$z_0=\frac{1}{2}$と漸化式$z_{n+1}=z_n(1-z_n)$で数列$z_n$を定義します。
この$z_n$について$\lim_{z\rightarrow \infty}z_n=0$を証明します。
補題1
主張
$z_n$は、全ての$n$について$0< z_n\le \frac{1}{2}$が成り立つ。
証明
これを示すために、$0< z_n\le \frac{1}{2}$が成り立つとして、$0<z_{n+1}\le \frac{1}{2}$を示します。
$0< z_{n}\le \frac{1}{2}$とすると$\frac{1}{2}\le 1-z_n<1$ですので、$0< z_n(1-z_n)=z_{n+1}$がわかります。さらに、$z_{n+1}=z_n(1-z_n)\le z_n\le \frac{1}{2}$となります。
以上で全ての$n$について$0< z_n\le \frac{1}{2}$がわかりました。
補題2
主張
$z_n$について$n\ge 1$のときに$z_n\le \frac{1}{n}$が成り立つ。
証明
まず、$z_1=\frac{1}{4}<1$なので$n=1$のときに主張は成り立ちます。
次に$z_n\le \frac{1}{n}$とすると、
\begin{eqnarray}
z_{n+1}&=& z_n(1-z_n) \\
&\le& z_n(1-z_n)+\frac{z_n^3}{1+z_n} \\
&=& \frac{z_n(1-z_n)(1+z_n)+z_n^3}{1+z_n} \\
&=& \frac{z_n}{1+z_n} \\
&=& 1- \frac{1}{1+z_n} \\
&\le& 1-\frac{1}{1+\frac{1}{n}} \\
&=& \frac{1}{n+1}.
\end{eqnarray}
なので$z_{n+1}\le \frac{1}{n+1}$となります。
上記より全ての$n\ge 1$に対して$z_n\le \frac{1}{n}$がわかりました。
目標の証明
補題1と補題2より$n< 1$のときに$0\le z_n\le \frac{1}{n}$がわかりました。はさみ打ちの原理より、$z_n$は$0$に収束します。
まとめると以下のようになります。
$z_0 =\frac{1}{2}$とします。$z_n$は漸化式$z_{n+1}=z_n(1-z_n)$を満たすとすると、次が成り立つ。
\lim_{n\rightarrow \infty}z_n = 0
補足
$f(x)=x(1-x)$のような関数をロジスティック写像と呼び、この写像を反復することで得られる数列は複雑な挙動をすることがあります。今回は0に収束するので単純な挙動です。
$g(x)=\frac{x}{1+x}$のような関数を一次分数変換と呼び、一次分数変換は合成について閉じています。今回は、複雑な動きをする$f(x)$に近い動きをするけど合成に強い$g(x)$を用意して、証明しました。