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Applicative スタイル `f <$> m1 <*> m2` を読み解く

Last updated at Posted at 2017-07-16

Applicative スタイル f <$> m1 <*> m2 を読み解く

Applicative スタイルとは

foo = do
  a <- m1
  b <- m2
  return $ f a b

という計算に対し、 do と return を消して

foo = f <$> m1
        <*> m2

という風に書けるよという話です。

問題はこの f <$> m1 <*> m2 では実際に何が起きているのか、なぜ同じ計算結果になるのか、についてです。

<$><*>fmapapply

<$><*> という見慣れた、しかし初心者には分からん殺しの演算子ですが、両方とも infixl 4 なので、普通の左から順に計算できる2項演算です。

<$>fmap

まずこの <$> についてですが、 fmap という Functor 型クラスに関する関数です。様々な言語でリストに対する map としてよく使われているアレです。

fmap :: Functor f => (a -> b) -> f a -> f b

この型は一見すると 2項演算 のように見えますが、 Haskell では全ての関数はカリー化されているので

fmap :: Functor f => (a -> b) -> (f a -> f b)

という結合順序で読むと、関数 (a -> b) を引数に取り関数 f a -> f b を返す1項演算子と見ることができます。まさしく Functor ですね。

<*>apply

次に <*> についてですが、これは Applicative 型クラスに関する関数 apply です。
([\x->x+1, \x->x+2, \x->x+3] <*> [1, 2, 3]) == [2,3,4, 3,4,5, 4,5,6] というように使えます。

apply :: Applicative f => f (a -> b) -> f a -> f b

例によって1項演算子として見ると

apply :: Applicative f => f (a -> b) -> (f a -> f b)

と読めます。

Applicative スタイル を読み解く

では改めて

foo = f <$> m1 <*> m2

を式変形していきましょう。

foo = f <$> m1 <*> m2
foo = (f <$> m1) <*> m2
foo = (f `fmap` m1) <*> m2
foo = ((fmap f) m1) <*> m2
foo = ((fmap f) m1) `apply` m2
foo = (apply ((fmap f) m1)) m2
foo = ((apply ((fmap f) m1)) m2)

((apply ((fmap f) m1)) m2) という形になり、これで計算の順序は一点の曇りなく書くことができました。
全てのカッコでの型を書くと。

--      + apply :: Applicative f => f (a -> b) -> (f a -> f b)
--      |       + fmap :: Functor f => (a -> b) -> (f a -> f b)
--      |       |    + a -> b -> c
--      |       |    |  + f a
--      |       |    |  |    + f b
--      |       |    |  |    |
foo = ((apply ((fmap f) m1)) m2)
--    ||      ||
--    ||      |+ f a -> f (b -> c)
--    ||      + f (b -> c)
--    |+ f b -> f c
--    + f c

となっています。というわけで foo の型は Applicative f => f c でした

do スタイルとの比較

なぜこの Applicative スタイル が do スタイルの結果と一致するのでしょうか。

この計算

foo = do
  a <- m1
  b <- m2
  return (f a b)

でやりたかったのは、ある Monad m1m2 の中身を取り出して関数 f に適用し、その結果 f a b を何らかの Monad で包むことです。

ところで、 Monad とは Applicative な Functor (Monad ⊆ Applicative ⊆ Functor) のうち2項演算子 bind (>>=) という性質もつもののことです。この >>= があることによって計算の結果を見て条件分岐し,
結果を変えることができます。

Monad 的な if 3項演算子 miffy を考えてみます。

miffy :: Monad m => m Bool -> m a -> m a -> m a
miffy mb mt me = do
  b <- mb
  if b then mt else me
{-以下のような意味です
  if b
    then do
      ret <- mt
      return ret
    else do
      ret <- me
      return ret
-}

mb の実行結果によって2つの mt と me からどちらか1つを実行し、結果を返す関数です。

Applicative Functor についても考えてみます。

iffy :: Applicative f => f Bool -> f a -> f a -> f a
iffy fb ft fe = (pure cond) <*> fb <*> ft <*> fe
  where
    cond b t e = if b then t else e

しかしこの定義には問題があります。

iffy (pure True) (pure t) Nothing == Nothing

条件は True なので結果は t になるべきですが Nothing を返してしまいます。なぜなら、

instance  Functor Maybe  where
    fmap _ Nothing       = Nothing
    fmap f (Just a)      = Just (f a)

instance Applicative Maybe where
    pure = Just

    Just f  <*> m       = fmap f m
    Nothing <*> _m      = Nothing

の通り、MaybeのFunctor型クラスのインスタンスはfmapの第二引数にNothingがくるとNothingを返すように定義されているからです。

Monad 版では問題ありません。

miffy (return True) (return t) Nothing == (return t)

このことから、Monad は Applicative Functor のうち条件分岐が可能な性質を持つものと見ることができます。

件の計算

foo = do
  a <- m1
  b <- m2
  return (f a b)

では m1の実行結果を参照して次に実行するモナドをm2とは別のモナドに分岐するような処理はありませんでした。
そのため、計算 foo はモナドのうち Applicative の性質のみで記述することができたのです。

逆に言えば、条件分岐する必要がなければ IO モナドであっても Applicative スタイル で逐次実行を書くことができます。

main :: IO ()
main = id <$> putStrLn "hello world"

main :: IO ()
main = (const id) <$> putStrLn "hello"
                  <*> putStrLn "world"

main :: IO ()
main = (const (const id)) <$> putStrLn "hello"
                          <*> putStrLn "real"
                          <*> putStrLn "world"

面白いですね。

参考

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