組み込みシステムの世界において、ESP32とSTM32のマイコンは、それぞれ異なる利点と用途を持つ2大巨頭として存在しています。Espressif Systemsが開発したESP32は、Wi-FiとBluetoothを内蔵し、IoT開発やコスト重視のプロジェクトに最適です。一方、STMicroelectronicsのSTM32シリーズは、多用途で信頼性が高く、産業用オートメーションや車載電子機器の分野で広く使用されています。
ESP32とは
ESP32は、Espressif Systemsが開発した高性能なSoCマイコンで、Wi-FiおよびデュアルモードBluetooth機能を統合しています。最大230 MHzで動作し、デュアルコアのXtensa LX6またはLX7、もしくはシングルコアのRISC-Vプロセッサを搭載。最大600 DMIPSの演算性能を誇ります。電圧スケーリングや省電力モード、細かなクロック制御といった高度な機能を備え、40nmプロセスで製造されています。
さらに、電力増幅器、低雑音増幅器、フィルタ、電源管理モジュール、アンテナ、RFバランなどの主要コンポーネントも内蔵されています。
ESP32の主な特徴
プロセッサ: デュアルコアまたはシングルコアのXtensa LX6、超低消費電力のコプロセッサ搭載
メモリ: 520 KiB RAM、448 KiB ROM
無線通信: 802.11 b/g/n Wi-Fi、Bluetooth v4.2 (BR/EDR & BLE)
周辺機能: 34個のGPIO、12ビットADC(最大18チャネル)、8ビットDAC×2、タッチセンサー×10、SPI/I²C/UART/CANなど
セキュリティ: WPA/WPA2/WPA3、セキュアブート、フラッシュ暗号化、暗号ハードウェア(AES、SHA-2、RSA、ECC、RNG)
電源管理: 内蔵LDO、ディープスリープ時5μA、GPIO・タイマー・ADC・タッチによるウェイクアップ対応
用途例
IoT機器:センサーノードやコントローラーなど低消費電力で多用途
スマートホーム:家電や照明、セキュリティ機器の制御
ウェアラブル端末:フィットネストラッカー、スマートウォッチ
産業用自動化:機器制御、予知保全システム
スマート農業:土壌モニタリング、灌漑システム制御
STM32とは
STM32は、STMicroelectronicsが開発した32ビットARM Cortex-Mシリーズをベースとするマイコン製品群です。Cortex-M0/M0+/M3/M4F/M7F/M33Fなど複数のコア構成があり、用途に応じて柔軟に選択可能。ST独自の周辺回路と統合されており、STM32F103などのシリーズでは72MHzで動作し、RAMや周辺機能が充実しています。
STM32の主な特徴
プロセッサ: Cortex-M0~M7F(最大550MHz)、一部デュアルコア構成
メモリ: 最大192KBのSRAM、最大2MBのフラッシュ、OTPメモリ
周辺機能: USB 2.0(HS/FS)、CAN 2.0B、SPI、I²C、UART、ADC、DAC、RTC、DMA、温度センサーなど
無線通信: 一部シリーズでWi-Fi、Bluetooth、イーサネット、カメラインタフェース対応
セキュリティ: セキュアブート、暗号処理(DES/TDEA/AES/SHA/MD5)、TRNG
電源管理: LDO内蔵、超低消費スリープモード、豊富なウェイクアップソース
用途例
産業用制御:モーター制御、センサー読み取り、リアルタイム制御
IoT機器:スマート家電、環境モニタリングなど
車載電子機器:ADAS、エンジン制御、インフォテインメントシステム
民生機器:家電、オーディオ、ゲーム機
医療機器:患者モニター、診断装置、ウェアラブル医療機器
ESP32 vs STM32:主な違い
特徴 | ESP32 | STM32 |
---|---|---|
用途 | IoT、スマートホーム、ウェアラブル向け | 産業、車載、医療、民生機器など幅広い |
プロセッサ構成 | LX6/LX7(デュアルコア)またはRISC-V | Cortex-Mシリーズ(最大デュアルコア) |
無線通信 | Wi-FiとBluetooth内蔵 | 一部シリーズに限定的 |
周辺機能 | GPIOと通信機能が限定的 | USB、CAN、イーサネット等豊富 |
消費電力 | IoT向けに最適化された低消費電力 | シリーズによって異なる |
開発難易度 | Arduino環境で簡単に開発可能 | 高機能ゆえに設定が複雑な場合も |
価格 | 機能集約で低コスト | 機能によって価格変動あり |
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