#s=jωはフーリエ変換しているのと同じ
まずは,ラプラス変換とフーリエ変換の式を見比べてみましょう。
フーリエ変換
F(j\omega) = \mathcal{F}[f(t)] = \int^{\infty}_{-\infty}f(t)e^{-j\omega t}dt
ラプラス変換
F(s) = \mathcal{L}[f(t)] = \int^{\infty}_{0}f(t)e^{-st}dt = \int^{\infty}_{0}f(t)e^{-(\sigma+j\omega)t}dt
どこが違うか分かりましたか?
$e$の指数部分と積分範囲ですね。ラプラス変換の$e$の指数部分で,$\sigma=0$ (つまり$s=j\omega$) とすると,下のようになります。
F(s=j\omega) = \int^{\infty}_{0}f(t)e^{-j\omega t}dt
もうこれ,フーリエ変換ですね。
え? 積分範囲が$-\infty$~$\infty$じゃないって?
そうなんです。実は,"$s=j\omega$でフーリエ変換と同等になる" というのは,元の関数$f(t)$が次の条件式になっている場合に限られます。
f(t) = \left\{
\begin{array}{ll}
f(t) & (t \geq 0) \\
0 & (t \lt 0)
\end{array}
\right.
もう一度,$s=j\omega$した式に戻りましょう。
$t<0$において$f(t)=0$であることを踏まえて,以下の変形をします。
\begin{align}
F(s=j\omega) &= \int^{\infty}_{0}f(t)e^{-j\omega t}dt\\
&=\int^{0}_{-\infty}0・e^{-j\omega t}dt+\int^{\infty}_{0}f(t)e^{-j\omega t}dt\\
&=\int^{0}_{-\infty}f(t)・e^{-j\omega t}dt+\int^{\infty}_{0}f(t)e^{-j\omega t}dt\\
&=\int^{\infty}_{-\infty}f(t)e^{-j\omega t}dt\\
&=\mathcal{F}[f(t)]
\end{align}
以上から,$s=j\omega$としたとき,フーリエ変換と同等になることが分かりました。
まとめ
$s=j\omega$とすると,フーリエ変換と同等になると言いましたが,先程説明した通り$f(t)$に$t\lt 0$のとき$f(t)=0$になるという条件があることに注意してください。
また,$f(t)$がそもそもフーリエ変換可能な関数ではない場合も$s=j\omega$としてはいけません。 例えば,$f(t)=\sin(\omega t)$の場合,ラプラス変換すると$F(s)=\frac{\omega^2}{s^2+\omega^2}$になります。ここに,$s=j\omega$とすると分母が発散してトンチンカンなことになります。
そもそもラプラス変換は,このようなフーリエ変換できない関数をフーリエ変換するために,収束因子$e^{-\sigma t}$をかけたという経緯があります。ですので,フーリエ変換できない関数をラプラス変換したものに,$s=j\omega$(つまり,$\sigma=0$)としてフーリエ変換にするという行為は極めてナンセンスです。
※訂正:
$f(t)=\sin(\omega_0 t)$のフーリエ変換は存在しました。
F(\omega)=\mathcal{F}[f(t)]=\dfrac{\pi}{j}\{\delta(\omega-\omega_0)-\delta(\omega+\omega_0)\}