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非整数階積分(分数階積分)

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こんにちは|こんばんは。カエルのアイコンで活動しております @kyamaz :frog: です。

はじめに

1変数の積分では$\displaystyle \int f(x) dx$、2変数の積分では$\displaystyle \iint f(x,y) dxdy$という記号で書かれますが、この”d●”の●の部分はx,y,zなど整数個ずつしか増やせない点に違和感を覚えたことはないでしょうか。$0.5$変数個分の積分のような概念は考えられないでしょうか。そこでこの不定積分を定積分の区間に変数$x$をおいた式$\displaystyle \int^{x}_{0} f(\tau) d\tau$ $\big(I$を積分作用素と考え、以降$(If)(x)$とも表記します$\big)$を考えることで積分を拡張(?)する非整数階積分を本稿では取り上げます。

反復積分

$x \gt 0 $で定義される関数$f(x)$に対して、$1$階積分を

$\begin{flalign}
(If)(x) = \int_0^x f(\tau_{1}) d\tau_{1} &\
\end{flalign}$

とし、$2$階積分を

$\begin{flalign}
(I^2f)(x) = \int_0^x (If)(\tau_{1}) d\tau_{1} = \int_0^x\int_0^{\tau_{1}}f(\tau_{2})d\tau_{2} d\tau_{1} &\
\end{flalign}$

として、以下同様にして、$n$階積分を

$\begin{flalign}
(I^{n}f)(x) = \int_0^x\int_0^{\tau_{1}}\int_0^{\tau_{2}} \cdots \int_0^{\tau_{n-1}}f(\tau_{n}) d\tau_{n} d\tau_{n-1} \cdots d\tau_{2} d\tau_{1} &\
\end{flalign}$

とします。これを「反復積分(repeated integrals)」と呼び、WikiPediaの『反復積分に関するコーシーの公式』にもあるように、

$$\begin{flalign}
(I^nf)(x) = {1 \over (n-1)!}\int_0^x (x-\tau)^{n-1}f(\tau) d\tau &\ \tag{1}
\end{flalign}$$

が成り立ちます。このコーシーの公式の$n$を非整数に拡張することを考えましょう。

ガンマ関数とベータ関数

コーシーの公式では階乗がでてきますが、階乗の概念を複素数に拡張した(複素階乗ともいう)特殊関数を考えます。これを、実部が正となる複素数$z\,\,(\Re {z}>0)$に対して次のように広域積分で定義される複素関数をガンマ関数$\Gamma(z)$と呼びます。

ガンマ関数の定義
$$\begin{flalign} \Gamma (z)=\int _{0}^{\infty }t^{z-1}e^{-t}{\rm {d}}t \tag{a} \end{flalign}$$

この様に定義すると、ガンマ関数の特徴としては、

$\begin{flalign}
\Gamma (z+1)&=\int _{0}^{\infty }e^{-t}t^{z}{\rm {d}}t \\
&=\Bigl[ -e^{-t}t^{z} \Bigr] _{0}^{\infty }+z \int _{0}^{\infty } e^{-t}t^{z-1} {\rm {d}}t \\
&=z \Gamma (z) \quad \left( \because \Bigl[ -e^{-t}t^{z} \Bigr] _{0}^{\infty} =0 \right) \\
\end{flalign}$

が成り立ち、また、$\begin{aligned}\Gamma (1)&=\int _{0}^{\infty }e^{-t}{\rm {d}}t= \Bigl[ -e^{-t} \Bigr] _{0}^{\infty }=\lim _{t\to \infty } \left( -e^{-t}+1 \right) =1 \end{aligned}$

であることから、任意の正の整数$n$に対しては、$ \Gamma (n+1)=n! $ が成り立ちます。この特徴からガンマ関数は階乗の定義域を複素平面に拡張したものとされています。
さらに、この特徴を保つように複素数$z$の実部が$0$以下では、全ての$a$において次式が成り立つようにガンマ関数の定義域を広げます。

$\begin{flalign}
\Gamma (a) = \frac{\Gamma (a+1)}{a}
\end{flalign}$

例えば、$\displaystyle \Gamma \Bigl( -\frac{3}{2} \Bigr) = \frac{\Gamma(1/2)}{(-3/2) \cdot (-1/2)}=\frac{4}{3} \ \Gamma \Bigl( \frac{1}{2} \Bigr)$ となります。

具体的な値の一例を天下り的に紹介します。$a=1/2$のときの値は、$\begin{flalign}
\Gamma \Big(\frac{1}{2} \Big) = \sqrt{\pi}
\end{flalign}$です。
次に、ガンマ関数と関係もあり、以降の解説に登場するベータ関数を紹介します。

ベータ関数の定義
$$\begin{flalign} {\rm B}(x,y) = \int_0^1 t^{x-1}(1-t)^{y-1} dt \tag{b} \end{flalign}$$

参考のサイトで示されているように、ガンマ関数とベータ関数には次の関係があります。

$\begin{flalign}
\rm B (x,y) = \frac{\Gamma (x) \Gamma (y)}{\Gamma (x+y)} \tag{2}
\end{flalign}$

非整数階積分(分数階積分)

さて、上記のガンマ関数を使って、非整数階積分(分数階積分)を定義します。非整数階積分にはいくつか方式1がありますが、本稿では「リーマン-リウヴィル積分(Riemann-Liouville)」を紹介します。
式(1)の階乗部分をガンマ関数にした次式で定義します。

リーマン-リウヴィル積分
正の実数$\alpha$とすると, $$\begin{flalign} (I^\alpha f)(x) = {1\over \Gamma(\alpha)} \int_0^x (x-\tau)^{\alpha -1}f(\tau) d\tau \tag{c} \end{flalign}$$

ここで例として、$f(x)=x ^{k}$について分数階積分を考えてみましょう。式(c)の代入した次式を以下に計算します。

$\begin{flalign}
(I^a f)(x) = {1\over \Gamma(a)}\int_0^x(x-{\tau})^{a-1}{\tau}^kd{\tau}
\end{flalign}$

$u={\tau}/x$とおくと

$\begin{flalign}
(I^a f)(x) &= {1\over \Gamma(a)}\int_0^1 x^{a-1}(1-{\tau}/x)^{a-1}\cdot (xu)^{k}\cdot x du \\
&= {x^{a+k}\over \Gamma(a)} \int_0^1 u^k(1-u)^{a-1}du \\
&= {x^{a+k}\over \Gamma(a)} {\rm B}(k+1,a) = {x^{a+k}\over \Gamma(a)} {\Gamma(k+1)\Gamma(a) \over \Gamma(a+k+1)} \cdots\bigstar \\
&= {\Gamma(k+1) \over \Gamma(a+k+1)}x^{a+k} \tag{3}\\
&\\
&(\bigstarはベータ関数とガンマ関数の関係式(2)を用いました)
\end{flalign}$

具体的な例を示します。例えば$k=1/2$、つまり$f(x)=\sqrt{x}$の場合で$a=1/2$のときは、

$\begin{flalign}
(I^{1/2} f)(x) &= {\Gamma(3/2) \over \Gamma(2)}x
= {\Gamma(1/2) \over 2}x = \frac{\sqrt{\pi}}{2}x
\end{flalign}$

となります。また、よく知られている$f(x)=\sqrt{x}$の積分($a=1$)は

$\begin{flalign}
(I^{1} f)(x) = \dfrac{2}{3}x^{3 \over 2}
\end{flalign}$

となりますが、これを式(3)で計算すると、

$\begin{flalign}
{\Gamma({1 \over 2}+1) \over \Gamma(1+{1 \over 2}+1)}x^{1+{1 \over 2}} = {\Gamma({3 \over 2}) \over \Gamma({5 \over 2})}x^{3 \over 2} = {\Gamma({3 \over 2}) \over {3 \over 2}\Gamma({3 \over 2})}x^{3 \over 2} = \dfrac{2}{3}x^{3 \over 2}
\end{flalign}$

となり、整数階積分も一致することがわかります。

おわりに

ご一読いただきまして誠に有り難うございます。
今回参考にしたWikipediaを最後に紹介して本稿を締めたいと思います。

(●)(●) Happy Hacking!
/"" __""\

  1. ほかに「アダマール分数階積分」という種類もあります。
    アダマール分数階積分の公式は次の式です。
    $$\begin{flalign}
    (I^\alpha f)(x) = {1\over \Gamma(\alpha)} \int_0^x \Big(\log{\frac{x}{\tau}}\Big)^{\alpha -1}f(\tau) \frac{d\tau}{\tau}
    \end{flalign}$$

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