職務上の関心事は何か
- その上で、私に何を期待しているのか
例えば以下のような例が考えられるでしょう。
例1)顧客、クライアント
一般論として、以下の興味や期待があるといえます。
- 関心事項:製品やサービスの品質、価格、対応品質
- 期待していること: 高品質の製品・サービス、コストパフォーマンス、優れた顧客体験
ただし、パーソナリティの違いによって、顧客対応は大きく変わるでしょう。
- 時間をかけても情報を詳細に知りたがる
- 顧客は迅速な対応を求めることを優先する
- 心配事を話すだけでほぼ満足してしまう
例2) 経営陣(CEO、取締役など)
一般論として、以下の興味や期待があるといえます。
- 興味: 会社の全体的な戦略、収益性、市場の地位、長期的な成長
- 期待: 高いROI(投資収益率)、戦略的意思決定のサポート、リスク管理
ただし、パーソナリティの違いによって、経営会議等の資料構成は大きく変わるでしょう。
- ビジョンを共有し、大局的な視点を持つことを好む
- 詳細なデータや実行計画に重点を置くことを好む
役職や部門による興味関心の理解は表層上の理解にすぎません。それと同じくらいその「人」のパーソナリティの理解をしておくと効果的であると言えます。
「どんな状態にしたいか」は状態ゴールである
仕事は「誰か」とのコミュニケーションであると説明しました。
しかし、コミュニケーションをとるというのは具体的にどのようなものがあるでしょうか。また「どんな状態にしたいか」とはどういうことでしょうか。
相手の具体的なアクションとして以下の観点からも整理します。
具体的なアクション | |
---|---|
SAY | なんて言ってもらいたいか |
THINK | なんて考えて欲しいか |
FEEL | どんなことを思ってほしいか |
DO | 何をしてもらいたいか |
-
情報共有型
- 説明
- 情報を伝えることが主要な目的です。進捗状況など、具体的な情報を伝えるために用いられます。
- どんな状態にしたいか
- SAY: 「この情報は明確で、理解しやすい」
- THINK: 「私はこの情報を活用して、効率的に作業ができる」
- FEEL: 安心感、明確さ
- DO: 情報を使って具体的な行動や計画を立てる
- 説明
-
説得型
- 説明
- 説得し、特定のアクションを起こすことを目的とします。投資、契約、賛同などの行動を促すために用いられます。
- どんな状態にしたいか
- SAY: 「この提案は説得力があり、信頼できる」
- THINK: 「私もこのアイデアや製品を支持したい」
- FEEL: 信頼感、好奇心、興奮
- DO: 提案されたアクションを実行する(例: 投資、契約、決裁承認)
- 説明
-
教育型
- 説明
- 聴衆に新しいスキルや知識を教えることが主要な目的です。講義やトレーニング、セミナー、ハンズオンなど教育的なコンテンツを提供します。
- どんな状態にしたいか
- SAY: 「新しい知識やスキルを学べて良かった」
- THINK: 「これらのスキルを実生活や仕事で活用できる」
- FEEL: 刺激を受ける、啓発される
- DO: 学んだことを実践に移す
- 説明
-
報告型
- 説明
- 成果や調査結果を報告するために使用されます。データや分析結果を示し、意思決定の支援やフィードバックを得るために利用されます。
- どんな状態にしたいか
- SAY: 「この報告は詳細で、情報が豊富だ」
- THINK: 「これらのデータをもとに、賢明な意思決定ができる」
- FEEL: 理解感、納得感
- DO: 報告されたデータを分析し、適切な対策を講じる
- 説明
-
劇場型
- 説明
- ストーリーを語り、感情や洞察を共有したり印象づけることが主要な目的です。モチベーションやビジョンの共有、パブリックスピーキングで利用されます。
- どんな状態にしたいか
- SAY: 「このストーリーは魅力的で、心に残る」
- THINK: 「この話から大きなインスピレーションを受けた」
- FEEL: 感動、共感、モチベーションの向上
- DO: ストーリーの教訓を自分の生活や仕事に適用する
- 説明
-
問題解決型
- 説明
- 特定の課題や問題に対する解決策の提案や、その協力を得ることを目的とします。ワークショップやブレーンストーミングセッションなどがそれにあたります。
- どんな状態にしたいか
- SAY: 「このセッションは有意義で、多くのアイデアが生まれた」
- THINK: 「これらのアイデアを実現する方法を見つけたい」
- FEEL: 創造的、協力的
- DO: 共有されたアイデアを用いて問題解決に取り組む
- 説明
コミュニケーションの類型があるかを明らかにすると、「どんな状態にしたいか」の具体が思い浮かんできます。この状態ゴールが定まることで、どのようにアプローチするかの探索がしやすくなります。
おわりに
仕事の場面だけで考えてみましたが、「誰」を「どんな状態にしたいか」を考えることは、仕事の進め方やそのゴールが具体的になると思います。
例えば、定例アジェンダを改めて考えて見ても良いでしょう。
- 参加者は誰ですか?
- どのようにコミュニケーションしますか?(類型はなんですか?)
- 彼ら彼女らをどのような状態にしたいですか?
より効果的な仕事を進められるヒントになると思います。どう効果的にできるか?は本稿では扱いません。
当たり前かもしれませんが、身近で過ごしている大切な家族や友人、パートナー、職場の同僚、取引先の担当者、その人たちを思い浮かべ、そして、その彼ら彼女らのペインやゲインを考え、その上で「どんな状態にしたいか」と考え過ごすことは、人生において有用なことかもしれません。
参考文献:
- 及川 卓也, 曽根原 春樹, 小城 久美子, 『プロダクトマネジメントのすべて 事業戦略・IT開発・UXデザイン・マーケティングからチーム・組織運営まで』, 翔泳社, 2021, p.34, https://www.amazon.co.jp/dp/4798166391
- 内田和成, 『右脳思考』, 東洋経済新報社, 2018, https://www.amazon.co.jp/dp/4492557865
執筆協力:
- ChatGPT 4