Oracleのファイングレイン監査(FGA)とOracle Audit Vaultは、どちらもデータベースの監査機能を強化するためのツールですが、それぞれの目的やアプローチ、機能において大きく異なります。以下は、その違いについての詳細です。
1. 目的
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Oracleファイングレイン監査(FGA)
FGAの主な目的は、特定の条件に基づいてデータベース内のアクセスや操作を監視し、詳細な監査を行うことです。特定の列や行へのアクセスがあった場合にのみ監査を行うといった、きめ細かい制御が可能です。これは、特定のデータに対する不正アクセスや不適切な操作を検出するために使われます。 -
Oracle Audit Vault
Oracle Audit Vaultの目的は、データベース内外の監査データを一元的に収集し、保管、管理、分析することです。Audit Vaultは、複数のデータベースやシステム(Oracle以外のデータベースやOSなど)から監査データを集め、統一された監査レポートとアラート機能を提供します。これにより、セキュリティインシデントの迅速な検出と対応が可能になります。
2. 機能とアプローチ
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FGAのアプローチ
- 条件付き監査: FGAは、特定の行や列に対する操作や、特定の条件が満たされた場合にのみ監査を行います。例えば、給与情報に対するSELECT文を実行した場合や、特定のユーザーが機密データにアクセスした際にのみ、監査が発生します。
- 行・列レベルの監査: FGAはテーブルやビューの特定の行や列に対するアクセスを監査できるため、細粒度の監査が可能です。
- SQL文のキャプチャ: 監査ポリシーが発動した際に、FGAは実際に実行されたSQL文やそのコンテキスト(ユーザー名、時間など)を詳細に記録します。
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Audit Vaultのアプローチ
- 監査ログの収集と集中管理: Audit Vaultは、複数のデータベースやシステム(Oracle、SQL Server、MySQL、ファイルシステムなど)から監査ログを一元的に収集し、保管、分析します。これは、複数の環境にまたがるシステムのセキュリティを一括して監視するためのものです。
- 分析とレポート生成: Audit Vaultは、収集した監査データを基に統一された監査レポートを生成し、異常な動作を発見した場合にはリアルタイムでアラートを出すことができます。
- セキュリティログの改ざん防止: Audit Vaultは監査ログを別のセキュリティ領域で保管し、ログの改ざんや削除から保護します。これは、内部関係者の不正操作や攻撃者によるログの隠蔽を防ぐための重要な機能です。
3. 用途の違い
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FGAは、特定のデータに対する細かい監査が必要な場合に使用されます。例えば、ある特定のユーザーが機密データにアクセスした際に、そのアクションを記録したり、不正アクセスを検出したい場合に効果的です。また、特定の行や列に対してアクセスする操作をターゲットにできます。
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Audit Vaultは、全体的な監査データの管理と保護に使用されます。Audit Vaultは、複数のシステムにわたる広範な監査情報を収集し、中央で管理する必要がある場合に有効です。これは特に、異なるデータベースやシステムを監査対象にしたい場合や、複数システムでのコンプライアンス対応が求められる場面で重要です。
4. 適用範囲
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FGAは、主にOracleデータベース内の特定のテーブルや列に対する監査に適用されます。特定のデータに対するアクセスや操作を細かく監視し、記録するための機能です。
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Audit Vaultは、Oracleデータベース以外にも対応し、複数のデータベースやシステムの監査データを統合して管理するために使用されます。Audit VaultはOracleデータベースだけでなく、他のデータベースやOSからも監査データを収集できます。
5. 導入と管理
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FGAは、監査対象のテーブルや列に対して監査ポリシーを設定することで導入されます。ポリシーはSQL文やユーザーアクションに基づいて発動されるため、柔軟に設定することが可能です。導入の際には、特定の操作に対する監査の範囲を決めて実装します。
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Audit Vaultは、集中管理型の監査プラットフォームとして導入されます。複数のシステムやデータベースから監査ログを収集するために、監査データの収集エージェントを各システムに配置し、それをAudit Vaultサーバーで一元管理します。大規模なインフラや複雑なシステム全体で監査を統一的に管理する際に効果的です。
6. セキュリティ強化のレベル
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FGAは、データベース内の特定のデータに対する監査を強化し、機密データへの不正アクセスを検出することに重点を置いています。特定の状況に応じてアクセスログを細かく取得することができます。
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Audit Vaultは、広範なシステムの監査データの保護と管理に重点を置いており、特に監査ログの保管や分析、改ざん防止に役立ちます。特定のデータベースやシステムの境界を越えて、包括的なセキュリティ監査の枠組みを提供します。
まとめ
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Oracleファイングレイン監査(FGA)は、特定のデータへの細かい条件付きの監査を行い、不正アクセスやデータの不適切な操作を監視するのに適しています。データベース内の特定の行や列に対するアクセスを記録する場合に効果的です。
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Oracle Audit Vaultは、複数のデータベースやシステムから監査データを一元的に収集・管理・分析するためのツールで、広範な監査ログの管理やセキュリティインシデントの早期検出に適しています。システム全体でのコンプライアンス対応や監査データの保護が重要な場合に有効です。
それぞれのツールは異なる用途と範囲を持つため、特定の監査要件に応じて使い分けたり、必要に応じて組み合わせて使用することができます。