toutouさんに続きIwaken Labアドベントカレンダー10日目の記事になります。
概要
IVRCという学生限定のVRのコンテストがあるのですが、今年から自作ハードを用いてはならないというレギュレーションのメタバース部門が新設されました。筆者はそこに「ほらわーうるふ」という人狼とホラーワールドを組み合わせたような作品を提出し、「特別審査員賞(おめが賞)を受賞することができました。慣例的にIVRCの提出作品はほとんどがハードウェアが主体の作品なので、それとは対比的にHMDのみを用いてメタバースをどう表現するのかがメタバース部門です。ちなみにIVRCは意外と歴史の長いコンテストでなんと初回大会は1993年に開かれ、初回大会の優勝者はかの有名な稲見先生だったりします。
解説が長くなりましたが、そんなコンテストのお披露目会が11/18,19にお台場のテレコムセンターでサイエンスアゴラという科学イベントの一環として開かれ、たくさんの人に来場いただきました。
会場で得た知見
ここからは、会場で得た知見について書いていきます。
まず、展示形態について述べておきます。上の写真の通り、長机を2台横に並べ、各机に2台ずつゲーミングノートとHMD(基本的にはpico4×4)をstreaming assitantを有線接続して運用しました。基本的にはと書いたのは特定の作品がoculusアプリだったのでその作品を展示するときにはoculus Questシリーズとpicoを差し替えていました。
アテンドして気づいた点大きく分けて3点挙げます。
あらゆる年齢層を想定しておけ
1つめは「あらゆる年齢層を想定しておけ」ということです。出展者はもちろん、運営側も今回事前に予想しきれていなかったこととして、小学生の来場が予想以上に多かったことです。普段VR関係のイベントは20代以上のIT技術者や技術に興味のあるアーリーアダプターの人が大半を占めますが、IVRCは概要で述べた通りサイエンスアゴラという科学系イベントの一環でやっていたので科学系イベントに来る親子連れが多かったのです。
VRコンテンツをほとんど体験したことない人々はまずVRChat内を移動することすらままなりません。一度HMDをかぶせてしまうとコントローラが見えなくなってしまい、例えばAボタンを押すよう指示しても伝わりません。
銃を撃つには、中指のボタンを押しながら人差し指のボタンを押してくださいという風に指とボタンを関連させると操作が伝えやすいです。他にも、HMDをかぶせる前に紙や動画で説明をしておいたり、VRコンテンツ内に操作チュートリアル(これは製作者に追加タスクが発生するので理想論に近くはある)を設けておいたりすると多少楽になります。
VRChat深層住民向けのコンテンツは一般向けの展示がものすごい難しいということが否応なしに分かってしまいました。これはコンテンツ制作者各々がきちんと考えておかなければいけない課題だなと思いました。
年齢確認をしよう
あと意外と忘れがちだが大切な話として年齢確認があります。メタバース部門では体験できるのは7歳以上の方に限定しました。この条件は任天堂のガイドラインに依拠しました。metaでは対象年齢を13歳以上にしていますが(今年対象年齢を引き下げるらしい?)、これはアカウント紐づけのためにFacebookの対象年齢と合わせるためだと思います。2016年ごろからHMDを用いると斜視のリスクがあるという風潮がありますが、これは3D眼鏡の視力への影響を調べた論文(原著論文が見つけられませんでした。原著論文を知っている方がいれば教えてくださると幸いです)に起因するそうです。HMDについて調べた論文ではないですが、何か起こっても責任は取れないため年齢確認は徹底しましょう。
転換の時間を考えておけ
2つ目は(複数コンテンツを同じ場所で立て続けに展示する際の話ですが)「転換の時間を考えておけ」ということです。
今回は転換の時間を設けず1時間ごとにコンテンツを入れ替えていました。もちろんお客さんは展示終了時間間近にも来るので、時間を決めてちゃんと切ったり、整理券を配布したりするのも手です。
転換の際はどうしてもトラブルが起きがちなので(特にプラットフォームを変える際は)プログラムの中に10分間でもいいので転換専用の時間を設けると安心です。
ネットワーク
最後にネットワークに関する話題です。これは今回筆者も初めて知ったVRCの罠なのですが、4~5台以上の同一IPで同一インスタンスに入るとインスタンスからはじかれたりエラーワールドに飛ばされる可能性があります。
解決策としては一人用のワールドならインスタンスを分け、ルータが複数あるならIPを分散させることで安定的に運用できます。それができない場合は仕方なくお祈りしましょう。IVRCでは十分な対策ができなかったのでエラーワールドになんども飛ばされて大変でした。
p.s. Lodge XRTALKというイベントで、公式に言うとアカウント指定でIP制限を解除してもらえるらしいという話を聞きました。
最後に
今回IVRCでVRCワールドを普段以上に
広範な年齢層の人に体験してもらうという貴重な経験をしました。このような機会は少ないですが、何か今後VRCワールドをリアル展示する人の役に少しでも立ったならば嬉しいです。
明日はdaraさんの記事(CTO/エンジニアリングマネージャー 1年目の教科書)です。
エンジニアリングだけでなくマネジメント的な内容も聞けそうで楽しみです。