「一般相対性理論を一歩一歩数式で理解する」という本を読んでいたら、最初の方に次の公式が書いてあった。$A, B, C, D$をベクトルとして、次が成り立つ。
$$
(A\times B)\cdot(C\times D)
= (A\cdot C)(B\cdot D)-(A\cdot D)(B\cdot C)
$$
この公式をエディントンのイプシロンの公式$\epsilon_{ijk}\epsilon_{ilm}=\delta_{jl}\delta_{km}-\delta_{jm}\delta_{kl}$を使って示してみる。
$A, B, C, D$の成分を$a_i, b_i, c_i, d_i$とする。
\begin{align}
(A\times B)\cdot(C\times D)&
= \epsilon_{ijk}a_jb_k\epsilon_{ilm}c_ld_m\\
&= \epsilon_{ijk}\epsilon_{ilm}a_jb_kc_ld_m \\
&= (\delta_{jl}\delta_{km}-\delta_{jm}\delta_{kl})a_jb_kc_ld_m \\
&= a_jb_kc_jd_k - a_jb_kc_kd_j \\
&= a_jc_jb_kd_k - a_jd_jb_kc_k \\
&= (A\cdot C)(B\cdot D)-(A\cdot D)(B\cdot C)
\end{align}
以上で示せる。なお、$\Sigma$記号を省略した。
振り返ると、最初の公式とエディントンのイプシロンの公式はほぼ同じ形をしていた。
最初の公式の系
$ $最初の公式において$A=C,B=D$とすると$|A\times B|^2=|A|^2|B|^2-(A\cdot B)^2$となる。
これで証明できているが、あえて成分で計算してみる。
\begin{align}
|A\times B|^2&=\epsilon_{ijk}\epsilon_{ilm}a_jb_ka_lb_m \\
&= (\delta_{jl}\delta_{km}-\delta_{jm}\delta_{kl})a_jb_ka_lb_m \\
&= a_ja_jb_kb_k - a_jb_ja_kb_k \\
&=|A|^2|B|^2-(A\cdot B)^2
\end{align}
以上のようになる。
この記事で紹介した以外にも、ベクトルの外積や内積についての公式は、$\Sigma$記号を省略して成分計算をすることで、簡単に証明できるものがけっこうある。