クライアント・サーバーサービス (Client-Server Services)
クライアント・サーバーサービスは、IEC 61850で定義されている通信方法の一つで、主に管理情報や制御指令の交換に使用されます。具体的な特徴としては以下の通りです:
MMS(Manufacturing Message Specification):
MMSは、IEC 61850で使用されるアプリケーション層のプロトコルです。このプロトコルは、クライアントとサーバー間でデータやコマンドのやり取りを可能にします。
例えば、サブステーション内の監視装置や保護リレーが中央制御室と通信を行う際に使用されます。
TCP/IPを使用:
クライアント・サーバーサービスは、TCP/IPプロトコルスタックを使用します。TCP/IPは、信頼性の高いデータ転送を提供するため、通信中のデータ損失を防ぎ、再送機能などで通信の信頼性を確保します。
このため、クライアント・サーバーサービスは、7層のOSIモデルをフルに活用する、完全な通信スタックを使用します。具体的には、アプリケーション層から物理層までのすべての層を使用します。
パブリッシャー・サブスクライバーサービス (Publisher-Subscriber Services)
パブリッシャー・サブスクライバーサービスは、IEC 61850で使用されるもう一つの通信方式で、特に高速で広範なデータ配信が求められる場合に使用されます。具体的には以下のような特徴があります:
階層の簡略化:
この方式では、従来のTCP/IPのようなフルスタックを使用せず、通信階層を簡略化しています。
基本的にイーサネットのリンク層(Layer 2)に直接アクセスし、上位層のプロトコル(例えば、TCPやIP)を介さずに通信を行います。
特定の標準化されたEtherTypeの使用:
パブリッシャー・サブスクライバーサービスは、特定のEtherTypeを使用して、イーサネットフレームとしてデータを送信します。この方法により、非常に低レイテンシーで高速なデータ転送が可能です。
例えば、GOOSEメッセージやSV(Sampled Values)メッセージのような、リアルタイム性が要求されるアプリケーションで使用されます。これらのメッセージはイーサネットフレームとして直接送信され、通常のネットワークトラフィックとは異なる優先度で処理されます。
まとめ
IEC 61850では、用途に応じて2つの異なる通信方式を使い分けています。クライアント・サーバーサービスは、信頼性の高い通信を提供するためにTCP/IPスタックを使用し、フルスタックでのデータ管理や制御が可能です。一方、パブリッシャー・サブスクライバーサービスは、リアルタイム性が求められる場合に最適化されており、低レイテンシーで高速な通信が可能です。このように、IEC 61850はサブステーションの様々な通信ニーズに応じて適切な方法を提供しています。