現在の Web 製作者でアクセシビリティにまったく無頓着という人はほとんどいないだろうけど、実際にスクリーンリーダーで Web を見たことがある人は少ないかもしれない。
アクセシビリティを向上させるノウハウや、自動テストの方法はよく知られているけど、やっぱり実際に使い勝手を試してみるのは大事だと思う。
かつては専用のソフトウェアを購入する必要があり、敷居が高かったが、最近の OSX や iOS には VoiceOver というスクリーンリーダー (およびジェスチャによるコントロール) が標準で付属している。
ここでは iPhone の VoiceOver の使い方を見てみよう。
VoiceOver を有効にする
1.「設定」を開く
2. 一般 -> アクセシビリティ -> VoiceOver -> VoiceOver を「オン」にする
VoiceOver を有効にすると、スワイプ、タップなどの操作が全面的に置き換えられる。次項以降を参照。
基本操作
VoiceOver ではほとんどの操作を「項目の選択」->「項目の実行」という順序で行う。
-
右スワイプ
左スワイプ
で項目間を移動する。移動すると項目名が読み上げられる (画面では黒枠で囲まれる)。 -
タップ
でタップしたところの項目を選択。タップしながら指を動かす
と指のあるところの項目を選択。 -
ダブルタップ
で項目の決定。非 VoiceOver でのタップとほぼ同様。
ローター
-
上スワイプ
下スワイプ
は状況に応じて挙動が変化する。 - その挙動は
二本指を右回転
二本指を左回転
で切り替えられる (これをローターと呼ぶ)
二本指を(右|左)回転
は地図を回転させるときのジェスチャ。親指と人差し指を使って、それぞれを左右方向に逆行させるとやりやすい。
自動で項目移動
-
二本指で上スワイプ
で最初の項目に戻り、自動で項目を移動する。迷子になったときに最初の項目に戻りたいときによく使う。 -
二本指で下スワイプ
で現在の項目から自動で移動。Safari や iBooks などで文章を読み上げたいときによく使う。 -
二本指でタップ
で、自動項目移動の中止・再開。
Safari で検索フィールドに移動したいときに 二本指で上スワイプ
-> 左スワイプ
とか。
目次 / 索引
連絡先、ミュージックなど、右側に頭文字の書かれた目次 / 索引が表示されている場合、これを操作できる。
- 右の目次 / 索引をタップして
上スワイプ
下スワイプ
で移動
文字入力
文字入力の方法は「標準」と「タッチ」がある。
「ローター」で「入力モード」を選択し 上スワイプ
下スワイプ
で切り替える。タッチのほうが素早く入力できる。
- 「標準」入力モードではキーを選んで
ダブルタップ
で文字入力。 - 「タッチ」入力モードではキーをタップで文字入力。通常は
タップしながら指を動かし
て離すようにすると思う。 - 漢字変換は「次候補」がまともに使えないので、項目移動で候補を選択して
ダブルタップ
。
そのほか
-
三本指でダブルタップ
で読み上げオン / オフ。 -
三本指でトリプルタップ
でスクリーンを非表示にする。省電力で見た目もかっこいい! - ロックの解除は「ロックの解除」まで項目移動して
ダブルタップ
ほかにも多数のジェスチャがあるが、ここでは省略する。とりあえず上記のものさえ覚えていれば操作できると思う。
より詳しい情報は iPhone / iPad のユーザーガイドを参照してください。
数時間使ってみた所感
Web ページは HTML / CSS をちゃんと使っていれば、かなり読める。
ただ、見出しの使い方や alt 属性が不適切だとずいぶん読みにくくなる。
アプリも結構使えるが、無駄に項目が多かったり、文字での検索が必須のものはちょっと使いづらい。
VoiceOver に最適化した UI を持ったアプリを作れば、需要はあるんじゃないかと思う。
参考文献:
Katie Cunningham 著「アクセシビリティハンドブック」
http://www.oreilly.co.jp/books/9784873115993/