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printf() に float/double を渡したときの挙動と %lf の意義

Last updated at Posted at 2017-12-25

初心者向けの話。

この文書では、 C11 の規格として n1570 (Committee Draft) を参照する。

TL;DR

  • C 言語において、 printf() 等の可変長引数関数の可変長引数として float を渡した場合、 double へと自動で変換される (→ default argument promotion)
    • つまり、 float が渡されても double が渡されても、 printf() 内部からはどちらも double に見える
  • 規格 (C11) においては、 %f, %lf ともに double を表現するものとして規定されている

おまけ:

詳細

printf family の書式指定子

n1570 §7.21.6.1, The fprintf function にて、以下の記述がある。

The length modifiers and their meanings are:
(中略)

`l` (ell)
_(前略)_; or has no effect on following `a`, `A`, `e`, `E`, `f`, `F`, `g`, or `G` conversion specifier.

—— n1570 §7.21.6.1/7 抜粋

ここに %lf における l が何の効果も持たないということが示されている。

The conversion specifiers and their meanings are:
(中略)

`f`, `F`
A `double` argument representing a floating-point number is converted to decimal notation _(後略)_

—— n1570 §7.21.6.1/8 抜粋

%f%F などが (float でなく) double 引数を指定していると記されている。

default argument promotion

n1570 §6.5.2.2 Function calls にて、以下の記述がある。

If the expression that denotes the called function has a type that does not include a prototype, the integer promotions are performed on each argument, and arguments that have type float are promoted to double. These are called the default argument promotions.

—— n1570 §6.5.2.2/6 抜粋

訳すとこんな感じ:

呼ばれる関数を記述する式がプロトタイプが include されていない型を持っていれば、 integer promotion が各引数へ行われ、さらに float 型を持つ引数は double に格上げ (promote) される。これは default argument promotions と呼ばれる。

また、次段落:

If the expression that denotes the called function has a type that does include a prototype, the arguments are implicitly converted, (中略).
The ellipsis notation in a function prototype declarator causes argument type conversion to stop after the last declared parameter. The default argument promotions are performed on trailing arguments.

—— n1570 §6.5.2.2/7 抜粋

訳すとこんな感じ:

呼ばれる関数を記述する式がプロトタイプが include された型を持っていれば、引数は暗黙に変換される……(中略)
関数プロトタイプ宣言子の中の ellipsis notation (訳註: ... のこと) は、変数の型変換を最後に宣言されたパラメータ以降中断させる。それ以降の引数については、 default argument promotions が行われる。

以上の記述から、以下のことがいえる。

  • default argument promotion が行われるとき、 float の引数は double に変換される
  • プロトタイプが include されていない(つまり、利用する箇所の C コードからプロトタイプ宣言が見える場所にない)関数については、すべての引数に default argument promotions が行われる
  • プロトタイプが include された関数については、 ... 以降の可変長引数部として渡された引数について default argument promotions が行われる

以上より、 printf() の可変長引数部として渡される float の値は、 double に変換されて printf へ伝わるということがわかる。

まとめ

  • printf() のような可変長引数関数について、可変長部分の引数には default argument promotion が行われる
    • これによって、 float を渡すと double に変換される
    • doubledouble のままになる
    • ゆえに printf では、元 float だった値も最初から double だった値も、どちらも double として受け取ることになり、区別は付かない
  • printf family の関数について、 %fdouble の値に対応するものであると規定されている
  • printf family の関数について、 %lf における l は何の効果も持たないことが規定されている

つまり

  • float の表示には %f を、 double の表示には %lf を使え、という教えはおそらく誤解に基くものであり、 float, double いずれも %f で正しく表示することができる

おまけ

何故このような誤解が発生するか

scanf() では floatdouble の値を渡すものではなく float*double* を渡すとになるが、この場合 scanf 側では区別しないと困る(ポインタの参照先に書き込むべきサイズが異なるから)ので、 floatdouble を別々の指定子で指定することになる(つまり %f%lf を使い分ける)。
この使い分けは必須であるが、これをそのまま printf() でも必須であると思い込んだ人々が、 double の表示には %f でなく %lf を使うのが正しい、と勘違いしているのだろう。

古い C

Foreword/7 に以下の記述がある。

Major changes in the second edition included:
(中略)
%lf conversion specifier allowed in printf

—— n1570 Foreword/7

ここで "second edition" とは、 Foreword/6 からわかるように C99 の規格のことであり、 C11 の規格は "third edition" に相当する。

上の記述は、printf family における %lf の使用は C89/90 においては許されていなかったが、 C99 以降で許されるようになったということである。
すなわち、古い C を使う場合には、 printf%lf を使ってはいけない。

また、 C++11 からは、参照する C 規格が C99 に切り替わったため、 C++ の std::printf() においても %lf は使えるようになっている。
C++11 未満はもはや C++ じゃないので駄目。

The library described in Clause 7 of ISO/IEC 9899:1999 and Clause 7 of ISO/IEC 9899:1999/Cor.1:2001 and Clause 7 of ISO/IEC 9899:1999/Cor.2:2003 is hereinafter called the C standard library. 1

  1. With the qualifications noted in Clauses 18 through 30 and in C.3, the C standard library is a subset of the C ++ standard library.

—— n3337 (C++11) §1.2/2 および関連する注釈を抜粋

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