こんにちは|こんばんは。カエルのアイコンで活動しております @kyamaz です。
はじめに
皆さんもご存知のことと思いますが、カール・フリードリヒ・ガウスの研究はとても広範囲に及んでおり、近代数学のほとんどの分野に影響を与えていると言ってもよい程の素晴らしい功績が残されています。彼の名が付けられた法則、定理や単位に至るまで様々な形で我々が目にすることが多い偉大な科学者です。特にデータサイエンスが盛んな最近では『ガウス分布』『ガウス過程』といった言葉は、その界隈では毎日のように触れていると思います。
本稿を記すにあたってQiitaで「ガウス」を検索してみましたが、やはり『ガウス分布』『ガウス過程』について書かれている投稿が多いようです。そこで本稿では敢えて「ガウス」から連想される業績のなかで、数論に関連する『ガウス和』について記載いたします。
ガウス和
Qiitaでは“ガウス和”について解説されている記事はほとんど見かけませんが、@tsujimotterさんのはてなブログの2020年4月のエントリで数回にわたって詳しく解説されております。数学的な解説はこれらの記事が詳しいです。
参考文献をあたる際に"Gauss sum"で検索したところ$1$から$n$までの自然数の和が$n(n+1)/2$となるガウスが少年時代のエピソードが多くヒットしてしまいます。ここで扱うガウス和は"Gaussian sum"か"Quadratic Gauss sum"で調べましょう。1
正十七角形の作図
正$n$角形が(目盛りのない)定規とコンパスで作図できるかどうかという問題は、正多角形の作図可能性の条件が確立しております。
正17角形が作図可能であるということがわかっており、この証明は19歳のガウスが1796年3月30日の朝に目覚めてベッドから起き上がる時に発見したという逸話が残っているガウスの功績の1つです。この詳しい解説も@tsujimotterさんのブログ記事にあります。
$\displaystyle \cos{(\frac{2\pi}{17})}$が次のように有理数と平方根の四則演算で表せて、正17角形の作図可能性が示されています。この結果は、ガウス和と関係があります。2
$\displaystyle \begin{eqnarray}
\cos{\frac{2\pi}{17}} = \frac{1}{16} \Bigl( &-& 1 + \sqrt{17} + \sqrt{34-2\sqrt{17}} \\ &+& 2\sqrt{17 + 3\sqrt{17} - \sqrt{34-2\sqrt{17}} - 2\sqrt{34+2\sqrt{17}}} \quad \Bigr) \end{eqnarray}
$
平方剰余記号(ルジャンドル記号)
奇素数 $p$ と、$p$ と互いに素な整数 $a$ に対して、
$\displaystyle
\Big(\frac{a}{p}\Big) := \begin{cases}
1 &if \ \exists x \in \mathbb{Z}[x^2 \equiv a \pmod{p}] \\
-1 &if \ \forall x \in \mathbb{Z}[x^2 \not\equiv a \pmod{p}]\\
\end{cases}
$
となる記号$(\frac{a}{p})$を定めます。この記号を「平方剰余記号(ルジャンドル記号)」と呼びます。3
例えば $p=17$の場合では、
$\begin{aligned}
1^2 &\equiv 13^2 \equiv 1 \pmod{17}, 6^2 \equiv 11^2 \equiv 2 \pmod{17}, \\
2^2 &\equiv 15^2 \equiv 4 \pmod{17}, 5^2 \equiv 12^2 \equiv 8 \pmod{17}, \\
3^2 &\equiv 14^2 \equiv 9 \pmod{17}, 8^2 \equiv 9^2 \equiv 13 \pmod{17}, \\
7^2 &\equiv 10^2 \equiv 15 \pmod{17}, 4^2 \equiv 13^2 \equiv 16 \pmod{17}
\end{aligned}$
であり、$a=1,2,4,8,9,13,15,16$のときに$1$、それ以外の$a$ときに$-1$となります。
ガウス和の定義と性質
ガウス和は、平方剰余記号を用いて、次のように定義されます。4
$
\displaystyle G_p := \sum_{k=1}^{p-1} \left( \frac{k}{p}\right) \exp\left(\frac{2\pi i}{p}k\right)
$
このガウス和$G_p$と平方根$\sqrt{p}$との間に次のような関係が成り立つことが知られています。
$\displaystyle G_p = \begin{cases} \sqrt{p} & p \equiv 1 \pmod{4} \\ \sqrt{-p} & p \equiv 3 \pmod{4} \end{cases}
$
この定理を使って、平方根を表す式が導けます。
例えば $p=17$の場合では、
$\displaystyle \begin{aligned} G_{17} &= \sqrt{17} =
\exp\left(\frac{2\pi i}{17}\right)
+\exp\left(\frac{4\pi i}{17}\right)
-\exp\left(\frac{6\pi i}{17}\right)
+\exp\left(\frac{8\pi i}{17}\right) \\
&-\exp\left(\frac{10\pi i}{17}\right)
-\exp\left(\frac{12\pi i}{17}\right)
-\exp\left(\frac{14\pi i}{17}\right)
+\exp\left(\frac{16\pi i}{17}\right) \\
&+\exp\left(\frac{18\pi i}{17}\right)
-\exp\left(\frac{20\pi i}{17}\right)
-\exp\left(\frac{22\pi i}{17}\right)
-\exp\left(\frac{24\pi i}{17}\right) \\
&+\exp\left(\frac{26\pi i}{17}\right)
-\exp\left(\frac{28\pi i}{17}\right)
+\exp\left(\frac{30\pi i}{17}\right)
+\exp\left(\frac{32\pi i}{17}\right)
\end{aligned}$
となります。
おわりに
@tsujimotterさんのエントリにも紹介されていますが $\sqrt{5}$ も次のように表せます。
$
\displaystyle \begin{align} \sqrt{5} = \cos\left(\frac{2\pi}{5}\right) - \cos\left(\frac{4\pi}{5}\right) - \cos\left(\frac{6\pi}{5}\right) + \cos\left(\frac{8\pi}{5}\right) \end{align}
$
これらの計算の活用方法は、またどこかの記事で取り上げようと思います。