こんにちは、kuwana-kbと申します。
今週、IPA 情報処理技術者試験(秋期)の申し込み受付が開始しましたね!
まだ申し込もうか迷っている方もいるんじゃないでしょうか。
昨年、ネットワークスペシャリスト試験を受験しましたので、今回受験を考えている人やネットワークの知識を深めたい人向けにまとめたいと思います。
対象読者
- ネットワークの理解を深めたいと思っている人
- 業務でネットワークやクラウドインフラに携わってる人
- 資格試験に興味がある人
3行でまとめる
- 未経験でも受かることはできた
- ネットワークの基礎知識がほしい人は、「ネットワークはなぜつながるのか」と「マスタリングTCP/IP 入門編」の2冊がおすすめ
- WebエンジニアならネスペよりもAWSやGCPの資格試験の方がキャリアや業務で役立つかも
1.ネットワークスペシャリスト試験(NW試験)とは
「ネットワークスペシャリスト試験」とは、IPAが実施している「情報処理技術者試験」の中でネットワークに特化した公的な資格試験です。更新不要なので一回とっちゃえばずっと履歴書に書けるのがいいですね!試験には記述形式が含まれますが、せいぜい50文字くらいなのでそこまでつらくないです。ただ、一言でネットワークといってもいろんな知識領域が問われるので未経験者の場合は覚えることがいっぱいあります。
以下に試験の基本的な情報をまとめました。
内容 | 備考 |
---|---|
試験実施日 | 毎年 10月中頃 |
試験時間 | 合計 300分 内訳50分/40分/90分/120 |
試験形式 | 筆記試験 四択が半分、記述形式が半分 全ての試験で60%以上の点数をとればOK |
試験応募資格 | 特になし。誰でも受験可 受験者の平均年齢は35.7歳 |
試験合格率 | 13.6% 2017年度の情報 |
試験費用 | 5700円 |
2.受験の動機
当時の私のスキルセット
受験当時(2018/10)の私のスキルセットを軽くご紹介します。
業務 | 経験年数 | 備考 |
---|---|---|
Web制作ディレクション | 3年半 | 新卒でWebディレクターとして入社。いろんな種類の案件進行管理を担当したが、技術的なスキルはなかった。 2018/07に未経験ながらエンジニアに転身。 |
バックエンド開発 | 4ヶ月 | APIの実装とAWSの設計・環境構築を担当。この時はまだ右も左もわからない状態だった。 |
ネットワーク業務 | なし |
ネットワーク系の経験といえば、Webディレクターの時に何回かネットワーク系プロジェクトの進行管理を担当しました。しかし、主にやっていたことはプロジェクト管理と社内調整で技術的な知識やスキルはなかったです。
なので、最初にネスペの過去問を見たときは何一つ理解できない状態でした。しかし、2ヶ月間の学習でなんとか合格ラインまでもっていくことができました。未経験の人でも労力をかければ誰でも受かる可能性のある試験だと思います。
###なぜ受験したか
主な理由は以下の2つです。
- 業務上で得意な分野を広げたい(T字型人材を目指す)
- 将来を見据えて履歴書に書ける内容を増やしたい
当時の私はエンジニアになりたてでした。エンジニアとして働くからには、何かしら強みを持ってチームの人に頼られた方が楽しく仕事ができると思いました。私はWebディレクターをしていたので、その経験を強みにしようと考えていましたが、技術的な強みもほしいです。そこでネットワークに強い人になろう、と決めました。理由としては、プログラミングやシステム設計では経験年数的に勝つことが難しいけど、最近導入が進んできたAWSを筆頭としたネットワークの領域であればスキルの差は簡単に埋められるはず、と考えたからです。
この記事を書いている時点で、ネスペの受験から10ヶ月ほど経過していますが、おかげさまで今ではチームの中でAWS・ネットワークについて質問、相談されるレベルになってきました。
3.試験を受けてよかったこと
①ネットワークの知識が身につく
当然といえば当然ですが、ネットワークの知識が身につきます。試験内容にはプロバイダーレベルのネットワーク設計の問題やLANケーブルの規格の問題など、Web系エンジニアの業務とは関わりの薄いものもありますが、普段何気なく業務で使用しているプロトコルやIP、ポートなどについても詳しく理解することができます。
参考までに、試験と結びつきの強いキーワードをいくつか挙げてみます。少なくともセキュリティからネットワーク層までの項目は普段の業務でも触れる機会があるのではないでしょうか?
- セキュリティ(SSL/TLS/暗号化/認証)
- ネットワーク設計(負荷分散/信頼性)
- アプリケーション層(HTTP/SMTP/DNS/SNMP)
- トランスポート層(TCP/UDP)
- ネットワーク層(IP/ルーティング)
- データリンク層(イーサネット/無線LAN)
- 仮想化(SDN,VXLAN)
②日々の業務が少しスムーズに
上述したようなネットワークの知識が身につくと、普段のシステム開発の業務にもメリットがありました。どういう業務の場面かというと主に以下の2つです。
- スプリントレビュー等でAWS系タスクの説明をするときに正確な言葉の使い方ができるようになった
- (ネットワークの知識がついたことで間接的に)AWS系タスクの環境構築/運用作業のスピードがアップ
私が経験したことのあるネットワーク系の業務はAWSのみですが、具体的にAWSで役立った点を挙げてみます。
- FW、IP、ポートの仕組みを理解することで、セキュリティ設計をする(SG,NACL,WAFの組み合わせる)時に役立った
- SSL/TLSを理解することで、ACMを使う時に役立った
- DNSを理解することで、Route53を使う時に役立った
AWSの作業はネットに上がっている記事等の手順を理解の浅い状態でなぞることが多かったのですが、各設定項目の意味を理解しながら作業ができるようになりました。結果として、業務に対する自信やモチベーションに繋がっています。
③地味に実生活で役立った
ほんと些細な話でお恥ずかしいのですが、公共のWifiにつながらなかった時、自力で解決できたのは地味に嬉しかったです(それくらい受験前はネットワークの知識が浅かった・・・)。IP,DHCPの知識から、ネットワーク設定をいじくったら直せました。家のルーターの設定なんかもある程度わかるようになりました。
4.資格取得に向けてやったこと
資格取得に要した労力
タスク | 時間 |
---|---|
書籍の読み込み | 3h * 40days |
合計 | 120h |
1日の勉強時間は約3時間ほどでした。
やったこととしては、ネットワークに関する書籍・Webサイトをひたすら読んでました。
具体的な学習順序は以下のような形でした。(書籍の詳細は次の項目で取りあげます。)
- ネットワークの仕組みを体系立てて理解する
(→「ネットワークはなぜつながるのか」と「マスタリングTCP/IP 入門編」) - 実際の試験で問われる知識領域をざっくりと理解する(→「ネットワークスペシャリスト教科書 30年度版」)
- 過去問を解きつつ、各知識領域の理解を深める(→「ネスペ」シリーズ)
おすすめの書籍
以下に試験対策で使用した書籍をまとめます。おすすめ順で並べています。
試験対策におけるおすすめ度 | 書籍名 | 説明 |
---|---|---|
★★★★★ | ネットワークはなぜつながるのか | ネットワークの仕組みがわかる本。Webサイトを閲覧するとき、クライアントからサーバーまでのパケットの流れをとても丁寧に解説しています。ネットワークを考える上での根っこの部分になりました。 試験に関係なくおすすめできる本です。 |
★★★★★ | マスタリングTCP/IP 入門編 | こちらはネットワークを理解する上で欠かせないTCP/IPについて解説した本です。試験においてもTCP/IPの理解は必須です。 |
★★★★☆ | ネスペ 25 剣 | ネスペの試験対策といえばこれ、といわれる本です。内容は、午後1・午後2の過去問の解説です。この解説がめちゃくちゃ丁寧で、なぜその回答になるのかを徹底的に説明してくれます。1冊につき1年度分なので、5年分とかやろうとするとそこそこお金がかかりますが、それだけの価値はあると思います。 |
★★★★☆ | ネスペ 26 道 | 同上 |
★★★★☆ | ネスペ 27 礎 | 同上 |
★★★★☆ | ネスペ 29 魂 | 同上 |
★★★☆☆ | ネスペの基礎力 | ネスペシリーズではあるのですが、こちらは出題分野別に解説してくれる本です。比較的内容が薄めなのでやらなくてもいいかも。 |
★★★☆☆ | ネットワークスペシャリスト教科書 30年度版 | こちらは試験の出題分野別に「基礎知識の説明」→ 「練習問題」といった形式の書籍です。試験対策のとっかかりとしてはいいかもしれないですが、解説は薄めです。 |
★★☆☆☆ | 1日で読めてわかる TCP/IPのエッセンス | TCP/IPについてわかる薄めの本。「マスタリングTCP/IP」を読んでいれば読まなくてもいいです。一通り学習したあとに、復習がてら読みました。 |
- | IPA公式サイト 過去問 | 9年分の過去問を無料でダウンロードできます。今回は上述の「ネスペ」シリーズで過去問を解いたので使用しませんでした。 |
5.試験の結果
2018/10/21 に試験を受けて 2018/12/21 に結果がでました。
点数としてはギリギリの合格…
当日の試験では、全く知らない技術の問題がでてきて焦りましたが、基礎知識の応用でも答えられました。やはり基礎は大事!その意味で「ネットワークはなぜつながるのか」と「マスタリングTCP/IP 入門編」の2冊はおすすめです。
6.最後に
ネットワークスペシャリストの肩書を手に入れてしまったわけですが、この資格が取れたからといってネットワークの仕事ができるかというとそうではありません。どういうことかというと、試験の内容はネットワークの概念や普遍的な考え方に重きをおいていて、具体的な機器の設定や作業にはほとんど触れられていません。例えば、ciscoやjuniperはネットワーク機器の有名なメーカーですが、それらに関連する用語は一切でてきませんでした。また、試験ではネットワークに関する幅広い知識を要求されますが、業務だともっと深い知識が必要になると思います。
また、記事内でも言及しましたが、この試験ではネットワークに関する広範囲の知識が要求されます。Webエンジニアとして働く上で明らかに使わなさそうな知識もでてきます。Webエンジニアのキャリアを考えた時に、長時間を割いて(私の場合は2ヶ月)でも取った方がいいかといわれると、私は人におすすめはしないです。
資格であれば、AWSの資格等をとった方が費用対効果が高い気がします。AWSの資格試験は結構実務寄りな試験内容ですしね(参考:ゼロから始めるAWSの資格試験)。ネットワークの知見を深めたい場合は、「ネットワークはなぜつながるのか」と「マスタリングTCP/IP 入門編」の2冊をまず読んで見るのが良いと思います。さらに深く知りたいという方は、ネスペの受験をしてみてもいいじゃないでしょうか。
若干ネガティブな意見を書いてしまいましたが、私自身はこの試験を受けてよかったと感じています。ネットワークの知識に自信がついたし、転職の際にもこの資格が役立ったからです(Web系だとちょっと珍しがられます)。
以上がネットワークスペシャリスト試験の合格体験記です。
この記事が、これから受験を検討している方にとって役立てば幸いです。