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ゲルフォントの定数

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こんにちは|こんばんは。カエルのアイコンで活動しております @kyamaz :frog: です。

はじめに

本稿では、超越数について取り上げます。超越数とは、Wikipediaに定義が詳しくありますが、代数方程式の解ではない数のことです。
次に挙げる『高校数学の美しい物語』のページに分かりやすい説明がありますので、できればそちらをご覧ください。
円周率 $\pi$ やネイピア数 $e$ は超越数であることが知られて(証明されて)います。ほとんど全ての複素数が超越数であるとされているにも関わらず、超越数であると示せている数はそれ程多くなく、また与えられた数が超越数であるかどうかを調べるのは難しい問題とされています。

このサイトには『ゲルフォントの定数』についても記載はありますが、詳しくは述べられていません。本稿では、その近似値や超越数である証明の概略を紹介します。

ゲルフォントの定数

ゲルフォントの定数は、$ e^{\pi} $ でロシアの数学者アレクサンドル・ゲルフォントにちなんだ名称です。

オンライン整数列大辞典の数列 A039661 に99桁ほど示されております。
PARI/GPでは計算にて求められそうです。次のように1,000桁ほど出力してみました。

? \p1000
   realprecision = 1001 significant digits (1000 digits displayed)
? exp(Pi)
%1 = 23.14069263277926900572908636794854738026610624260021199344504640952434235069045278351697199706754921967595270480108777314442804441469383584471744587960984936532796586366924223026899101374176468440141039518386847724306805958816244984449143096677841367163196341478403821651128763773147034735383316282129404789193622482022100603206544336273655727182374498961885805959168487264547901339783402659510149964379242296816079956538142353620695760077059046089988300225430487121179130084932737958072942730193104260169193932585320342896866189528329052171115718518550680225419720456637086556838683054479927817040749776854036755653495721886788256399438471822458588942853524726056821027107601849153451846806488738677443963051400516944054066526543096886906393731535983731104217443302396789669003504118148605339028720375991858688689748732432172158559607433467642616785611735333642126563191566545489228969224577388957090536180383619751032656794362408835990642234712846533437314871706517894637427341269479680432104147667

ゲルフォント=シュナイダーの定理

1934年に、アレクサンドル・ゲルフォントテオドール・シュナイダーがそれぞれ独立に証明した次の定理です。

ゲルフォント=シュナイダーの定理
$\alpha$ を 0, 1 以外の代数的数, $\beta$ を有理数ではない代数的数としたときに $\displaystyle \alpha ^{\beta}$ は超越数である

※ここで「代数的数」とは、代数方程式(有理数係数の0でない一変数多項式)の解となる数

一見、$ e^{\pi} $ はこの定理に当てはまらないように見えますが、オイラーの公式 $ e^{ix} = \cos{x}+i \sin{x} $ を用いると、

$ e^{\pi} = (e ^{i\pi})^{-i} = (\cos{\pi}+i \sin{\pi})^{-i} = (-1)^{-i}$

となります。これは定理に $ \alpha = -1 \not = 0 \ or \ 1 $ , $ \beta = -i $ としたときに当たります。つまり、ゲルフォントの定数は超越数ということが示せます。

ベイカーの定理

ゲルフォント=シュナイダーの定理のより広い定理である「ベイカーの定理」は、これより後の1966年にアラン・ベイカーによって示されました。この証明はせきゅーんさんのサイトに掲載されていますので、そちらでご確認ください。

ベイカーの定理
$ \alpha _{1},\ldots ,\ \alpha _{n}$ を $0$ ではない代数的数とする。 もし、$ \log \alpha _{1},\ldots ,\ \log \alpha _{n}$ が有理数体上線形独立であるならば、$1,\ \log \alpha _{1},\ldots ,\ \log \alpha _{n}$ は、代数的数体上線形独立である。

おわりに

2025年1月現在の ChatGPT-4o に以下の数学的な問いをしてみました。

π+e が超越数であることを示せ

すると、次の通り。ある意味期待どおりの答えを教えてくれました。

π+e が超越数であることを示すのは、現在の数学では未解決の問題です。
そのため、π+e が超越数であるかどうかは証明されていません。
同様に、π-e や π⋅e についても同様の問題が残っています。

もしかすると近い未来では、この同じ質問に証明を与えるような答えをAIがするような世界が来るのかもしれません。

最後に、本稿を記載するために検証した環境を記しておきます。お手元の環境で検証する際に、動作が異なるときには参考になるかもしれません。

本稿の環境

本稿のために使用した環境は以下となります。

  • macOS: Sonoma 14.6.1 (chip: Apple M1)
  • Homebrew 4.4.15
  • Homebrew LLVM version 12.0.1
  • Homebrew clang version 12.0.1
  • Homebrew bison (GNU Bison) 3.8.2
  • GP/PARI CALCULATOR Version 2.17.0 (released)
    arm64 running darwin (aarch64/GMP-6.3.0 kernel) 64-bit version
    compiled: Sep 28 2024, Apple clang version 15.0.0 (clang-1500.3.9.4)
    threading engine: pthread, nbthreads = 8

それでは。ご一読いただきまして有り難うございます。

(●)(●) Happy Hacking!
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