Oracleの統合監査(Unified Auditing)は、Oracle Database 12c以降で導入された監査機能で、従来の標準監査に比べて、より効率的で統一された監査ログ管理を提供します。統合監査は、複数の監査機能(標準監査、ファイングレイン監査、RMAN監査、データベース Vault監査など)を一つのフレームワークに統合し、パフォーマンスを向上させつつ、監査の一元管理を実現します。
主な特徴
1. 一元的な監査フレームワーク:
- 従来の標準監査やファイングレイン監査を含む複数の監査タイプを統合し、すべての監査データを単一の監査トレイル(
UNIFIED_AUDIT_TRAIL
)に格納します。 - これにより、監査データの管理が簡素化され、監査設定やクエリの実行が容易になります。
2. パフォーマンスの向上:
- 統合監査では、監査データの記録が以前の方法よりも効率的で、パフォーマンスへの影響が低減されています。データベースのトランザクション処理とは独立して監査データを収集するため、アプリケーションのパフォーマンスに悪影響を与えにくくなっています。
3. 監査ポリシーの柔軟な定義:
- 統合監査では、監査ポリシーを定義し、どの操作やイベントを監査するかを柔軟に設定できます。これにより、特定の操作やユーザー、権限などに対してきめ細かい監査を行うことが可能です。
- 監査ポリシーは
CREATE AUDIT POLICY
文を使用して作成します。
4. ログの一元管理:
- 監査データは全て
UNIFIED_AUDIT_TRAIL
というビューに格納され、ここでログを管理・参照できます。これにより、監査ログのクエリが簡素化され、すべての監査データに対して統一的な検索や分析が可能です。
5. デフォルトの監査ポリシー:
- Oracleにはデフォルトでいくつかの監査ポリシーが提供されており、たとえばセッション作成や権限の使用に関する監査が標準で有効化されています。
統合監査の設定
1. 統合監査の有効化: 統合監査は、データベースの作成時に有効にするか、既存のデータベースで有効化することが可能です。データベースの作成時に統合監査を有効にするには、DBCA(Database Configuration Assistant)を使用して統合監査を選択します。
既存のデータベースに対して統合監査を有効化するには、次のコマンドを使用します:
$ sqlplus / as sysdba
SQL> shutdown immediate;
SQL> startup mount;
SQL> alter database open;
2. 監査ポリシーの作成: 統合監査では、監査ポリシーを定義して監査する内容を指定します。例えば、特定のユーザーや特定の操作に対して監査を行いたい場合、以下のようなコマンドを使用します:
-
SELECT
文を監査するポリシーの作成:
CREATE AUDIT POLICY my_select_audit
ACTIONS SELECT ON employees;
- 特定のユーザー(例えばSCOTTユーザー)に対する監査を有効化:
AUDIT POLICY my_select_audit BY scott;
3. 監査ログの確認: 監査ログは、UNIFIED_AUDIT_TRAIL
ビューを使用して確認できます。このビューは、すべての統合監査のログを一元的に管理しています。
SELECT * FROM UNIFIED_AUDIT_TRAIL;
これにより、監査された操作、ユーザー、実行されたSQL文、実行時刻などの詳細情報を確認することができます。
統合監査のメリット
1. 管理の簡素化: 従来の複数の監査手法を一元化することで、監査ポリシーやログの管理が大幅に簡素化され、複雑な設定やログの分散を防ぎます。
2. パフォーマンスへの影響が少ない: 統合監査はパフォーマンスへの影響が小さく、特に大規模システムや高トランザクションシステムにおいて有効です。
3. 包括的な監査機能: 統合監査では、データベースのSQL文実行だけでなく、Oracleのさまざまなコンポーネント(例:RMAN、Oracle Data Pump、ファイングレイン監査など)に対しても監査を行うことができます。
4. 高度なセキュリティ要件に対応: 統合監査は、企業のセキュリティ要件やコンプライアンス要件に対応するために設計されており、特に法規制に準拠した監査証跡を確保するために有効です。
まとめ
Oracleの統合監査は、データベースのあらゆる操作やイベントに対する監査を一元的に管理し、パフォーマンスを向上させながら高度な監査機能を提供するシステムです。これにより、企業はデータベースのセキュリティを強化し、コンプライアンス要件を満たすことが可能になります。統合監査の導入により、複雑な監査要件にも柔軟に対応できるため、監査の管理が一層効率的になります。