Oracle Virtual Private Database(VPD)とOracle Database Vaultは、どちらもデータベースのセキュリティを強化するための技術ですが、それぞれの目的やアプローチは異なります。以下に、それぞれの機能と違いについて詳しく説明します。
1. 目的
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Oracle Virtual Private Database (VPD)
VPDの主な目的は、データベース内の行レベルおよび列レベルでのアクセス制御を提供することです。特定のユーザーがアクセスできるデータを動的に制限することにより、データのプライバシーを保護します。VPDは、ユーザーやコンテキストに基づいて異なるデータセットを見せる、いわゆる「仮想的なプライベートデータベース」を作り出すことが可能です。 -
Oracle Database Vault
Database Vaultの目的は、特権ユーザーやDBAによる不正アクセスの制限およびデータベースのセキュリティを強化することです。これにより、従来は完全なアクセス権を持つDBAでも、特定のデータや操作に対してアクセス制限をかけることができます。内部からの脅威に対応するための強力なアクセス制御機能を提供します。
2. 機能とアプローチ
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VPDのアプローチ
- 行・列レベルのアクセス制御: VPDはユーザーごとに動的にSQLクエリを修正し、そのユーザーがアクセスできるデータのみを返すようにします。例えば、ユーザーAは「部門X」のデータしか見られないが、ユーザーBは「部門Y」のデータしか見られないといった制御が可能です。
- セキュリティポリシー: VPDは、特定のテーブルやビューに対してセキュリティポリシーを定義し、これに基づいてアクセスを制限します。このポリシーはユーザーやアプリケーションのコンテキスト(例えば、IPアドレスやログイン時間)に基づいて動作します。
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Database Vaultのアプローチ
- 特権ユーザーのアクセス制御: Database Vaultは、データベース管理者やシステム管理者といった特権ユーザーのアクセスを制限することに重点を置いています。DBAが特定のスキーマやデータにアクセスできないようにするなど、アクセス制御を細かく設定できます。
- セキュリティ領域とポリシー: Database Vaultでは、保護領域(Realm)を作成し、その領域内のデータやアプリケーションに対するアクセスを制限します。また、コマンドルールを使って特定のSQL操作(CREATE, ALTER, DROPなど)に対してポリシーを設定することができます。
3. 用途の違い
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VPDは、データの細粒度なアクセス制御が必要な場面で使用されます。たとえば、異なる部署のユーザーが同じテーブルにアクセスするが、部署ごとに異なるデータしか見られないようにしたい場合などです。VPDはアプリケーションやユーザーごとに異なるビューを提供し、データのプライバシーを保護します。
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Database Vaultは、特に内部からの脅威に対する保護が求められる場合に使用されます。これは、DBAやその他の特権ユーザーが誤って、あるいは意図的に重要なデータにアクセスできないように制限するための機能です。また、複数の役割や責任の分離を実施する際に重要な役割を果たします。
4. 適用範囲の違い
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VPDは、主に行レベルや列レベルでのデータアクセス制御に特化しており、ユーザーやアプリケーションのコンテキストに基づいてSQLの結果を動的にフィルタリングします。特定のユーザーに特定のデータのみを見せたい場合に最適です。
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Database Vaultは、データベース全体や管理操作に対する制御を提供します。特権ユーザーを含むすべてのユーザーに対するセキュリティポリシーを定義し、データベース自体へのアクセスや操作を制限することに重点を置いています。
5. 導入と管理
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VPDは、アプリケーションや個々のテーブル、ビューに対してポリシーを設定し、それらのデータに対するアクセスをフィルタリングします。VPDの設定は比較的シンプルで、アプリケーションの設計段階で導入しやすいです。
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Database Vaultは、データベース全体に対してより広範なセキュリティ制御を提供するため、導入には慎重な計画が必要です。既存の業務プロセスや管理体制に影響を与える可能性があるため、導入には管理者の調整と計画が不可欠です。
6. セキュリティ強化のレベル
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VPDは、主にデータの閲覧や操作に関する制限を提供し、アクセスするデータ自体に焦点を当てています。VPDを使うと、異なるユーザーが同じSQL文を実行しても、その結果が異なるデータを返す可能性があります。
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Database Vaultは、データベースの管理操作や特権ユーザーのアクセスそのものを制御するため、より高いレベルでのセキュリティ強化を目指しています。データの閲覧だけでなく、管理上の操作を制限することができるため、システム全体の保護を強化します。
まとめ
- VPDは、ユーザーごとのデータアクセス制御に特化しており、特定のユーザーや状況に応じて、どのデータを見せるかを動的に制御するのに適しています。
- Database Vaultは、データベースの管理操作や特権ユーザーのアクセス制御に重点を置き、内部脅威に対する高度な保護を提供します。DBAによる不正な操作や誤ったアクセスを防ぐことに特化しています。
両者は目的や適用範囲が異なるため、セキュリティ要件に応じて適切なツールを選択、または組み合わせて利用することで、より強力なデータベースセキュリティを実現できます。